021 落ち込む私
別名、再び厨二覚醒(笑)の巻。
誕生日前日。日付を跨ぐ前についにプレゼントが完成した。
「くふふ……やったった、やったったぞ私ぃぃぃ」
<マスターが壊れ気味です>
失礼な。私は一切壊れてないし至って正常だぞ。
いやしかし、本当に頑張ったな、私。目の下には隈が出来たし、昼間は惰眠を貪り遊んでくれないとアリシアにはむくれられ……。うむ、頑張った。
完成したプレゼントの最終チェックを終え、綺麗にラッピングする。木箱に入れて包装しリボンを付ける。うむ、完璧だ!
「よっし!完璧やー」
<流石マスターです。では、私の中に保存しておきましょう>
「ういうい」
これであとは、明日の料理を作るだけだ。明日は私の誕生日でもあるので、調理権をもぎ取るのは苦労した。
さて、じゃあ寝るかな、と欠伸を一つ零した時、フローラから声が掛かった。
<少々お待ちを。あと二分でマスターは五歳になります。それまでは此方で待機をお願い致します>
「はい?何でさ?」
<アリシア様を起こさぬよう配慮した結果です>
意味分からん。一体何があるんだ?何というか、嫌な予感がするんだが。黒歴史的な意味で。
だがまあ、嫌な予感とは言っても同時に気分が高揚している。てっきりプレゼントが完成したからと思ったが、ちょっと違うっぽい。
一体何があるのか尋ねても、すぐに分かります、としか言わず悶々とした。そして、午前0時を迎える。
<――カウントダウン開始。3>
――ドクン、と胸が大きく高鳴る。
<2>
――不思議と歓喜が沸き起こる。
<1>
――心が躍り。
<0>
――――世界が、色付いた。
「わ、ぁ……っ!?」
色とりどりの蛍みたいな光がふわふわと周囲を漂っている。きゃらきゃらと楽しげで嬉しげな愛らしい鈴を転がしたような笑い声が聴こえる。よく見ると、淡い光には半透明な羽の生えていて、光は丸だけでなく雫みたいなのもある。
これは、何……?妖精?
「なっ……、ぬぁんじゃこりゃあああああっ!!?」
思わず絶叫し、目を見開いたまま蛍モドキを凝視した。
唖然としていると、フローラが説明してくれた。
<これは精霊です。元々マスターは視える人でしたが、他には視えないモノが視えるのは精神的ストレスになりやすく、マスターの精神の安全を考慮し今まで視えないようにしていました>
「……えっと、フローラってスリープモードだったんだよね?それでも出来るの?」
<私の場合も、マスターの混乱を避けるためでした。ですので、仮に精霊眼と呼びましょうか、それも混乱防止に封じていたのです。私と一緒に封じていましたし、スリープモードでも問題ありませんでした>
えっと、この蛍モドキは精霊で、視える人……精霊眼持ちは少なくて、だから私が混乱しないようにフローラも精霊眼も眠らせていた、と。
配慮は嬉しいが、だったら先に言っといて欲しい。つい絶叫しちゃったじゃん。……ああ、だからここに留まらせたのか。確かに部屋や廊下で絶叫したら迷惑だわな。
第一、何故フローラと一緒に封印解除が……あ、精霊眼は五歳にとリミットは決めていたが、フローラ自身は条件をクリア……って、あれってフローラが設定したの?
「あの条件って何?精霊眼も気になるけど、アレも気になる。つーかまた厨二病に……」
<落ち込まないでください、マスター。条件なども、その内お分かりになります>
フローラは教えてくれなかった。だがしかし、その内分かるならいいけども、精霊眼は……ちょっと、厨二過ぎねぇ?
精霊は可愛いが、私は落ち込むしかなかった。ショックが大きいのですよ。ただでさえ厨二よろしくピンチに能力覚醒とかしちゃってさ、カッコ笑いが付いちゃうような事になってる上、四神英雄の種族特性が色濃く出てるとか、もう厨二病まっしぐらだもん。
<安心してくださいマスター。マスターがいたところでは厨二病だとしても、この世界では凄い事です。いくら存在自体が妄想の権化みたいだとしても、マスターは凄まじいお方です>
「ぐふぅっ!」
トドメを刺された。酷くないか、それフォローじゃないからな?わざと?わざとなのか?
両手両膝を突きうなだれ、割とガチでショックを受けた。うぅ、フローラお前ぇ……。
だがまあ、いつまでも落ち込んでなんていられないので、サッと立ち上がり深い溜め息を吐いた。
「はあぁぁぁ〜……。……まあいいや、誰かさんのせいで疲れちゃったし、さっさと戻って寝よ……」
<そうですね>
……コノヤロウ。
精霊眼は、ぶっちゃけ書き忘れたので今出しました。本当は前回の襲撃事件でフローラと一緒に覚醒の予定だったのに……。