034 ギルドと私
急展開な会話はいつもの事と流してください……。
今回は短め。
――皆さんは、異世界と言えば何を思い浮かべますか?
魔法?剣?魔物?お姫様?勇者?魔王?
――いいや、違う。
「――とゆー訳で、ギルドに登録するわよ!!」
「は?」
リーリア(今では皆呼び捨てで呼び合ってる)と作ったクッキーをお茶請けにティータイムを過ごしていた私達は、唐突なしぃの発言にポカンとした。
いきなり冒頭の台詞を語り始めたと思えば、立ち上がり拳を握り、そう宣った。
「……いや、いきなりどうした」
硬直から抜け出し、静かに問うた。それに鼻息荒く答えるしぃとの温度差は、まさに夏と冬。
「ふっふっふ……ギルドよギルド! 所謂ハロワとか派遣会社みたいなものに近いらしいんだけど、子供でも別枠で登録出来るのよ。お小遣い稼ぎにね!」
「へえ」
「当然、冒険者としても登録出来るわ。皆等しく試験を受ける必要があるみたいだけど」
城にいてどうやってギルドの情報何て集めるんだか……。
「ギルドに登録すれば、お金が稼げて修行にもなる! 戦いまくるわよ!」
「流石脳筋族、歪みない」
「寧ろ悪化してるわね」
私とリーリアが冷静にツッコム。アリシアとアズリアは、耳を傾けながらもお茶を楽しんでいる。
そんな乗り気じゃない私達を、しぃはキッと睨みビシッと指差した。
「いい!? 私達は高い地位にいる魔族よ!? 暗殺者を蹴散らせる程度の実力は確実にいるわ」
確かに、私達は狙われやすい。まあ、世界最強の国のお姫様と高位貴族の令嬢にむやみやたらに手を出すバカはあまりいないけど。内部犯なら良くて一族郎党皆殺し、他国からだったら確実に国際問題で戦争になり兼ねない。
「確かに戦闘訓練は受けてるよ? でもさ、ギルドって荒くれ共が多いイメージだし、逆に危ないんじゃねえ?」
「そうね、森に出たら人目もないし、暗殺には打ってつけだと思うわ」
「大丈夫よ! それも想定内だもの」
私達の反論は意に返さず、ふふんと得意気に鼻を鳴らしたしぃは、軽やかに説明を続けた。
「寧ろ狙いはそれよ。私達に暗殺者を仕向けるバカを炙り出したいの」
「……何故?」
「つかそれ、囮かよ」
「悪いけど囮、餌よ。最近色々きな臭いのよね。煩わしいし……」
きな臭い、ねえ…? 私は知らないが、きっと城では色々あるのだろう。忌々しそうに歪んだしぃの顔を見て思った。
「でもね、ギルドに登録するのはそれだけが理由じゃないわ。それだけならギルドに登録する必要はないもの」
表情を普段通りに戻したしぃは、椅子に座りそう言った。まあ、囮になるだけならその辺ぶらつけばいいしね。
つーか、しぃに暗殺者張り付いてんの? まあ、ホームには自宅から転移ポータルで一っ飛びだから、来る途中で死ぬって事はないだろうけど、外出は控えようよ。と言うか、もっと早めに言って欲しかった。
私の心内なんて知らないしぃは、見た目相応にキラキラと目を輝かせた。
「だって、ギルドよ? 憧れるじゃない! 完全な実力社会で、色んな冒険をするの! 仲間でね!」
楽しそうじゃない? と無邪気に笑うしぃに、思わず噴き出した。
「っはは!」
「むっ、何よう」
「いや、あはは……っ。うん、いいなって」
何と言うか、しぃらしい。何事も楽しむタイプだからね、しぃは。暗殺者云々は、取って付けた言い訳にすぎないだろう。
笑う私を見て、しぃはぷくっと頬を膨らませたと思ったら、次には苦笑を零した。
「……まあ、あとは町の様子を見たり、町での常識や暮らしを知ったり、って言うのもあるわ。謂わば社会勉強ね」
「観光込みの?」
「込みまくりの」
ニヤリと笑ったしぃにまた大笑い。いいねいいねっ、楽しそうじゃん!
イマイチ着いてこれていない三人を、二人がかりで説得する。ぶっちゃけ私達、町の常識を知りません。かなり自由にやってはいるが、結構な箱入り娘なので平民の暮らしや常識はあまり知らないのだ。
色々経験するのもいいだろう。何より、皆で何かするって良い思い出になりそうだ。
「なら身分は隠さなきゃね」
「変な勘繰り入らないものね」
「服装も平民のにして……武器は、まあいっか」
「あーもう、楽しみぃ〜♪」
ウキウキする私達二人に、アリシア達も釣られて楽しそうに笑った。
思い付きで決めた事だが、何だかワクワクが止まらない。きっと、良い思い出になるだろう。




