003 父と私
プロローグに出てきた主人公の職業を、小説家から絵師に変えました。3/19
皆で遊んだ夜、談話室で父と皆で一家団欒していた。清廉な美貌の母と、凛々しい美貌の父が並ぶと周りに光が舞ってるようにも見えるほど絵になる。父の膝にはアリシアと兄のレオンが乗り、母の膝には姉のアイリスが乗っている。私は二人の間に座っている。
アイリス達が今日の話をするのを、私はコクコクと頷いている。あまり話せないし、アリシアのような無邪気な行動も出来ないから、頷くくらいしか出来ない。
それに、父と母はニコニコ微笑ましそうに相槌を打って、順番に頭を撫でてくれた。ちょっと恥ずかしく、俯いてしまう。
「そうか。今日も楽しく遊んだんだね」
「はい!でも、れおがいけに落ちちゃって、たいへんでした」
「ありしあがおしたぁ」
「あいっ」
レオンが池に落ちた時は焦った。無邪気に笑顔でレオンの背中を押したアリシアに戦慄を覚えた。レオンが泣き、アリシアはアイリスに怒られ、母は侍女さんに指示してタオルを持ってこさせ、私はレオンの頭を撫でていた。 元気に手を挙げて返事をしたアリシアを、父は苦笑しながら撫でた。いや、ダメだって言い聞かせようよ。聞くかどうかは別として。
「ふふ、そういえばレイちゃんがレオ君の事を慰めてくれたのよ。頭なでなでしてね〜」
「おや、そうなのかい?レイは優しい子だね」
「ぁう…」
父が私の頭を撫でてくれた。手のぬくもりが心地良いがむず痒く、ちょっと恥ずかしい。この場合どう返せばいいんだろう。笑う?返事する?
そうちょっと戸惑いつつ悩んでいると、父の手の重みがなくなった。あ…、と名残惜しくなり父を見上げた。父はそのとろとろの蜂蜜のような金色の瞳を優しく細め、私を見下ろしていた。その眼差しが、無性にくすぐったく居たたまれなくて、頬を赤く染めて俯いてしまった。
「ははっ、レイは恥ずかしがり屋だね」
…言わないで欲しい。益々恥ずかしくなり、ぷいっと父から目を背けた。…母も同じ目で、結局アリシアを見詰めた。アリシアも見詰め返してきた。睨めっこ?
あー…そういえば、父は何の仕事をしているんだろう。家で仕事をしてるみたいだが、よく外にも行くみたいだし、気になるな。断じて羞恥からの逃避ではない。
魔法があって、中世っぽい時代で、家が大きいなら……貴族とか?いや、貴族ならもっと使用人がいるか。爵位が低いなら有り得るか?
中世っぽいと言っても、電気はないが上下水道はあるようだし、都合の良い生活水準……あ、いや、お風呂はないのだが、それでも文化的な生活が出来る最低限の設備はある。電化製品は、今の所必要性を感じないしな。体を拭くだけは少し辛いけれども。 結構この世界も不思議だよな。魔法で色々解決出来るからか、家の中だけだが見た限り科学は発達してないように思える。光とかも魔法の道具、魔具らしいし。
ゆっくりで良いだろうが、早くこの世界の事を知りたいな。凄く興味がある。
そんな事を考えてる内に、私はいつの間にか眠っていたようだ。気付いたらベッドの中にいた。と言うか朝だった。