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悪役令嬢にならないように頑張るご令嬢  作者: MEIMEI
婚約式までのカウントダウン番外編
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話し合い

【第一王子 アダム】


ミリムとの婚約の話をされてから一週間が経過した。


考える時間を作るために私の執務の半分はラルフが行なっている。


大丈夫だろうか…


本来ラルフが行うべき仕事はまだ経験が足らないために減らしてあった。


だが、それを減らさずに私の分を増やす事になる。


「ジャン。ラルフは本当に大丈夫だろうか?」


「大丈夫に決まっているでしょう?アークがいますし、仕事を増やして離宮にいる時間を減らさなくては。」


「お前達…性格が悪いな。」


「メイを守るためです。」


本当に過保護だな。


「ラルフがそんなに信用できないのか?」


「あー…信用はしてますよ。メイの婚約者は殿下達以外にいませんでしたから。」


「ならなぜだ?」


「殿下もわかるでしょう?メイがあれだけ美しいのです。欲情を抑えていられるかと思うとね?」


「そういう事か。」


「そういう事です。」


確かに私も経験があるな。


メイリンを前に触れたくなった事が何度もある。


卒業試験のダンスの相手をした時にメイリンを何度抱きしめそうになったことか…


デートの時も。


「確かに抑えていられるかどうかわからんな。」


「兄である私達でも美しいと思ってしまうのですから、万が一を考えると…離宮にいる時間を減らして守るしかありません。」


「そうだな。メイリンはまだ成人ではないのだから当然だ。私も心を鬼にして仕事をまわそう。」


「あはは、ありがとう。で、ミリムの事はどうするか決めたの?」


「あー…まだ決心できなくてな。」


「まぁ、それもそうか。だけど殿下にとってミリムは初恋の相手だろう?」


「うっ…」


「メイの事は諦められたのはわかっているけど、まだ何か問題でもあるのか?」


「だからだ。メイリンに出会う前はミリムが好きだったからな。ミリムがどう思うか…」


そう。


ミリムがどう思うかを考えると決心出来ないでいる。


少し前まで妹のメイリンを好きだった。


諦めがついたのは最近だ。


すぐにミリムとの事を考えられる軽い男だと思われるかもと思うと…


確かにあの海に行った時にミリムの事を考えた。


「すぐに切りかえられる男だと思われてしまうだろ?」


「まぁ…それはそうかもしれないな。」


「そう思うとなかなか答えを出せないでいるのだ。」


「でもそれって答えは出てるじゃないか。」


出てるか?


「ミリムにどう思われているかを気にしているんだから、タイミングの問題だけでしょう?」


「そうか…そう…だな。」


「一度ミリムと話をしたら?」


「あぁ。そうする。」


ミリムと言われて考えていたが、


不思議と嫌な気はしない。


やはり、初恋の相手だからだろうか?


うん。


色々と考えると…


ミリムが良い返事をくれたら私もうんと言える事に気がついた。


そうか…


私の中では答えが出ていたのだな。


「ジャンが義兄か…」


「あはは、そうだな。ふたりも義弟が出来るのか。」


「ジャンは嫌がらないのだな?」


「嫌がる?」


「コールマン公爵もアークも苦々しい顔だった。」


「まぁ…誰が相手でも嫁がせるのは嫌だよ。でも結婚しなければならないなら、殿下達は相応しい気がしてる。」


「そうなのか?」


「結婚しなくて良ければそのまま家で大事にしたいが…」


「あー…やっぱりそうか。」


「でも、殿下達の相手を考えてみると本当に妹達しかいないんだよね。」


「…そうか。少し嬉しいな。」


「本音を言えば…嫌だけどね。」


まぁ、私がメイリンやミリムの兄だったら…


確かに嫌だろうな。


あれだけの器量良しはいない。


聡明で美しい姉妹だ。


自分の手の届く所にいて欲しいと思うのは無理もない。


先日の事件の令嬢達と比較すると…


比較するまでもないな。


はぁ…


ミリムと話をする時間を調整しなければ。


それにメイリンの時と同じように危険な事は起きないだろうか?


