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ハラスメントハラスメント

作者: 柊れい


ある日、道徳の授業で『ハラスメント』という言葉が話題になった。ケンタは、最近テレビや大人たちがよく使っているこの言葉に興味を持った。


「ハラスメントって、嫌がらせのことだよね?」ケンタが言うと、アヤがすぐに答えた。


「そうだよ、相手を傷つけたり、不快にさせたりすること。だから、気をつけなきゃいけないんだって!」


その瞬間、カズキがふざけて、アヤのペンケースを奪い上げた。「アヤの大事なペンケース、いただき〜!」と笑った。


アヤはすぐに取り返そうとしたが、カズキはそれをからかいながら逃げ回った。


「カズキ、それハラスメントじゃないの?」アヤが言うと、カズキはびっくりして手を止めた。


「え?これがハラスメント?」


アヤは真剣な顔でうなずいた。「だって、私が嫌がってるじゃん。」


カズキは少し困ったような顔をして、ペンケースを返した。「ごめん、そんなつもりじゃなかったよ。もうやらない。」


そのやりとりを見ていたケンタは、少しモヤモヤした気持ちになった。


次の日、ケンタが教室に入ると、ナオがケンタの席に座っていた。


「ナオ、そこ俺の席だよ。」


「ごめんごめん、ちょっと借りてた。」ナオは軽く笑いながら席を譲った。


でもケンタは、昨日のことを思い出しながら考えた。「これもハラスメントなのかな?」と。そして、クラス全体が少しずつ変わり始めた。


「それ、ハラスメントじゃないの?」

「いや、そんなつもりじゃ…」

「でも、相手が嫌がってたらハラスメントだよ!」


みんなが「ハラスメント」という言葉を口にするようになり、何かあればその言葉で片付けられるようになった。ちょっとしたふざけ合いも、友達同士の軽いからかいも、すべてが「ハラスメント」になってしまった。


ある日、ケンタは友達のユウスケとボール遊びをしていた。ユウスケがミスをして、ボールがケンタに当たった。


「いたっ!ユウスケ、それハラスメントだぞ!」


冗談で言ったつもりだった。しかし、ユウスケは表情を曇らせた。「ごめん、ケンタ…。そんなに嫌だったなら、もう遊ばない方がいいかもな。」


ケンタは驚いた。ユウスケはふざけていると思っていたのに、本当に気にしている様子だった。ケンタは急いで謝った。「違うよ!冗談で言っただけだよ!」


けれど、ユウスケの顔には笑顔が戻らなかった。


その夜、ケンタはベッドで考えた。「なんでもハラスメントって言うのは、やっぱりおかしいのかな?」


次の日、ケンタは学校でクラスメートたちに言った。「ねえ、ちょっと思ったんだけど、ハラスメントって、本当に相手を傷つけたり、嫌がらせをしているときに言うべきだよね?」


みんなは少し考え込んだ。


「確かに、冗談とかふざけてるだけなのに、それを全部ハラスメントって言うのは違うかもね。」アヤがそう言うと、カズキも頷いた。


「本当に悪いことをしてる時には気をつけなきゃいけないけど、全部が全部そうじゃないよな。」


ケンタはほっとした。そして、クラスは少しずつ以前のような雰囲気に戻っていった。

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