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許せない【愛理side】


『ウソはやめていただけませんか?』


クッソ、クッソ、クッソ!

悔しい……悔しい!


待ちに待った同窓会の日。

遥を陥れてやろうと企んでいた私は、遥よりも先に仕事を終え、同窓会会場に向かった。


一通り話をして、遥が来そうな少し前に浮気され、遥に男を取られたという作り話をみんなに伝えた。


みんな同情してくれて、遥がやってきた時にはみんなが白い目を向けていた。


やってやった。大成功。

さぞ惨めな気持ちになるだろうと思っていたのに、まさかそこにうちの社長が現れた。


そしてあろうことか、社長が遥のことを婚約者だと言い出した。


『……彼女は僕の婚約者です。彼女は愛情あふれる誠実な人ですから当然、そんな事実はありません』


こんなこと予想もしなかった。


どうしてうちの社長は遥を庇った!?

しかも婚約者だ!?


いつからそんな関係になったのよ。


ありえない!ありえない!

あのイケメンで一ノ瀬グループの御曹司である一ノ瀬社長を手にするなんて……。


思い出すだけでイライラする。


社長が遥を庇って手を引いて出ていった後、惨めな思いをしたのは私の方だった。


「遥ちゃんの“婚約者”って、あの一ノ瀬ホールディングスの長男、一ノ瀬涼真!?だとしたらヤバくない?」


「御曹司じゃん!雑誌とかにも載ってるし有名人だよね!?」


「あの人はウソだって言ってたけど、もし本当だったとしても遥ちゃんが……そんな人にいい寄られてたら、ねぇ……」


「取られるのは無理ないか」


みんなは気まずそうな顔をしながら私を見た。


私はかっと顔に熱が集まっていくのが分かった。


何よ、私の今付き合ってる男が完全にレベルが下だっていいたいわけ……!?


すると、またあの男がタイミング悪く店にやってくる。


「愛理、迎えに来たよ」


ニッコリと笑顔を見せて笑うのは、翔平さんだった。


来るのが遅せーんだよ!


「愛理の彼氏の鳴海翔平と申します」


さわやかに微笑み高いブランドの時計を見せるように身に着けた男。

みんなは彼に白い目を向けている。


翔平さんは、私が呼んだ。


前日に遥を陥れる作戦を翔平さんに伝えた。

そして遥が惨めな思いをした後に翔平さんが私を迎えにくるという算段だった。


それなのに、このタイミングで来たらもっと惨めな思いをするだけじゃない。


「あー……愛理ちゃんの彼氏さん?」


みんな翔平さんを見定めるみたいな目で見る。


そして愛想笑いをしながらペコっとお辞儀をすると、みんな興味を無くしたのが違う話題を話し始めた。


「あれ……?」

「帰る!」


私はカバンを持って立ち上がった。


「お、おい……愛理!」


クッソ……やられた!

まさか、カウンターを食らうことになるなんて……。


あいつ……どれだけ私を惨めな思いにさせれば気が済むのよ!


「ゆる、せない……」


私はそのままお店を出た。

遥はどんな手を使った社長を自分のものにしたんだ。


社長があの一ノ瀬社長に変わってから、遥が出世するようになったり、仕事を楽しそうに取り組んでいたりしてずっと不快だったんだ。


それに、あの遥が一ノ瀬ホールディングスの御曹司と一緒にいるなんて許せない。


遥は私よりも下の男と一緒になればいいのよ。


付き合って恥ずかしいくらいの男で十分。

あんなに魅力的な男は、私が……必ず奪い取ってやる。


「おい、愛理……!まだ俺の紹介されてないけどいいのか?」


焦って追いかけてきた翔平さんを冷たい目で見る。


チッ……。

使えない男。


お前がもう少し早く来ていれば、私はあの場から立ち去って惨めな思いをしなくて済んだのに。


しかも一ノ瀬社長の後にお前が来たら、どう考えても身分が違うと品定めされるに決まってるのに。


「おい、聞いてんの?」


「うるさいな!話しかけないでくんない!?」


「何怒ってんだよ」


あーあ。

私、なんでこんな男と付き合ってんだろう。


今まで魅力的にうつっていた男も遥から奪い取ったら飽きてしまった。


しかも付き合ってみると、分かる。

この男……大した男じゃないじゃない。


営業部で若くして昇進確実なんて言われていたけれど、今は一ノ瀬社長に変わってから昇進も危ぶまれている。


しかも、実績がどんどん落ちてきているようでこの前部下にバカにされているのも聞いてしまった。


『あの人、最近全然結果残してないよな~』


『いつもため息つきながら帰ってくるけど、こっちにあたんないで欲しいわ』


『あの人脈のなさは取引先も願いさげだろ』


そう部下に悪口を言われるくらいちっぽけな男なんだ。


大してカッコよくもないし、短気でイライラしやすい。


エスコートとかも全然してくれないし……。


ケチで仕事も出来なくて、ただ見てくれがいいだけの男だった。


中身はからっぽの男のクセに、私が付き合ってやったのが間違いだったのよ。


奪ったときは、勝ったと思った。

遥から男を取って、“女としての格”を証明したつもりだった。


でも今は……。


無償にイライラする。


この男のなにがよくて付き合ったんだっけ?


「はぁ……」


もうコイツいらないや。


「つーか、入口にいたら社長と遥が出てきたけど、あれどういうこと?」

「知らないわよ!そんなのこっちが聞きたいつーの!」


「お前……っ!呼びつけておいてイライラすんなよ!こっちもわざわざわ仕事終わりに来てやったのに、もっとねぎらうとかねぇの?」


「うるさい!もう帰る!」


「はぁ!?」


「自分の家に帰るから、あんたも勝手にして」


私が吐き捨てると翔平さんは「チッ」と舌打ちをしてどこかへ去っていった。


あーウザい。

うるさい。


こんなレベルの低い男いらないのよ。


欲しいのは……私に釣り合うハイスペックな男だけ。


そう……あの一ノ瀬社長のような男だけよ。

絶対に奪い取ってやる。


遥のものになるなんて許せない。


「早く手に入れるのよ。遥から奪い取って……私のものにする」


そうすれば、完全に私の勝ちよ。

絶対に私が……私が手にする。


今に見てなさい。

3カ月後、あの男の隣にいるのは私よ……!



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