恐らく五話だろう
言うまでもないかも知れないが一応言っておく
作者は滋賀住み(;´д`)ゞ!
あっというまに日は過ぎて土曜日の朝。結城はぐっすりと眠っていた。最近はあの世界に呼ばれることもなく最後に行ったのは栗山 真の時ぐらいだ。基本的にあの世界に呼ばれるのは多くて週三~四、少なくて二週間に一回から一ヶ月に一回、それ以上も以下もあまりない。なのになぜ疲れているわけでも無いのにこんなにも寝ているのか?答えは簡単、休みだからだ。用事がない場合結城は昼過ぎまで寝ている。低血圧もあるのだが、本人いわく『休みは寝るためにある』ということだ。今日もまたゆっくり昼過ぎまで寝ようとしていたときに、
~♪
結城の携帯に一件メールが入る。
「朝から誰やねん…」
結城は寝ぼけながら携帯をいじり届いたメールを開く
『
差出人『斉藤 務』
件名 『着信アリ』
本分
『転送スレバ死ナナイ』』
迷わず結城は務にメールを転送して再び布団にうずくまる。
~♪
また結城の携帯にメールが届いた
チッ、と舌打ちしながらメールを開くと務からであった
『速すぎるわ!もう少し躊躇いを持て!!転送されたやつは死ぬんだぞ!』
ポチポチポチ
『で、何?朝早くから』
~♪
『お前、今日一緒に映画観に行く約束忘れてないやろな?
約束は10時00分に駅前集合
今の時間は09時28分やぞ?』
そのメールを見た瞬間結城の頭はフル回転して目が覚めた
ポチポチポチ
『任せろ。俺を誰だと思ってる?忘れてるはずなかろう
勿論10時00分には駅前についてるさ』
結城は片手に携帯を持ちながら返信しながら急いで私服へと着替えていた
~♪
『一秒でも遅れたら雫ちゃんにお前の連絡先バラす』
ポチポチポチ
『待て、それだけは勘弁してくれ』
~♪
『遅れんなよ♪』
「あの野郎がぁぁああ!!!」
結城が私服に着替え終わりいろいろ準備をして家から出れる状態になったところで時間は09時49分分
結城の家から駅までは自転車でおよそ13分
「行ける!本気で走れば行けるはずだ!
財布と携帯は持ってる!行くぞぉぉお!!」
結城は財布と携帯さえ持っていたらあとは何とかなると思いあまり忘れ物の確認をせずに智里に「遊んでくる!」とだけ言って急いで家を出ていった
結城の部屋にはいつものように時計の横に緑色のリストバントが置いてあった
―09時59分―
「36、35、34、あ、きよった」
務のすぐ先には肩で息をしながら走ってくる結城がいた
「駐輪場から駅まで微妙に遠かった…」
「惜しいな~、あと数十秒だったんだけどな」
「間に合うに決まってるだろう。俺だからな」
「はいはい。じゃあさっさと切符買うか。電車も来るし」
「ああ」
結城は務から少し離れて歩く。
「おい…」
「話しかけるな…
はたからみたら絡んでるようにしか見えん」
「お前、それ何回目だよ」
とふざけながら務と結城は切符を買うと電車に乗るのであった
―10時24分―
電車から降りると務が走り始めたので結城はそれを追いかけていく
大きい建物に入ると務は一直線に映画館へと向かった
「セーフ!!10時30分の上映までには間に合った」
「無駄に走らせるなよ…」
務はとても楽しみにしていたのかレジに行くと笑いながら『大人、インセクト二枚』と言った。結城もその隣にいたのだがあまりにテンションが高い務についていけずに少し引いている。
「す、3Dですのでお二人様で1500円になります」
店員も結城と同じように強面の笑顔の務に少し引いているが、そこはちゃんとした店員でたとえひきつっても笑顔は崩さなかった
二人はお金を払うとスクリーンの場所まで移動しようとしたのだが務が突然
「やっぱり、映画にはポップコーンだな
すぐ買ってくっから待っといてくれ」
といってポップコーン売り場に走っていった
(いらんだろ別に…
ってか1500円高いな)
と思っていると後ろから声をかけられた
「すみません、あの人のお友達でしょうか?」
結城が振り返るとそこにはだいたい同い年でメガネをかけて一見地味そうな女の子が務を指差していた
「あ、はい。そうですけど…」
「さっきあの人が映画の券を落としていったんで、これです」
メガネの女の子は手にインセクトと書かれた一枚の券を持っていた
「あー、多分あいつのです。ありがとうございます」
お礼を言ってメガネの女の子から券を貰おうとした時ふと片方の腕についてある緑色のリストバントが目に入った
「リストバント…」
「えっ?これがどうかしましたか?」
「いえ…別に。すみません。ありがとうございました」
「いえ…私も映画を見るので」
メガネの女の子は映画の券を結城に渡すと結城たちが見るのとは違う映画を見に行った
(そういや、俺リストバント置いてきたわ
別に持っとく必要が無いから忘れてた…
…あの女の子ももしかしたら鬼狩りしてんのかな?それとも偶然緑色のリストバントしてたんかな~
まぁ、どうでもいいや)
女の子が去ってから数秒後に大量のポップコーンが入ったバケツサイズのカップを両手で持ちながら務は走ってやってきた
「さっ、見に行こうか」
