017 探偵気分の私
伏線?回収と、またもや説明回。あれは伏線と言えるのか……。
怪我は、私が意識を取り戻した事によりすぐに治された。フローラが持っていた劇薬……基、超絶強力な薬を一滴、百倍に薄めて飲んだのだ。一瞬で治ったけど、基本使えないらしい。強力過ぎて……劇薬だよね?
中身はそれなりの思考が出来ると分かった今、私は両親に事の顛末を説明して貰うのに成功した。兄弟は説明なしです。だって余計に怖がらせちゃうから、解決したら話す予定らしい。まあ、アイリス……アイ姉は精神早熟らしくある程度は聞いたらしいが。因みにレオンはレオ兄と呼ぶ事にしました。
そして聞いた話は、複雑な気持ちにさせられた。
「あの使用人達が間者なのは、二年前……レイとアリシアが生まれて半年ほどで気付いていたんだ。僕達はそれを敢えて放置し、泳がせていた」
「監視は常にしていたし、調べた結果まだ事を起こすとは思わなかったから、レイちゃん達とも接せられたのよ」
二年?それまた何で……。と言うか、それは危険過ぎないかな?賭とも言える行為だ。
「いや、彼女等は確かに暗殺者だ。でもね、それは今の話。当時彼女等はただの使用人で、買収され僕達を監視するようになったんだ。だからね、いくら種族柄強さはそれなりにあっても、僕達には敵わない。つまり、訓練を積む必要があったんだよ」
「因みに、彼女等は妖精族か魔族で、個人差はあれど皆戦闘に向いた種族なの」
あ、成る程。確かに、両親は四神英雄と呼ばれる人達の血を引く二つ名まである辺境伯で、種族も実力もまず敵わないだろう。いくら、子供と言う足枷が居ると言っても、だ。まあ、二年で対抗出来るだけの力を得られるとは、ちょっと驚いたが。
「それがね、私達も驚いてるのよ……実力的に、彼女達が私達を傷付けるのは今の段階でも厳しかったの。でも、予想以上に強くなっていて、何より相手は殺すつもりで掛かってきていたし目的もちょっと……思ったよりやられちゃったの」
ふぅ…、と溜息を吐きながら言った母。目的……色々気になる事はあるが、目的は一番気になる。強さの秘密、は才能で片付くのかな?
ジッと見つめ続きを待っていると、父が話し出した。
「向こうの目的は、僕の殺害とアイリの捕獲。そして、子供は……最低一人は娘を攫う事、だったみたいなんだ」
一瞬躊躇ったが、ちゃんと話してくれた。何故攫う?いや、それより、その話が合ってるなら、私とアリシアを殺そうとした女と転移後襲い掛かってきた女達はグル……で、いいんだね?それなら辻褄も合うが……やはり、解せないのは誘拐を仄めか……、まさか…。
「……おんなだけ、さらうの?てきは、おとこ?」
「……!…ああ、そうだよ。…よく、分かったね」
舌っ足らずだからあまり話さなかったが、これだけは聞いた。そして、確信。黒幕は、好色野郎の変態ロリペドキモ男のようだ。母の美貌に目を付け、父を亡き者にして攫い、母の美貌を受け継いでいるであろう娘にも目を付けた……そんな所か。……胸くそ悪い話だな。
その思いが顔に出ていたのだろう。父が苦笑して私を膝の上に抱き上げ頭を撫でてくれた。
「レイには分かってしまうみたいだね。それなら話すが、相手は元々アイリに……母様に結婚を申し込んでいた貴族の人でね……アイリと結婚した父様を恨んでいるんだ」
「……ごめんね、レイちゃん。母様のせいで怖い目に遭わせてしまって……」
申し訳なさそうに言う母の言葉を、勢い良くぶるぶると首を振り否定した。悪いのは、諦めの悪いくそ野郎であって、愛し合って結ばれた両親に非はないのだ。母にプロポーズもキッパリ断られたのなら、母の気持ちなんてすぐ分かるだろうに……それを考えず勝手に逆恨みして、自分の激情に忠実になり暗殺と誘拐を企て実行するような大馬鹿者を、稀代の愚か者を、庇う必要なんてない。
そう心の中で言えば、フローラが一字一句その通りに伝えてくれた。…心読めるの?
フローラが代弁した言葉を聞き、両親は目を丸くし驚いたものの、すぐに破顔してありがとう、と言った。伝えるつもりがなかったからとっても臭い台詞な気がするので、かなり恥ずかしかった。
現在捕らえた元使用人達は、地下の牢屋にぶち込んでいるらしい。どうやら祖父母も気付いていたらしく、急遽作ったのだとか。そういえば、あの爺臭い口調の母方の祖父であるフリードお祖父様が「良くも悪くも変わらない」と評していた。…あれだけじゃ分からんて。
其奴等の話によると、どうやら結界内に容易く侵入出来たのも、寸前まで察知されず攻撃出来たのも、両親に多対一ながら奮闘出来たのも、雇い主に貸し与えられた魔具のお陰らしい。そして、誘拐用の拘束具も与えられていたとか。
全て取り上げ調べてみたが、全く見た事がない魔具ばかりで、特注品らしい。それをポンと貸し与えられるとか、雇い主はどんな人物何だろうか…。
「ただ、彼の性格からして、そんな高価な魔具を易々と他人に貸し出すとは思えないんだけどね…」
「そうねぇ……自分自慢が多くてナルシストで自意識過剰の自信過剰、お金にガメツくて女好きな性格の悪い男だもの。そんな甲斐性はないわね」
……母よ、あーた結構言いますね。サラリと盛大に扱き下ろしちゃってるよ……。父も頷いてるし、どうやら正当な評価みたいだが。逆にどんな奴か会ってみたいわ。
今日はそのままお開きになった。後日、その貴族は捕まり家は取り潰され、事件は収束に向かった。
――――だが、事件の真相はこれだけではなかった。その貴族を唆し事件を引っ掻き回した本当の黒幕――それを知るのは、まだまだ先である。
一応、これで事件解決です。まだ不明瞭な部分もありますが、一応一先ず納得して下さい。
伏線、全て回収出来るか不安だったりします。