004 スキルと私
今日の私は、一人で探検中見つけた隠し部屋に来ていた。忍者屋敷のように、壁の床近くにある窪みを押したら、隠し扉が現れたのだ。全然使ってないのか誇りだらけだったが、スキルで何とかしてみた。一人掛けのソファーやテーブル、本棚があり、スキルで新品のようにしている。
この隠し部屋では、スキルの検証をしている。スキルの一覧は、メニューにはなかった。代わりに、頭の中にスクロールがあるような感じになっている。全く違和感なく馴染んでいて、違和感が無さ過ぎて逆に戸惑うくらいだ。暗記してる、とはちょっと違う気もするが、似たようなものか?
今使えるのは、遊び人のに生産系や趣味やネタ系のスキル。遊び人は二回目なので、すでに全て覚えている。が、魔力不足で今のレベル以上のスキルは使えない。魔力なのかは分からないが、力があるのは感じれる。前世ではなかったから比較的に容易に認識出来た。CWOの経験も活きている。
パッシブスキルに関しては職業関係なく使えるのは嬉しい。耐性系が沢山あるしね。転んでも痛くありません。
よし、では今日もスキルの練習だ。魔力はステータスが見えず分からないから、感覚の問題だ。使いすぎは厳禁なので、見極めが難しい。
スキルの使い方は、感覚で知っている。何故か分かるのだ。
埃だらけだった部屋を掃除したのは、取得クエストでしか使わないような【清掃】スキル。【浄化】を掛ければ空気も新鮮になる。スキルは口に出さなくても使えるので、上手く喋れない私もちゃんと使える。
因みにCWOには魔法がない。厳密に言えば、スキルの一部に魔法っぽいの(火の玉を飛ばしたり水の槍を飛ばしたり。詠唱はいらない)がある。魔法職は魔法と言っていいのか分からないと不満を言っていた。
閑話休題。
体中、髪の毛の先までみっちり詰まったチカラを意識しながら、スキルを発動。
ふわっ、と浮かんだ体に興奮しながら、宙を自由に飛び回る。【飛行】スキル、今の一番のお気に入りだ。最初は飛んでる感覚が不安定で怖かったが、今はもう慣れた。慣れると楽しく、時間を忘れて飛び回る。
窓はガラスだが、あまり質は良くなく透明ではない。曇りガラスくらいか。それでも、ぼんやりとは見えるので、よく眺めてる。青と緑しか見えないが、お気に入りの景色だ。ここの窓はハメ殺しで開かない。多分隠し部屋だからかな?侵入されないように…。だったら窓なんか付けるなって話だが。
狭い部屋を飛び回り、疲れてきたら床に降りた。少し休憩し、新しいスキルを使う。私は生産メインプレイヤーだったが、今は生産スキル使っても意味な……あ、錬金で窓ガラスを日本並のにしてみようかな?
もう一度飛び、窓に手を当てた。そして、錬金!――変化は、劇的だった。
「おぉ〜…」
思わず感嘆の声を上げてしまうほど、凄かった。曇ったガラスは、不純物がなくなりクリアな物になった。透明度は、見慣れた日本の物。景色もよく見える。庭に面していて、白い雲がちょこっとたゆたっている抜けるような青空に、整えられた生き生きしている植物の間からは石造りの塀がチラチラと覗いてる。 久々に、綺麗な窓を見れた。隠し部屋以外の窓は、それなりに綺麗ではあるが、ここまでではない。錬金もちゃんと出来たな。
…ただ、かなり疲れた。錬金はかなりチカラを使うのかもしれない。もう飛ぶ力もなくて、べちゃっと床に落ち、背中とお尻を打った。いってぇ…っ!くそう、疲れた所にこの仕打ちか!…自分のせいか!
もそもそと痛みを耐えながら、隠し部屋を出た。扉は閉まっていたが、中にも窪みがあり、入った時と同じようにすれば出れる。
誰にも見られないようコソコソ出て、物置(隠し部屋はここの一端にあった)から廊下出たら――すぐに見付かった。侍女さんで、事務的な応対しかしないからどう反応すればいいか分からず、ちょっと苦手な人だ。執事長のラグさんと庭師のギン爺ちゃん以外はどうもね…。いや、仕事と割り切ってるからだろうが、子供に無表情はちょっとな。
閑話休題。
侍女さんに抱えられ、部屋に戻った私。疲れたせいかウトウトしてきた。そろそろお昼寝タイムなので、丁度良いか。
部屋には母とアリシア、それにレオンがいた。今日は珍しくレオンも一緒に寝るのだろうか。
殆ど眠りながら、私は母に渡されベッドに――、ん?
「さあ、おやすみ。レオ君、レイちゃん、アーちゃん」
違和感、を一瞬感じたが、優しい母の声と兄妹の子供体温に、私は微睡みとろりと意識が溶けていった。
違和感は、起きて覚えていたら突き止めよう――…。
VRMMOの設定は、ぶっちゃけ生産や趣味のスキルと技術が欲しかっただけだったり…。
意味を持たせられるようにしたいです。