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STAGE7:沙莉奈の現実2

オンラインゲームプレイヤーの方には多少不快な表現がございます。ご了承下さい。

 1時40分。

ようやく一段落ついたが、まだまだ終わりではない。

 キッチンから渡された洗い立てのソーサやスプーン、フォークなとホールから出す物は、拭かなければならない。

手を動かしつつ、やっと時間が出来た二人は会話の続きを始めた。



「癒那には不思議な世界でしょ?でもね……初めて女として接してくれたんだよ、狗世さんは」



苦笑いしながらソーサーを拭く沙莉奈。


沙莉奈は百五十センチちょっとのショートカットの女の子。顔はいたって普通。

 男の子のスタッフが言うには『下の上だな…あからさまにオタクじゃん』とのことだが、癒那から見れば、ちょっと童顔な普通の女の子。そのスタッフに『万年合コン男の癖に偉そうに』と癒那は言い放ったくらいだ。

 因みに癒那には『上の下だな…一見近付きにくい雰囲気があるからナンパはねぇな』という評価がつけられていた。

もちろん癒那は『こっちから願い下げだ!』と言う返事をした。そんな癒那はストレートの肩までの茶色い髪に、身長は百七十まで後少し、といった細身のどちらかというと綺麗に分類されるタイプ。が……女っぽさにかけてるのが残念な所。


そんな二人だが、凸凹コンビだが女二人不釣り合いなわけではない。逆に沙莉奈の方がオシャレなくらいだし、癒那にとっては何故現実で探さなかったのか不思議だった。



「不思議っていうか……なんだろ……何で狗世さんが本気だって思えたの?相手の真意なんて、こうして会っててもわかり切ることは難しいじゃん?」



その問いに沙莉奈は迷い無く答えた。



「ちゃんと私の全てを話しても…逃げずに受け入れてくれたの。それで付き合ってって言ったら『俺もそう思ってた。俺が幸せにする』って言ってくれたの………ゲームでね♪それで、まだゲームでしか出来ないけどってゲームで結婚したんだよ。自然に信じられたよ」


癒那に笑顔を見せてから、カウンターの向かい、二人が背にしていた方の棚にソーサーを片付ける。癒那も同時に終わったスプーン等を、プラスチックの小分け箱に一人用と二人用を入れ分けていった。



「ゲームでチャットしてると…普通に話してるのと同じみたいになってくるんだよね。それで携帯交換したら実際話して声がわかるから…余計にね。チャットと電話…当たり前みたいに癒那とこうやって話してるのとかわらなくなるの」


癒那は固まった。

その言葉に思い当たる節があった。昨日朸夜とチャットしていた時だ。まるで小説を読む時に、頭の中で人物を作り上げ、ドラマ化するように、朸夜は頭の中で存在していた。それも小説と違って、会話の相手は自分。


しかし癒那は一つの嘘を見つけた。昨日バイト上がりに沙莉奈は、彼氏は前のバイト先の人だと言った……。昨日ゲーム中、そして今日はゲームから始まったという……。


(ゲーム出会ったのが本当だろうな……私引きずり込む為に昨日嘘付いたのか?……考えすぎか)


自分の中に出来た疑問を一先ず受け流した。


「癒那もやってればわかると思うよ……すごく良い仲間に会えるし、たまり場来れば誰かしら居ると思うからさ♪朸夜さんは違うからいないかもだけど……」


「あぁ……とりあえず今日帰ったらまた連れてってくれるって」


「へぇ〜そっか♪暇になったらおいでね、皆に紹介するし、なんかもらえるかもしれないから」


笑顔が一瞬曇った気がした。沙莉奈と朸夜の間にはあるいざこざが過去にあったらしい。


「まぁ適当にやるよ…一週間だしさ」


「う〜ん……続ければ良いのに、楽しかったらさ♪明日から休みだしやりまくれるよ!」


 土日が休みの二人。

癒那は「土曜はデートだから」と答えた。

その後二人は同時に一時間の休憩をとったが、ずっと沙莉奈がゲームについて話したままだった。戦い方や、誘い方、自分のレベル上下十以内の小隊だと経験値を均等に分ける事が出来る事、ボスを倒す大変さ、クエストと言う依頼完了の仕事。沙莉奈の思い出話し、そして恋愛話し。ゲーム中での嫉妬や邪魔や…まだ癒那にはわからない世界の話であり、見た事ないキャラの話し。

 それは休憩時間を越し、バイト上がるまで続いた。癒那が開放されたのは、帰り道だった。

(ほんっとゲーム好きなんだなぁ……)


歩きながらふと思った。


(悠斗は本当に嫌じゃないのかな?)


癒那はバイト上がりの日課のメールを打った。


『お先にお疲れ様♪

 今日はゲーム誘って来たバイトの子のゲーム体験談で大変だった(*^□^*)


明日はどうしようか?どこか行く?まったりすごす?』


そんなメールを作りながら癒那は帰路についた。


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