3話 九尾狐に惑わされてはいけない理由
3話 九尾狐に惑わされてはいけない理由
2日間ほど事務所で寝泊まりしていたが、ここでの生活は予想以上に平凡だった。
依頼は入っておらず、モドリックは慣れた様子でパノと話をしながらチェスをしていた。
仕事がない時は、いつもそうやってチェスをしているようだ。
パノの大きな体格にはまだ慣れなかったが、性格が良く、私を気遣ってくれて多くのことを教えてくれた。
私は食器洗いや掃除などの雑用をしながら、慎重に口を開いた。
「あの…依頼はいつ入りますか…?」
「うっ…出た…その言葉、モドリックが一番嫌がる…」
「えーっ!!!」
「おい、人間、俺もそのせいで頭が痛いんだぞ!」
「隣の事務所は順調なのに、ここだけ依頼が入らないんだ。」
「間違いなくあの連中が呪いを掛けたに違いない。」
私の軽い質問がモドリックの神経を逆撫でたのか、モドリックはチェス盤を倒し、窓のカーテンを開けて隣の建物を睨みつけながら言った。
首を少し出して外を見ると、建物の下には様々な存在が列を成して並んでいた。
ああ… 競合他社はすぐ隣にいたのか… 呪いもあるのか… 推理できるのか…?
「ああ…」
「競合相手… あの辺りは解決屋の仕事が上手いらしい…?」
「狼人間で…嗅覚が優れていて、かなり多様な依頼を解決しているようだ…」
「黙れ!」
「あの悪党たちを褒めるな。」
「俺が上位の悪魔になれば、あの狼はたいしたことはない。」
本当に嫌いだ… まあ、競合他社が続けば腹が立つのは仕方ないか。
狼人間か…詐欺じゃないか!
それに比べてモドリックは翼はあるけど、小さすぎて飛べるのか…?
それでも悪魔なら何か能力はあるだろう…
パノはなぜここにいるんだ?
「パノはなぜここで働いているんですか…?」
「何の役割ですか?」
「パノは戦闘担当だ。」
「この事件を解決しても、全員抵抗して逃げようとするから。」
「力のある人間が必要だから。」
モドリックは少し真剣な表情で散らばったチェスの駒を拾いながら言った、
パノはまた照れているな…
確かにあの体格なら全員倒せそうだけど…
「おい人間、これは忠告じゃなくて生存必須知識だ。」
「パノの神経は絶対に触るな。」
「特に太ったとか、象みたいとか、そんな言葉は絶対にダメだ。」
「かわいい、可愛いとかも言わないこと。」
「その言葉を言った瞬間、執着するから。」
「はい…」
モドリックは私の肩を抱きながら、慎重にパノの反応を伺いながら言った。
チェスを倒しても怒るどころか静かだったのに… 心が少女みたいなのか…
人身攻撃は絶対にしないようにしよう。
褒めるのも慎重にしないと… パノはこの事務所の実力者だった…
2メートルを超えるあの体格で執着か… 避けた方がいいな…
「ティリン~」
その瞬間、ドアが開く音が聞こえ、私たちは全員ドアの方へ顔を向けた。
ついに最初の依頼か…?
モドリックは既に席に着き、依頼者を迎える準備をしていた。
パノは車に乗るためキッチンへ歩いていった。
依頼者はマスクと帽子を深く被り、体と顔をしっかり包み込んだ姿だった。
「こんにちは…」
「お入りください。」
「さあ、ここに座ってください…」
「何の用で来たのですか?」
「私たちは絶対に報酬の半分しか受け取りません。」
「どんな依頼でもお引き受けします。」
客引きの腕が凄いな… すぐに席に座らせた
依頼者は… え、普通の人間じゃないか?
私と同じ人間なのか?
ああ…違う… あの尾はいくつあるんだ?
一つ…二つ…三つ…四つ…五つ…九尾の狐…?
「それが… 私にはシズカという娘が一人いるのですが…」
「3日前から家に帰ってきていないのです…」
「行方不明になったようです…」
「成人なので他のところでは受け入れてくれないのです…」
「ああ~!」
「よく見つけてくれました。私たちは全て受け入れます。」
「詳しくお話しいただけますか?」
パノは車を停めて前に下ろし、静かに横で話を聞いていた。
モドリックは、どんな手を使っても依頼を受けようとしているようだった。
行方不明事件…?
成人の行方不明事件か…