転生しても貧弱でした。王様といっしょ
「おい凱! 久しぶりだな! 城塞を抜け出してきたぜ!」
自室の窓をぶち破り、黄金のオーラを纏った超・美青年が降ってきた。
前世からの親友にして、この異世界で最強ステータスを誇る『覇王』ことレオンである。
「相変わらず元気そうだな……俺は今、お前が割ったガラスの破片が掠って右半身が粉砕骨折したところだが」
「はっはっは! 相変わらずヘ弱だなあ! さあ、昔みたいにバカやって冒険しようぜ! 近くに絶景の山登りコースがあるらしい!」
無邪気に笑う親友。だが、その神々しい王の姿のまま外を歩けば、即座に国軍包囲網が敷かれるだろう。
「仕方ない。新しく覚えた『偽装』スキルを使う。お前の姿と気配を、ただの村人風にごまかす魔法だ」
「おお! 便利だな!」
俺がスキルを発動すると、レオンを包んでいた黄金のオーラが消え去りパッとしない青年の姿へと変わる。見た目はバッチリだ。
しかし、一歩を踏み出したレオンが、突然ガクッとその場に崩れ落ちた。
「……おい凱、なんだこれ。体が……鉛みたいに重いぞ……?」
「ああ、言い忘れてた。俺の『偽装』スキルは、姿だけでなく『俺自身の貧弱な能力』まで対象に完全に共有・上書きする仕様なんだ」
「は、はあ!?」
「つまり今のお前は、俺と同レベルの『究極の底辺(存在感が空気以下・常に瀕死一歩手前)』だ」
数時間後、絶景の山登りコース(なだらかなハイキング道)にて。
「ぜぇ、はぁっ……! 凱、死ぬ! マジで死ぬゥ!」
「甘えるなレオン……! まだ、入り口の鳥居を越えただけだぞっ……!」
かつての最強勇者である王様が、木の根っこにつまずいただけで足を捻挫し、涙目で地面を這っていた。
俺も落ち葉で滑り、すでに腰椎を三ヶ所やっている。
「ピギャッ!」
そこへ、最弱モンスターの代名詞・スライムが現れた。
普段のレオンなら瞬きで消し飛ばせる相手だが……。
「ひっ!? 待て、なんだこいつ! 足に、足にまとわりついて……ぎゃああああっ!? 溶けてる!? 俺の下半身が溶かされてるゥゥゥッ!!」
貧弱化した王様は、本来なら心地よいひんやり感しかないはずのスライムの微弱な消化液に耐えきれず、膝から下をドロドロに溶かされながら本気で絶叫した。
「あ、それ俺も今やられてる」
巻き添えを食らった俺も、スライムに下半身を丸飲みされ、ズボンごと両足を溶かされながら崖(高さ五十センチ)から盛大に転落した。
ボロボロになった最弱コンビ(もやし×2)の脳内に、呆れ果てた女神の声が響く。
『あなたたち、わざわざ弱体化して二人揃って何やってるんですか……』
「偽装をっ、解けぇ! 城に帰るぅ!」と半泣きになる王様。
「俺はいつもこの難易度(常時ルナティック)なんだぜ……?」と血を吐きながら謎のドヤ顔を決める俺。
結局、スライムにすら勝てないまま、お互い泥だらけの肩を貸し合って、絶望の山から下山するのだった。