「ジャン。」


「はい、なんですか?」


「数日中にミリムと話をする時間の調整をしてくれ。」


「わかりました。」


「それと話をする時についていてもらえるか?」


「は?」


「変に勘ぐられるわけにはいかないからな。」


「なぜ私が妹の恋愛話を聞かなければならないんだ…」


「恋愛話か?婚約をするかどうかの話し合いだろ?」


「そんなわけがないでしょう?殿下は元々ミリムが好きだったのだから。」


「…煩い。黙ってついていろ。」


「うわー、理不尽…」


理不尽だろうとなんだろうと、まだ婚約者ではないミリムが城に来たとなれば噂になるのは間違いない。


私もラルフもメイリンも婚約していないという事になっている。


先日自分の家に避難した時は見限って家に帰った事になっていた。


噂がどこから出たのかわからない。


婚約者候補だとラルフが公言してしまった時は、メイリンを離宮に軟禁しているとまで言われていた。


婚約者候補だったのは事実だが、軟禁はしていない。


メイリンを他の貴族達に奪われないため、危険を遠ざける為に離宮に移ってもらった。


それでも危険な目にあったのだ。


ミリムにまでそんな目にあわせるわけにはいかない。


何かあった時にメイリンのように対応できないからな。


とにかく、ミリムとの事は話し合いをして決める。


決まらないうちに噂が流されないためにもジャンを同席させる必要がある。


ジャンには申し訳ないが、付き合ってもらわなければ。


「借りは必ず返すよ。」


「なら…いいか。」


「すまないな。」


ジャンはため息をついた。


まぁ…


気づかなかった事にしよう。




数日後、ミリムと話し合いをすることになった。


「午後にはミリムが来ますから、それまでに執務をしておいてください。」


「わかった。」


ジャンはミリムが来るまで根回しをしてくれることになっている。


コールマン公爵や父上、城の警備や護衛などに説明をしなければならないからだ。


コールマン公爵は知っているだろうが…


執務をしていると、ミリムが来ると思うとそわそわしていることに気づいた。


緊張している気がするな。


執務はラルフがほとんどやってくれているから、大した時間はかからずに終わった。


もうすぐミリムに会える…


思えば、海に行った時にミリムとの婚約を考えていた気がする。


その時はまだ諦められていないと思っていたのだが、


諦められていたからミリムとの婚約を意識したのではないだろうか?


ミリムは婚約を受けてくれるだろうか?


婚約を受けてくれたら…初恋が実ったことになるのだ。


初恋は8歳だったか…


2歳下のミリムはとても元気でサバサバした娘だったな?


