洗礼式を受ける悪役令嬢
今日は洗礼式だ。
5歳になると、教会で洗礼を受ける。
その際に神様から加護を受けることもあるが、
基本は魔力の測定や魔法属性の確認をするらしい。
とうとう、異世界デビューな感じだ。
「メイ、ステータスプレートをもらったら家族以外の誰にも見せてはいけないよ。」
「はい、お父様。」
「メイはきっと加護をもらえのではないかしら?」
ラノベでは加護はなかったな。
神様から全属性って聞いたけど、
ラノベでは火と雷だったはず。
めちゃくちゃチートよね。
「楽しみです。」
名前を呼ばれたので洗礼を受けに行った。
神父様が驚いた顔をしてステータスプレートをくれた。
ステータスプレートを抱えて両親のもとに戻った。
ステータスプレートを一緒に確認した。
やはり、全属性。
魔力量も∞と記載されていた。
加護も受けていた。
この世界では七神で
なんと全ての神の加護をいただいていた。
チートってすごい。
「すごい…」
「どうしましょう!?」
「お父様、お母様。こんなに加護を受けることはあるのですか?」
「普通はないわね。」
「加護を受けるのはほとんどが聖職者や王族だな。」
「そうなのですね。」
「じゃあ、たくさんお祈りしなきゃですわね。」
「わかりました。」
「…すぐに帰ろう。」
「お父様?」
「神父がこっちにくる。」
「神父様ですか?」
急に神父様がこちらに来た。
「コールマン公爵。メイリン様を聖職者になさいませんか?」
「何を言っている。」
「このようなことはあまり言わないのですが、まるで聖女のようではありませんか。」
「神父様。私は聖女じゃありませんし、聖職者にはなりません。」
「そうですわ。それに洗礼を中断してまで極秘のステータスに関するお話はよろしくありません。」
「なんなら、陛下に進言してもよいのだぞ。」
「…申し訳ありません。失礼いたしました。」
ステータスプレートの内容を見て声をかけたくなったらしい。
そもそも、聖職者となると結婚もできずに神に仕えることになるという。
冗談じゃない。
今回は洗礼式の為に城下に来ているので、
このあと、城下でお買い物をして帰ることになっている。
両親と食事をして仕立て屋さんと宝飾品店に行くことになった。
これからはお茶会やパーティに呼ばれることになるので、
何着かのドレスとアクセサリーを買う。
誕生日パーティ用にドレスを数着とアクセサリーを持っているが、
今後はもっと必要になるらしい。
本格的にマナーや魔法などの家庭教師をつけて勉強も始まる。
あと、貴族令嬢としてはあまり必要ないが、
自衛のために剣術や体術も学ぶことになった。
護衛は常に一緒にいることになっているが。
その時の練習用の衣装なども揃えるのだ。
学ぶのは楽しみだ。
まずは仕立て屋へ。
両親と馬車に乗った
【父 ダニエル】
娘のメイリンの洗礼を受けたあと神父から聖職者にとスカウトをされた。
公爵令嬢に向かって無礼だ。
城下に向かって食事と買い物をする予定だが、
先ほどから悪意を感じる。
もちろん、馬車で移動するし、護衛もいる。
教会の関係者か、誘拐目的かも知れない。
メイリンは家族の中でもとにかく美しくて純粋な娘だ。
5歳だというのに、読み書きと計算もできる。
学ぶことが好きなようだ。
図書室の本を3分の1は読破していた。
魔法属性や魔力、加護まであるなんて。
きっとメイリンはこの国一番の才女になるだろう。
その為に、自衛の手段を身に着けさせようと思った。
周囲には婚約者選びは7歳になってからと宣言した。
婚約の打診をしてくる者の中には我が家の嫡男より年上のものもあった。
冗談じゃない。
娘はまだ婚約させない。
嫡男さえもまだ婚約していない。
大きくなってからでもいい。
それまでは家族で仲良くしていこう。
当分の間は見送ることにしよう。
うちの天使。
手放したくない。
王族も打診してくるが、のらりくらりとかわしている。
そういえば、王族から婚約者候補というだけでもいいと言われたな。
うん、うちの天使はやはり危険にさらされているのではないだろうか?
さっきからたくさんの視線を感じる。
茶会でも視線を集めていたしな。
見るだけで魅了してしまうなんて。
もちろん姉のミリムも美しいが、
メイリンはそれ以上なのだ。
私達家族でメイリンを守る為の会議を常にしているくらい美しい。
やはり護衛も手練の者で女性もいれようか。
トイレすら心配だ。
私の仕事は宰相だ。
とにかく忙しいが、
合間の一瞬でさえメイリンのことを考えてしまう。
もういっそのこと閉じ込めちゃおうかな。
猟奇的か。
はぁ。
手を繋ぎながらもこんなに不安なのだ。
今は仕立て屋でドレスの試着をしているのだが、
ショーウィンドウにギャラリーが増えてきた。
「お父様?さっきから眉間にシワがよってますよ?」
「あぁ、すまないな。ギャラリーからメイを守ることを考えていたのだ。」
「ふふふ、お父様がいるから大丈夫ですわ。」
「そうね、護衛もいるのだし大丈夫よ。」
「わかっているんだが、外を見ればわかるだろう?」
「あら、人だかりがすごいわね。」
「本当だわ。」
「我が家は皆美しいからな。メイは特に美しいのだ。試着する時さえ心配になってしまうなんて。」
「お父様、心配しすぎでは?」
そうは言っても、この状況なら心配もする。
次はアクセサリーを選びに店を出る。
「ダニエル、行くわよ?」
「店主、すまないが裏口からでたいのだが?」
『え?』
「外を見てくれ…」
『なるほどですな。ご令嬢が美しいと大変ですな(苦笑)』
「そうだろ?」
店主に頼んで裏口から店を出ることにした。