010 親友と私2
会話文と説明多し。
その日はお城に泊まる事になった。怪我はやっぱり大した事がないらしく、ちょっと痛むくらいで何ともなかった。まあ一歳の攻撃だもんな。
ご飯を食べ、魔法で体を綺麗にし子供達は皆同じベッドに入った。正確には、私としぃとアリシアとアズリアちゃん、リーリアちゃんとレオンだ。あれ、レオンってばハーレムじゃね? 魔法があるからお風呂がいらないのだ。お風呂はあまり好きじゃなかったが、ちょっと恋しい。魔法は便利だが、お湯に浸かってのんびりしたいなぁ…。なんて思いながら、しぃと念話をした。
『しぃ、続き聞きたいんだけどいい?』
『勿論いいわよ』
やっぱり日本語はいいなぁ。未だにこっちの言葉は慣れないし、分からない単語とかもあるし。ぶっちゃけ、父が貴族だって言うのも、家名の後に何かが付いていたからそう思っただけで、位は分かってなかったりした。ご飯の時、その辺だけちょろっと聞いたが、辺境伯って奴らしい。
ご飯の時は母達にバレないようにしたかったからあまり話せなかった。だから、漸くしぃに何があったか聞ける。
『…まあ、正直私自身信じたくないって言うか、物凄く怪しかったし話したくないんだけど…』
『怪しかったって……滅茶苦茶気になるんですけど』
余計気になるぞ、それ。苦渋に満ちた声色も拍車を掛けている。何があったのさ、しぃ。
しぃが言い出すのを待っていると、漸く重苦しそうに話し出した。
『……自称神様に、遭ったのよ』
『………は?』
『それもね、ソイツはみぃが遭った事故に偶々目を付け、あの事故で亡くなった12人を暇潰しに異世界に転生させようって思ってたみたいなの。でも、何故か魂は11人分だけで、もう一人のは見つからなかったみたいなの』
一気に話し出すしぃ。思わず唖然としたが、続きは何となく予想が付いた。
『…まさか、その一人って…』
『みぃ、だったみたい。調べたら自分の干渉なしに転生していて、面白そうだからと、みぃと親しい者を転生させようとしたみたい…私が死んだのは自称神のせいらしいわ』
『……』
…しぃが死んだのは、私が原因…?私の代わりに、しぃが…。
ザッ、と青褪め黙り込むと、それを察したのか、しぃが声色は変わらないが、気にしてないと言うように言葉を紡いだ。
『他の11人もこの世界に転生してるらしいわよ。まあ、怪しかったけど、みぃと会えるなら別に良いかと思ってね。願いも叶えてくれるらしかったから、みぃと同じ時代で同い年の生活に不自由せず暖かい家庭の娘に生まれて絶対にみぃと会えるようにって願って、CWOのキャラデータ引き継ぎ、情報収集の才能と転生者とその能力が分かるようにって願ったの。向こうが私を玩具扱いするなら、とことん利用してやったわ!願いは三つだけだったんだけど、情報収集と転生者が分かるようにってのは似たようなモノだから二つで一つにしてってごり押ししたった!流石ね私!』
おほほほほっ!と高笑いするしぃに、脱力した。しぃは変わらないなぁ…強かで、優しくて……そして、寂しがり屋さんだ。昔は泣き虫だったのに。
苦笑しながら、アリシアを挟んだ向こう側のしぃに手を伸ばした。きゅっと握られた手を握り返す。
『…まあ、それだけじゃないんだけどね』
『え、怪しさ満点の自称神だけじゃないの?』
声を落としたしぃに疑問を投げ掛けた。神様が暇潰しに転生させる、なんてフィクションの世界だけだと思ってた現象が起きたのに、まだあるのか。 神妙な様子で話し出したしぃに、知らず喉を鳴らした。
『…転生させられる時に、声が聞こえたのよ。とても優しい、“ああ、神様だ…”って思わず思っちゃった声が』
『え…』
『その声がね、私に言ったの。“あの者がごめんなさい…あの子をどうかお願いします”って。あの子が誰だか分からないし正直うろ覚えだけど、多分あれが本物の神様何だろうなぁ』
声、か……無神論者のしぃがそう思うなんて、以外と本物かもね。それじゃあ自称神はどうなんだって話だが。
何だか余計謎が深まった気がしたが、その日はそれでお開きにし眠った。今の体じゃ夜更かしなんて出来ないのだ。
その日は、夢を見た。
見渡す限りの海。いや、湖かもしれない。兎に角穏やかな水面が広がり、私はそこに仰向けに寝ていた。上を見上げれば、様々な色の光の雨が降り注ぎ、満天の星が悠然と輝く夜空には島や白い雲がゆったりとたゆたっている。不思議と昼間のように明るい。
また水面に目を向ければ、水は様々な色彩のドレスに着替えたり、渦潮や波などを起こし表情を変えている。私の周辺だけは変わらず、業火が燃え盛っていたり、雷が迸ったり、巨大な森林があったり、様々な生物が息づいているのが見える。先程までの水だけの光景も美しかったが、この、ごちゃごちゃしてるようでどこか纏まりがある奔放で美しく非常識な光景もイイ。
水面に掌を付けさするように動かすと、表面の水だけが跳ねて気持ち良い。普通の床とは違うツルツルした感覚は溶けかけた氷みたいなのに、心地良い程度のひんやりとしか感覚は氷とは違う。
前世でも稀に見ていた。生まれ変わり、年を追う毎に頻度を増して見る、不思議な夢。美しく、落ち着く大好きな夢。
そこに立つ、場違いとも言える人達は、一体誰なんだろう。遠くても何となく分かるほど優しく、慈愛あるあの人達は、一体――。
近付こうと思った時に、いつも目を覚ます。
不思議で、美しくて、寂しくて、暖かい。久し振りに見る、夢だった。
神様とか嫌いな人がいそうですが、どうか見捨てないで下さい。