「お前、映画の券無いのにどうやって観に行くんだよ…」
「えっ…、あれっ?そういや握っていたはずの映画の券がねぇ!!」
「さっきメガネの女の子がお前の落とした券を届けに来てくれたぞ」
そういって結城は映画の券を務に渡した。それを務は大事そうに受け取りポケットにしまう
「いや~ありがたい。その女の子に感謝だな!」
「そうやな」
「…でもさ」
「ん?」
「俺が落としたってわかってたならなんで俺に届けてくれなかったんだろう…」
「答えは鏡の中にあるよ」
「…………観に行くか」
先まで高かったテンションは一気に下がり務はトボトボと上映される場所まで歩いていった。
―12時30分―
現在務は結城の隣で涙を流していた
「ちょっ、お前泣き止めって」
「だって、だってよぉぉお。まさかアランドロフが人間に殺られるとは思ってもなかったしよ…」
務は映画の内容に心を射たれ涙を流しているのだが、他人から見れば強面の坊主が涙を流している=尋常じゃないことがあった。にしか見えない。そしてその隣に介抱している男が立っている=そいつが何かしたんじゃないか?という視線を浴びる結城はかなり困った状況にいた
「もう頼むから泣くな…俺が泣きたくなる」
「だってよぉぉお」
「昼奢るから」
「飯食いに行くか」
務はおごるという言葉を待ってましたと言うように態度が180度変わった
「この野郎ぉ…」
「俺、ラーメン食いたい気分やわ」
結城は自分で言ったことは仕方ないと思いながら映画館を出てラーメン屋を探すのであった
務の案内によりついたラーメン屋は映画館のすぐ近くにありあまり大きなラーメン屋では無く隠れた名店と言うようなオーラを放ってたっていた
「ここの味噌がうまいんだよ!」
「なんでお前は知ってるねん…」
「勿論、常連だからだ!!
おやっさーん!」
務はそそくさとラーメン屋に入り、テレビで見るように店主を呼んでいる
結城もラーメン屋に入ったところ中は人が何人か座れるほどの椅子しか無く客はサラリーマンみたいな人がチラホラといるだけであった
「おい!こっちこっち。お前の分も頼んどいたし」
「どんだけ食わせたいんだよ…」
務が泣くのを止めてほっと結城であったがテンションがあまりにも高い務の相手をするのも面倒と思う結城であった
「お待ちどうさま、と
味噌二つね
坊主は味噌が好きなんだな~
隣にいるのはダチか?」
「ここの味噌上手いですもん。隣にいるのはそうっすよ。結城って言うんで、恐らく常連になるうちの一人だと思います」
「勝手に決めんな」
「まぁ、まぁ、とりあえず食ってみろって」
結城は務に進められるまま味噌ラーメンに箸をのばす
「……美味いとは思うけど比較する対象がインスタントしか無いしな」
「今度からお前、休みの日はラーメンを食べ歩け。そして他の店と比較しろ。絶対ここの味噌が勝ってるから」
「嫌じゃ」
―13時48分―
「あー、美味かった」
「次どこいく?」
昼御飯を食べ一息して次の行き先を二人は決めていた
「適当に店見に行くか?それともゲーセン、ボーリング、カラオケ…」
~♪
どこにいくか悩んでいたとき務の携帯が鳴った。
務は携帯を取りだしメールを見て少し考えるように唸りはじめた
「どした?」
「母さんからのメールで、『帰ってきなさい』としかかかれてないんだよ…
なんか怒られるようなことした覚え無いんだけどな…」
「まぁ、仕方ないんじゃね?とにかく家に帰ったら?」
「でもこれから…」
「あぁ、気にすんな。今度何か奢ってくれたらいいよ」
「…お前、最悪だな」
「えっ?なんでもいいって?」
「黙れ
…悪いな、じゃあ帰るわ。奢ってくれてありがと!!」
務は自分の荷物を纏めると走ってラーメン屋を出ていった
「俺も適当にぶらついて帰るか」
結城もお金を払いラーメン屋を後にする
―14時00分―
なんか面白い漫画でも無いかと思い本屋に一人結城は来ていた。うるさい務もいないためゆっくりと本を探していると先程見たメガネの女の子が本をじっくり見ているのが結城に見えた
別に声をかける必要もないのでそのメガネの女の子から視線を外し再び本を探そうとしたときふとメガネの女の子の腕を見てしまった
(まさか!?)
メガネの女の子の腕は特に変わったところは無い。先程左腕につけていたリストバントが緑色なら黄色く変わっていくことを除けば…
(嘘だろ?俺なんも持ってきてないんだが…)
結城は本屋を後にして人気の無い場所へ移動していた。急に今の場所から消えてあの世界に行くためである。人に見付かると神隠し、もしくは瞬間移動にしか見えないためいつあの世界に行くのかとひやひやしながらトイレにかけこんだ。
さいわいトイレには誰もいなかった
結城がトイレにかけこみ数秒すると結城の見ている視界はトイレから瞬きする間にいつものジャングルへと変わっていた
「はぁ~、黄色レベルかよ…」
この世界にくると絶対にリストバントは手についてある
例え現代で着けてなくてもだ。この世界でリストバントがついていない=死だ
わかってたはいたが結城は改めて自分の腕についてある黄色のリストバントを見て溜め息をつくのであった。