お友達にバカにされたのかを確認する悪役令嬢
「お兄様!」
「メイ、テストお疲れ様。どうだった?」
「はい、問題なく終えましたわ!」
「そうか、それは良かった。」
「お、メイリンは今日も楽しそうだな。」
「殿下、テストもとても楽しかったです。」
「テストが楽しかったのか?」
「はい、楽しかったですよ?」
「アーク、なぜテストが楽しいと思えるのだ?」
「私に聞きますか。」
「それもそうだな。」
「今まで家庭教師に学院のテストを取り寄せて1人でテストを受けていたのです。だからテストの雰囲気が楽しかったのです。」
「アーク。テストを取り寄せるとはどういうことだ?」
「だから、なぜ私に聞くのですか?」
「うふふ、私はお兄様やお姉様と同じお勉強がしたかったのです。」
「ほう。」
「だから一生懸命に同じお勉強を出来るようにたくさん勉強していたのです。」
「アーク。」
「いやいや、殿下?私に聞きますか?」
「そうだな、頼む。」
「頼むのですね。」
「なぜですか?」
「まず、殿下。メイは3歳には家庭教師をつけて勉強していました。」
「は?」
「兄上とメイは10歳離れています。そのため、メイは学院の2年生までの勉強に追いつきたかったのです。」
「うん?」
「メイはお茶会にも出られずに時間を持て余していました。その時間を常に勉強に充てていたのです。」
「…」
「どんどん勉強を続けていくうちに10歳になった頃には学院の卒業までの『全ての』勉強を終えてしまいました。」
「天才かっ!?」
「そのため、学院と同じテストを受けるために問題を取り寄せて1人でテストを受けていました。」
「な、なるほど?」
「お兄様、わかりやすい説明ですね。」
「全てと言っていたが?」
「はい、全てですわ。」
「まさか、マナーやダンス、音楽まで?」
「はい、そうですよ?」
「ね、殿下。メイが天才だと自慢していた理由をわかって頂けましたか?」
「…驚きすぎて目眩がしてきた。」
「お兄様!保険医のところに行きましょう!」
「メイ、落ち着きなさい(笑)」
「本当に驚いただけだ(笑)」
「そうですわ!?お兄様に聞きたいことがあったのです。」
「なんだい?」
「テスト前にドキドキしてぼーっとしていたのです。それで、声をかけられても気づかなかったのですけれど。お友達が可愛くてきゅんきゅんすると言われたのです。」
「可愛いに決まっている。きゅんきゅんするというのもわかる。」
「そうだな。」
「それで、お友達が可愛くて庇護欲が湧いてくると言ったのです。」
「うん?」
「私、バカにされているということなのでしょうか?」
「…」
「メイリン、それはバカにはしていないと思うぞ?」
「そうなのですか?」
「メイ、可愛くて庇護欲が湧くのは私も同じだよ。」
「お兄様も!?」
「くくくっ…(笑)」
「可愛くて守ってあげたいということだからね。」
「でも、お兄様。私、強くなったのです。」
「…?」
「強くても、メイの心は強くはないから『守ってあげたい』になるんだよ。」
「そうだったのですね…」
「わかったかい?」
「はい、わかりましたわ。」
「ところでメイリン。強くなったとはどういうことだ?」
「あ、はい。護身の為に6歳から剣術や体術、魔法を学んでいましたから、強いのです。」
「アーク。」
「なんでしょうか?」
「なぜコールマン家はそこまでメイリンに学ばせるのだ?」
「暇だというので護身の為に剣術、体術、魔法を学ばせました。」
「そうなのです。洗礼式で大変でしたし、自己防衛の為に学ばせて頂きました。」
「なるほど。」
「ですから、本当は我が家で一番強いのです。」
「私は学ぶことが大好きなのです。だから、勉強も実技も全て学び終えてしまいました。」
「アーク、メイリンに剣を渡したら護衛はいらないのか?」
「メイの護衛は、メイの美しさを目当てに寄ってくるふとどき者とメイの心の護衛です。」
「剣を持っていないので、普通に護衛ですよ?」
「アーク、あとで話があるのだが…」
「メイの身に関することは受け付けかねます。」
「お兄様?」
「では、今聞こう。」
「なんでしょうか?」
「メイリンは学院に何をしに来ているのだ?教育課程が終わっているなら必要ないのだろう?」
「はい。それはそうですが、私はお友達と一緒にお勉強をしたくて学院に通っていますの。」
「と、いうことです。それとメイは家族以外を知りません。ですから、コミュニケーションを学ぶ必要があるのです。」
「コミュニケーション?」
「メイは家族の中で守ってきたので、他者を疑うことすらもわからないのです。」
「なるほど。」
「あの、そういった理由では通ってはいけなかったのでしょうか?」
「あ、いや。大丈夫だ。問題ない。」
「それなら良かったです。」
「殿下、メイをいじめないでいただけますか?」
「は?」
「お兄様、私はいじめられていたのですか?」
「ね?コミュニケーション大事でしょう?」
「うむ、理解した(笑)」
「結果的に『可愛い』『庇護欲』になるでしょ?」
「そうだな。」
「もう、お兄様達まで…」
とりあえず、馬鹿にされているわけではないようね。
ただ、お兄様達にからかわれていることはなんとなくわかりました。
「さ、そろそろ昼食を食べ終えないとね。」
「はい、お兄様。」
「メイの午後のテストはなん教科あるのかい?」
「2教科です。」
「私は3教科あるから帰りは一緒に」
「帰れないのですか?」
「いや、うん、大丈夫だが…1時間待てるかい?」
「はい、じゃあ教室にいますのでお迎えにきてくださいませ。」
「わかったよ。」
昼食を終えて教室に向かった。




