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色付く世界  作者: 色輝
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008 再会と私

戦闘描写?温い温い温すぎるぜ!な回。しょうがないよね、だって一歳半だもの!

どちらかと言えば説明回。


 睨み合い、さあ行くぞっ!と足を踏み出し――ヒョイと持ち上げられた。お兄さん達だ。硬直から解けて、すぐに止めに入ったようだ。

 当然と言えば当然だが、此方としては邪魔しないで欲しい。私はあの野郎と決着を付けたいんだ!


 互いにバタバタ暴れてお兄さん達の拘束から逃れようとしていると、突然明らかに面白がってるような声が掛かった。



「くっくっく……おいカイン、リズ、放してやれ。思う存分やらせてやれよ」


「…!ち、父上…!?ですが…」


「普段ツェリは大人しく良い子だ。レイハナも聞いた限りじゃ似たような感じらしい。そんな此奴等が珍しく喧嘩するんだ、やらせてやろうぜ」



 王様ナイスです!お陰でやれるぜ!例えどう考えても面白がってるとしても、感謝します!

 何故か集合した大人組も観客に交え、私達は戦った。




 私は力まず両手も脇に垂らした全くの自然体、ツェリーフィアは足は肩幅に開き膝を軽く曲げ左手は上に右手は下にした変わった構え。…うん、あの指を曲げ牙に見立てたような独特の構えは、よぉぉく知っている。 あれは殺人……いや、対国拳法・・・・だ。 勿論、CWOでの話だ。だが、流派補正もあるし、互いに一歳児の肉体とは言え、侮れない。CWOにはあらゆる流派があり、プレイヤーも創れる。あの流派はプレイヤー派生流派で、此奴が創りあまりの難しさに此奴以外は使えない。私も自分の流派を持っているので、対抗は出来る。素手のみってのは辛いが、スキルまで使うつもりはない。彼奴も使うつもりはないだろう。


 彼奴――ツェリーフィアが何故いきなり喧嘩をふっかけてきたかは分からないが、私がわざわざ喧嘩を買ったのは、確認したかったからだ。普段だったら時と場合と相手によりけりで、買うのが礼儀とかはぶっちゃけあまり思ってない。

 直感も全く働かなかったと言うのもある。敵意や殺意があれば、多分気付くと思うんだよね。でもないし、悪意もない攻撃だった。なら、まあ害はないかな、と。かなり適当だしスキル使われたら死にそうだが、その辺は信用してる。あの構えをするんだし、私と同じくCWOのデータを引き継いでる可能性が高い。直感の信用性やどの程度働くのか、知りたい。

 タッ、と地を蹴ったツェリーフィアが肉薄してくる。一歳児とは思えない速さで驚いたが、私は攻撃を繰り出される前に(・・・・・・・・)勘で予測し(・・・・・)避けた。そのまま前に踏み出し、足を引っ掛けるようにローキック。ツェリーフィアは倒れた。

 多分、体が付いてこないのだろう。彼奴なら避けれたはずだから。ステータスに関しては引き継いでるか分からないけど。


 彼奴は怒濤とも言える反撃の隙すら与えない超攻撃型で、私はカウンターを交えたトリッキーな戦闘スタイルだ。普通に出来てる所を踏まえると、リアルとゲームの意識が混じり合ってるんだろうな。リアルじゃ出来ない動きをする、戦闘慣れしたゲームの自分の経験や記憶がリアルになった、と言った所か。現実と変わらない感覚で出来るゲームだったし、体さえついて行けばリアルでも同じ動きが出来るらしいし。リアル武闘家のプレイヤーが、リアルで格闘スキルを使ったと噂があった。多分、そんな状態なのだろう。…一歳児で再現出来るって、今の私はどれだけ高スペックなんだ。魔族だからか?



 だが、それは相手も同じだった。怒濤の攻めを売りにしている彼奴の流派――龍顎たつがく流激攻げっこう手雨しゅさめ格闘術。ネーミングセンスはちょっとアレだが、凄まじい破壊力がある。彼奴の彼奴による彼奴のための彼奴専用流派だ。

 体勢を立て直した彼奴は、また真っ直ぐ来る。また避けた――と思ったらフェイントで、やはり体が付いて来ず攻撃を喰らった。意外と痛いかも……一歳児とは言え侮れん。


 立ち上がった私は、自分からも攻める。臨機応変な戦闘スタイルで相手を攪乱し弱点を悟らせないのが売りの一つだが、お互いに弱点は知り尽くしてるので無理。第一互いに弱点らしい弱点はない。…一歳児の体じゃなければ、もっと色々出来るんだけどな。


 構えもせず駆け寄る私。彼奴は龍顎ではやらないらしく、独特の構えはしていない。多分この体では難しいと悟ったんだろう。私は寧ろ構えると上手く動かないので、自然体である。敢えて言うなら、自然体が構えだ。私の流派は自然体で戦うから。構える時は構えるが、最初からだと無駄に力が入ってしまうのだ。

 他に目もあるし、あまり流派は見せるべきでもない。一歳児が独自の武術やってたら怖い。


 そこからは、殴り合いだった。腰を落とし捻って繰り出す拳は鳩尾に突き刺さり、ローキックは体勢を崩し手刀は脳天に。

 ガスッベシッ、と決闘にしては軽い打撃音が響く。フェイントを入れながら、相手の避ける方を予測し次の攻撃を繰り出し、次に次にと繋げる。


 痛いのは嫌いだが、今は気にならない。それよりも、嬉しい。また会えて、触れて、話せて。


 対人関係を一切断ち切っていた私。でも、小中学校が同じで、高校進学と共に引っ越しなかなか会えなくなっても連絡は取り合い、その後はCWOで遊んだ唯一の相手。無二の親友。最大の理解者。

 私は、心から歓喜した。彼奴も、同じかもしれない。多分私と同じ顔をしてるから。



「…しぃっ!」


「!っみぃ!」



 やっぱり、彼奴だ。お互いだけの特別な呼び方。しぃ、と私が呼べば、彼奴は――しぃは、私をみぃと呼ぶ。これで、確信した。


 最後に、互いに右拳を繰り出す。互いの頬に突き刺さり、クロスカウンターで、決闘は幕を閉じた。


 ポロポロ、ボロボロと涙が零れる。でも、痛む頬は緩む。しぃは目を丸くし、私を笑うが、しぃの頬にも幾筋もの涙が伝っていた。


 ただただ、再開を喜び、キツく抱き締め合いながら、私達は気を失った。


 周りは気にせず、離さないように。




周りはポカーン。二人の世界に入っちゃってるので、頭の隅には留めつつ自重はしてません。端から見たら微笑ましいじゃれ合い…基、決闘でしたー。

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