それがとても愛らしく思えたのだ。


ミリムが10歳の時に婚約者になって欲しいと言ったがあっさりと振られた。


それからしばらくは婚約者を探す事をやめていた。


振られると思っていなかったからショックだった。


その頃にメイリンが生まれた。


しばらく后探しをしたものの…


容姿と地位と金を目当ての者達が多く、


父上も決めることが出来なかった。


メイリンが生まれて間もなく、父上が私達のどちらかの后にすると言ってきた。


もちろん公爵も反対していたし、1歳か2歳のメイリンとの婚約など考えられなかった。


私達の婚約者が決まらない中でジャンは一度他国の姫と婚約をした。


本当になかなか見つからない。


そこで時が経ち、メイリンとの婚約を決めることになった。


「殿下?ミリムが気たようなので私が案内しますよ。」


「あぁ。」


ミリムとの話し合いの場は離宮の客室に決まった。


メイリンがいる離宮ならミリムが来ても不自然ではないからな。


「では、そろそろ私も出かけるとしよう。」


残りの側近達に留守を任せた。




離宮の客室にはミリムとジャンが待っていた。


メイリンは抜きで話すことになっている。


「ミリム、来てもらってすまないな。」


「ごきげんよう、殿下。構いませんよ。」


互いに挨拶をして席についた。


「お兄様も一緒に?」


「念の為だ。」


「私は少し離れているから、ふたりで話し合いをしてくれ。」


「そうか…」


「まぁ、お兄様の前で話すことではないですから。」


「確かにな。」


「それで、殿下は何を話し合いたいのですか?」


「ミリム、普通に話していいぞ?」


「ふふっ、じゃあそうしますね。」


「話し合いたいのは婚約のことだ。ミリムも聞いたんだろう?」


「えぇ、聞いたわ。びっくりしたわよ?」


「私もだ。姉妹で后になるなど前例がないからな。」


「本当に。でも、アダム様はいいの?メイにフラレたばかりでしょう?」


「うっ…まぁ、そうだが少し前に諦めていたからな。そんなにショックではなかった。」


「ええっ!?そうなの?」


「メイリンが攫われた時にフラレるとわかったからな。」


「あー…あの時ね。じゃあ、殿下は私との婚約をどうしたいの?」


「そうだな…その前にお茶に合う菓子を用意してもらおう。少し小腹が減った。」


「ふふっ、私もです。」


お茶を飲みながら話を続けることにした。


「結論から先に言うが、ミリムが良いと言うなら話を進めようかと思っている。」


「私が良ければ?」


「私は少し前までメイリンと婚約をするつもりだった。フラレたばかりでこの話が来たから、ミリムが嫌だと言うかもしれないと思った。」


「なるほど。そうね…確かにメイにフラレたばかりで代わりに私になったのなら嫌だわ。」


「代わりに?」


「メイが駄目だったから代わりに私が婚約するというのは気分が悪いということよ?」


「そうか…まぁ、代わりではないのだが?」


「そうなの!?」


「ミリムは昔私との婚約話が出た時に断っただろう?」


「そう…だったかしら?はっきり覚えていないわ。」


「そうだろうな。めんどくさがって全て断っていたと最近聞いた。」


「そう…だったわ。地位と容姿だけで裏がある人ばっかりだったもの。」


「私も同じだ。だが、あの時は本気だったからショックでしばらく落ち込んでいた。」


ミリムが目を大きく開いて赤くなった。


「急ににそんな事を言われると思わなかったわ。」


「あはは、そうだろうな。」


「笑いすぎですっ!」


くくっ…昔もこんな風に話をしていたな。


懐かしく思うのは私だけだろうか?


「まぁ、もう少し暴露しようか。」


「暴露?」


「ミリムの知らない私の秘密だ。」


「えっ!何それ!知りたいですっ!」


「覚悟をしろよ?」


「嘘…そんなにすごい秘密?」


「あー…私とラルフの秘密だ。ジャンとアークは知っているが。」


「ずるい!私達幼馴染だというのに私だけ知らなかったってこと!?」


「まぁ、そういうことだ。」


「うー…わかりました。覚悟を決めるわ。」


ミリムは座り直して背筋を伸ばしている。


「では、お願いします…」


「私の初恋の相手はミリムだ。」


言わなくても良かったと思うが…


これが一番信用してもらえるのではないだろうか?。


ミリムが固まっている。


「あの…あー…私が?」


とりあえず頷く。


「えー…私が初恋の相手?」


「いや、何度も口にするなよ。」


「あ、すいません…驚きすぎて…」


まぁ、そうだろうな。


ミリムはそういう事を気にしないタイプだったからな。


「だから断られたあと、しばらくは立ち直れなかった。」


一度口に出したら、


いくらでも当時の事を思い出せた。


「そう…でしたか…」


「くくっ、真っ赤だぞ?」


「笑わないでくださいよっ。」


「当時のミリムに仕返しをしたような気分だ。」


「うー…」


「まぁ、そんな理由だからミリム次第で婚約を決めようと思ったのだ。」


「もう…ずるい!」


「ずるいか?」


「そんなこと言われたら…断れないじゃない…」


「断るつもりだったのか?」


「メイの代わりは嫌じゃないですか。それなら断ろうと思っていたのに…」


「それに、ミリムはミリムで魅力的な令嬢だと思っていたからな。」


「はぁ…正直に言うと、メイの婚約の話が出なかったら私はアダム殿下の婚約者になるだろうと思ってました。」


頭を抱えているミリムは昔と同じ可愛らしいミリムだった。


「で、どうする?」


「そうですね…」


秘密を話したからか、もう何を言われても大丈夫だと思った。


「海に行った時のことを覚えてます?」


「あぁ…覚えている。つい最近だぞ?」


「あの時に少し…キュンとしました…」


「そうか…照れるな。」


「そうでしょ?こういう話はあまりしないもの。」


「確かにな。では、私と婚約をするということでいいのか?」


「そうね。殿下達と私達姉妹で婚約するなんて思っていなかったけど。」


「それは私もだ。」


「ふふっ」


「で、だ。婚約式まで日がない。ひょっとしたら同時になるぞ?」


「あら、メイと一緒に?」


「まぁ、私達が先にするか同時にするかどちらかになるだろうな…」


「じゃあ急いで準備が必要なのね?」


「そうだな。あと后教育もあるから、忙しいぞ。」


「あー…教育もあるのね?」


「ミリムは昔から勉強は嫌いだったか?」


「必要なこと以外はしたくないのよ。」


「メイリンも教えてくれると思うが。」


「頑張るわ!」


「本当にコールマン家はメイリンが好きすぎるのではないか?」


「あら、殿下だってメイが義妹になったらわかるわよ。」


「もうお義兄様と呼ばれるのが楽しみだよ。」


「ふふっ。じゃあ、私は急いで準備を始めるわ。」


「あぁ。私も準備を始めるよ。」


ミリムはすぐに立ち上がって、ジャンを呼んだ。


この行動力は私にないものだ。


昔から変わらないな。


「ジャン、屋敷まで送り届けてくれ。」


「わかった。戻るまでに残りの執務をしていてくれよ?」


「わかっている。護衛と近衛兵を連れて行け。」


「そのつもりだよ。」


「ではミリム。またな?」


「はい、また。」


ミリムはなんだか楽しそうに帰っていった。


仕事がなかなか忙しい。

小説を書くどころではなかった

はぁ…

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