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色付く世界  作者: 色輝
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014 危機迫る私


 その日は、朝から嫌な予感が止まらなかった。いや、数日前から、か。

 ただなぁ……祖父母の時に働かなかったから、信用がた落ちなんだよね、この直感。


 今日は、三日くらい前から王都に行っていた父が帰ってくる。だと言うのに、嫌な予感が止まらなくて戸惑った。ぬぅ、今までに感じた事のない頭痛がするほどの激しい物だ。…気を付けておいた方が良いか。


 父の乗った馬車が帰ってきたのを聞き、皆で出迎えた。



「ただいま、皆」


「お帰りなさい、レンリ」



 まず、母と抱擁を交わす。そして、私達子供を順に抱き上げ抱き締めてくれた。…父に変化は、ないよね?相変わらず美しいです。

 父が着替えやらを済ませる間に皆で談話室に移動し、父が来るのを待った。むぅ……嫌な感じがしてどうも落ち着かないなぁ。折角の家族団欒なんだし、これは後で考えよう。

 ふるり、と首を振り、家族の会話に参加した。迫り来る、災厄の報せを振り払って。




 ――会えなかった三日間で何があったのか話している時だった。お茶のお代わりを持ってきた使用人が、私とアリシアの前のカップを換えようとした時。無意識に、自分の意識外で自然とそれが当然のように、体が動いた。


 自分でも認識しない内に、アリシアの腕を掴み、前屈するようにぺったりと前屈みになった。――瞬間、一瞬前まで私達の首があった部分のソファーが、横一文字に切り裂かれた。

 だがそれに気付く前に、使用人の女は吹っ飛び壁にめり込み、私達は母の腕の中にいた。



「……まさかこのタイミングで仕掛けるとはね。もう少し先かと思ったが…」


「レンリ!そんな考察は後にして!今のは油断し過ぎよ。レイちゃんが気付かなければ二人は、この子達は…ッ!」


「分かってるよ、アイリ。僕達に寸前まで気付かせないとはね……見誤っていた」



 頭上で、そんな意味の分からない会話が繰り広げられている。恐らく父に殴り飛ばされたであろう使用人と、ソファーに刻まれた殺意に満ちた跡がが、何があったか物語っていた。…私達は、暗殺されかけたのだ。 それを理解した途端、濃厚な死の気配に体が震えた。ガンガンと更に激しく鳴り響く警鐘がそれに拍車を掛けた。私の震えが伝染したのか、アリシアも震え遂には泣き出した。私も釣られて泣き出した。

 何だ、これ。何なんだよ、これは!何でいきなり殺され掛かってるのさ!?おかしいだろ!?どうして、父も母も冷静なの!?



「アイリ、子供達を」


「分かってるわ」



 たったそれだけだった。私達五人を抱き寄せ、母は転移した。そこは、あの転移ポータルが置いてある部屋だった。……そこには、使用人が五人、武器を構えて待ち伏せていた。

 それには流石の母も驚いたらしく、私達を背中に隠し警戒を露わにした。



「……ここには、限られた者しか入れないはずよ?」


「ふっ……奥様、僭越ながら此方の結界魔法は少々古いのでは?容易に(・・・)開きましたよ」


「ッ!?――有り得ないわ!許可された者のみが通れる五重の結界よ!?」


「たった(・・・)五重の、それも誰もが知っている既存の魔法でしょう」



 小馬鹿にするように、嘲笑いそう言った使用人。此奴等も、あの暗殺者の仲間、なのか……?


 少し落ち着いた頭で考える。両親が直前まで気付けなかった攻撃に、強力な結界を物ともしないその実力……かなり、強い部類なのではないか?両親の強さは知らないが、四神英雄と呼ばれる祖父母の血を継ぎ辺境伯を任されてるほどだ。推して知るべし、だろう。

 その両親が、追い詰められている。暗殺者の存在は知っていたようだが、完全に後手に回っているなんて……私が思っている以上に、状況はヤバいのかも知れない。



「足手纏い(こども)がいては、真の実力等出せないでしょう」


「……そうかしら?貴方達程度なら十分よ」


「そうでしょうね。我々では束になっても《最美の金色姫》には敵いません」



 あっさりと認めた。どういうつもりだろうか?わざわざ答えるのにも気にかかる。だってさ、これって時間稼ぎでしょ?父が来るまでの。私でもすぐ分かったのだから、敵さんが分かってないなんて事はないだろうに。《最美の金色姫》とは母の事だろうかと、今は関係のない事が頭を掠めた。

 得体の知れない不気味さを孕んだ薄ら笑いを浮かべた敵は、各々で武器を構えた。魔力の高まりを、感じる。空気が震え、警鐘がガンガン鳴り響き、ピリピリと痛い空気が肌を刺す。



「――我々の目的は、暗殺ではありませんので」


「なっ……、ッ!!?」



 そう呟くや否や、母を襲い掛かる三人の女。二人は後方で控え、魔力を高めている。【魔力感知】のスキルで魔法を使おうとしているのが分かるものの、だからと言って役に立つ訳ではない。


 目の前で襲われ、私達を護りながら応戦する母。私達はただ、恐怖で震えているしかなかった。暗殺が目的じゃないと言いながら、さっきは殺されそうになり今もピリピリする重たく鋭い空気を発する敵に、頭もゴチャゴチャになった。

 それでも、私がみっともなく泣き喚いたりしないのは、身を寄せ合っている兄弟のお陰だ。震えながらも私達を守ろうとするアイリス、弟――レイアを抱き締めるレオン、私の服を握り締め今にも零れそうな涙を瞳にいっぱいに湛えたアリシア。体は小さいけれど、中身は私が一番年上なのだ。私が、私が護らないと――ッ!


 警鐘が、鳴り響く。魔力の高まりを感じる。想うのは、胸に抱くのは、大好きな家族の笑顔。


 ブルブルと体が震える。フーフーと大きく息を吐き出し手を握り締める。恐怖に汚染された脳は、それでも愛への渇望で無理矢理動かす。

 やっと得た家族だ。死なせたくない。守りたい。護りたい。助けたい。――勇気を出せ、レイハナ!


 一歩。とてもとても小さなモノだったが、それでも自分の意志で右足を前に出した。

 ――正真正銘、心からの家族になりたい。家族に、なるんだッ!!




 ――第二条件『家族愛』『愛しき絆』『強き想い』『震える勇気』『兄弟の涙』『迫り来る死』『危機一髪』『危ういつわもの』『覚醒への第一歩』オールクリア。■■■■の起動・覚醒を開始します。3、2、1、0。


 ――覚醒、完了。



 甲高い、澄んだガラスが割れるような音が脳の奥で響いた。

 ――――震えは、もう止まっていた。




展開が早くてすいません。


新連載始めました。宜しければ其方もどうぞ。

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