ダンスの授業で医務室に行った悪役令嬢
テストも終わっていよいよ実技のダンスと音楽が始まります。
これからダンスの授業。
「メイリン様はダンスもお上手だと聞いていますわ。」
「無敵ですわね。」
「そんなことはないと思うわ?」
「ご謙遜ですか?」
「ダンスは家庭教師の先生とラルフ殿下としか踊ったことがないのですもの。」
「そうなのですか?」
「えぇ、お茶会も王城のだけでしたし、家ではお誕生日パーティだったから。」
「先生以外で唯一のパートナーがラルフ殿下なんて!」
「殿下と踊ったのも10歳の時の一度だけなのよ?」
「そういえば、お兄様と殿下がいつも一緒にいますわね」
「そうなのです。お兄様のお友達なんですって。」
「もうすぐ授業が始まるわ。」
「パートナーはどうするのでしょうか?」
「わからないわね。」
同じ学年の異性なんてドキドキしますわね。
授業が始まり、パートナーを選ぶ。
同じクラスの男性。
「よろしくお願いいたしますね。」
「こ、こちらこそ…お、よろしくお願いいたしますっ!」
パートナーの方が緊張していて、
私まで緊張してしまいました。
『では、まずはゆっくりした曲から始めます。』
お手本をじっくりと確認します。
相手の方は真っ赤になって泣きそうな顔をしています。
「そんなに緊張しないでくださいませ。」
「すっ、すいません!」
「大丈夫ですわ。」
「では手を…」
「はい。」
曲に合わせて踊り始めました。
身長が私のほうが高いのね…
この身長差だと…
なんだか恥ずかしくなってきましたわ。
首のあたりにパートナーの唇があって、
息がかかってしまうのです。
くすぐったいのです…
「コールマン様?だ…大丈夫でしょうかっ…」
「え…えっ?あ、はい。」
「私も顔が熱いのですが、顔が…赤いです。」
「ご、ごめんなさい…なんだか恥ずかしくなってしまいましたの。」
「そ、そうなのですか…」
なんだかいたたまれない…
なんとか踊りきりました。
「あ、あの…身長が低くて申し訳ありませんっ!」
「いえ、身長は仕方がありませんもの。大丈夫です…」
他の方にと思っていたけれど、
今日は同じパートナーらしい。
彼が何回か指摘を受けながらこの日の授業が終わりました。
「メイリン様っ!?」
「どうされたのですかっ?」
「な、なんでもありませんっ。」
「顔が赤いですわね。医務室へ行きましょう!」
「そうですわね。」
「すみません、どなたかメイリン様を医務室へお連れいただけませんか?」
「歩けます、歩けますから!自分で行きますわ。」
恥ずかしくなってしまっただけなんて言えないわ…
大人しく、クリス様に一緒について来てもらいました。
「ここでいいわ。ありがとうございます。」
「少しここでお休みなさいませ。」
「えぇ、ありがとうございます。」
医務室で寝かせていただくことにしました。
医務室で休んでいたら、
お兄様が顔を見には来てくれました。
「大丈夫かい?」
「はい、大丈夫です。」
「どうしたんだい?体調を崩すなんて珍しい。」
「い、いえ。あの…」
ことの詳細を話しました。
「そう…そんなことが…」
「はい…私、身長差をあまり気にしたことがなくて。首に相手の方の息がかかってくすぐったくなるなんて思わなかったのです。」
「そう。じゃあ次のダンスの時はメイより背の高い者にしてもらうよ。」
「はい、お兄様。ありがとうございます。」
「いいよ、じゃあ次の授業が始まる前に教室に戻るのだよ?」
「はい、お兄様。」
ダンスの先生に話をしてくれることになりました。
くすぐったくて顔が赤くなるなんて。
皆さんに心配をかけてしまいましたわ。
とりあえず、
落ち着いたので教室に戻ることにしました。
「「「「メイリン様!」」」」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫よ、心配してくれてありがとうございます。」
お礼を伝えて席に戻りました。
視線を感じたので周囲を見渡すと、
先ほどのパートナーの彼がうっとりした顔でこちらを見ていました。
なんだかとても怖いわ。
気にしないように前を向きました。
家に帰り、夕食時まで刺繍をすることにしました。
殿下に頼まれた紋章の刺繍。
思ったよりも細かい。
その分時間がかかるのです。
ハンカチの四隅の角に刺繍を入れることにして二箇所に刺繍をしていました。
1枚は終わっているけど、
もう1枚の角で終わります。
殿下は喜んでくれるでしょうか?
家族には先日2枚ずつプレゼントしました。
もちろん喜んでくれましたわ。
お兄様達は毎日使ってくれて、
お姉様とお母様はお茶会に行って自慢してきたそう。
ところで、
殿下はなぜハンカチを欲しいと思ったのかしら?
お兄様のお友達だからいいのだけれど。
そもそも、
どうして異性の方にプレゼントをするのが駄目なのかしら?
そういえば、
今日のダンスの時に首がくすぐったくなってしまったのでしょうか?
よく考えたら、
ダンスをしていて首に息がかかるってことはないはずだわ。
今日のパートナーさん、
なんという方だったかしら?
正直なところ、
お友達の4人以外は覚えてないのよね。
覚えたほうがいいのかしら?
アークお兄様は、
私は他人を疑わないと言っていましたけれど、
他人を疑う?ことも、
他人の言葉を考えることもあります。
そうでなければ、バカにされているとか、
可愛いと言われて恥ずかしくなることもないと思います。
そうでなければ、あのパートナーさんに不信感を覚えるなんてありませんわ。
【兄アーク】
「アークお兄様!」
「どうした?メイ。」
「はい、気になったことがあるのです。」
「ほう。」
珍しいな。
「今日のダンスの授業なのですが、あれはダンスだったからなのでしょうか?」
「どういうことだ?」
「ダンスで首に息がかかることはないと思うのです。」
確かにそうだな?
首は進行方向か真正面に向けていると思うのだが?
「そのパートナーとは誰だったかわかるかい?」
「いえ、お友達以外は名前を覚えていないのです。」
「そうか…」
そうだろうな。
初めて友達が出来てテンションがあがって他の者に目が向かなかったのだろう。
「じゃあ、そのパートナーの特徴は?」
「はい、わかりますわ。」
メイよりも身長が20センチほど小さく、
眼鏡で、
上向きの鼻に、
福耳か…。
「わかったよ、メイ。あとは私に任せておきなさい。」
「はい、お兄様。」
明日は休みだから、
明後日しっかりと調べて仕置きをしてやろう。




