来訪者が続出して困惑する悪役令嬢
お菓子が出来たので、お父様とお兄様達とお姉様にも食べてもらおうとリビングに行きました。
あ…
「お母様!おかえりなさい!」
「ふふっ、ただいま。いい匂いがすると思ったらお菓子を作ったのね。」
「はい!」
「ラルフ殿下に差し入れを作ってくれたんだ。」
「そうなのです。たくさん作ったのでみんなで食べようと思って持ってきました。」
「まあ!せっかくだから出来たてをいただきましょう!」
お茶を淹れてもらって食べることにしました。
「今日はお茶会だったのか?」
「えぇ、そうよ。」
「何か聞いてない?」
「噂のことよね?」
「それが…カーペンター子爵夫人が様子がおかしかったの。」
「カーペンター子爵夫人?」
「そうよ。メイに婚約の申込みをさせてもらってもいい?って聞いてきたの。」
「…それはなぜ?」
「婚約者候補じゃなくなったのならって…噂で聞いたんですって。」
「またか…」
カーペンター子爵?
「母上。確か2人の子息がいたと思うんだけど?」
「そうなの。それが2日前のお茶会で殿下達の候補から外れたって噂になったみたいで。」
あ…
レイ様の…
「それで、またかってどういうこと?」
「今日ジャクソン伯爵が急に来たのよ?メイに合わせて欲しいって…」
「そんなお約束はないはずよね?」
「はい。」
「メイが戻っているなら話をしたいって言うのよ?失礼でしょう?」
「私達もそれを聞いて帰ってきたんだよ。」
「姉上から至急の手紙が来たから急いできたんだ。」
「そうなの…陛下に抗議しなくてはならないわね。」
「それはもちろん。どこからかメイが屋敷に帰ったということが漏れたのだから。」
「母上、お茶会の参加者はわかりますか?」
「そうね、2日前ならミリムは招待状が来てたわね?」
「えぇ、私は参加しなかったけれど…」
「ミリム、招待状を見せてくれるかい?」
「えぇ、今持ってくるわ。」
お姉様が走ってお部屋に取りに行きました。
「メイは心配しなくていい。」
「調査はだいぶ進んできている。もう暫く待ってて。」
「はい、ジャンお兄様。」
進んできている…
クリス様とレイ様は大丈夫かしら?
大きな罪を犯してないといいのだけど…
レイ様は間違いなく脅されているのだと思っています。
そうでなければ、マイケル様がレイ様を助けようとはしないと思うのよね…
クリス様も虐められているか、脅されているかのどちらかだと…
そうあって欲しいです。
お友達に騙されているなんて悲しいもの…
「メイ?」
「あ…はい?」
「メイの友達にも疑いがあるんだ…」
「…そうですか…」
「私もメイの友人だからと信じていたのだが…」
「…いいのです。私の見る目がなかったという事ですから。」
「細かい所まではまだだから確実に関わっているかはわからないけどね。」
そう…
クリス様がどこまで関わっているかをこれから調べるのね?
「メイ…大丈夫?」
「はい…大丈夫です…」
「初めての友達だったからね。つらいだろう…」
「……」
やっぱりつらいわね…
「それにしても、メイはいつの間にお菓子を作れるようになったの?」
お母様が話を変えてくれました。
「離宮で料理長と研究したのです。」
「料理長と?」
「はい。お仕事が大変だとお兄様達が言っていたので差し入れを考えていたのです。」
「そうなのね。」
「はい。それで図書室で読んだ物語に出ていたデザートを再現してみたのです。」
「プリンだね?あれはとても美味しかったな…」
「王城の料理長に教えてあげて欲しいな。」
「兄上、そうしたらメイの手作りが食べられなくなってしまうよ?」
「うん、じゃあ教えないでくれ。」
「そうだな。メイの手作りが食べたいから教えないでいいぞ?」
「ふふっ、わかりました。」
「私はプリン食べた事ないわよ?」
「じゃあお母様の為に明日作りますね。」
「ふふっ、とても楽しみだわ。」
話が変わってくれて助かりました。
少し泣きそうだったもの。
その後は今日お姉様と小さなお茶会と刺繍をしていた事を話していました。
今日は疲れてしまったので、夕食を食べて早めに寝ることにしました。
「メイ、おやすみ。」
「はい、おやすみなさい!」
お父様とお兄様達はまだ調査のことを話しているようでした。
時々小声になっていたので、聞いてはいけない気がして…
部屋に戻ってホットミルクをもらいました。
「ありがとう。」
『少し怖い事がありましたので、念の為にこちらで控えておりますね。』
「最近は眠れていたんだけど…」
『念の為ですよ?』
「そうね…お願いします。」
屋敷に戻って1日目は眠れませんでした。
その翌日には普通に眠れたのです。
自分のお部屋だからだと思うけれど…
ここでも何か問題が起こる可能性があると思うと、少し不安です。
だから侍女の一言にとても安心しました。
「嫌ですっ!」
『メイリン様っ!』
「……また夢を見てしまいました…」
『すごい汗です。お風呂の準備しますね。』
「ありがとう…」
「「メイっ!!」」
「お姉様、お母様…?」
「どうしたの!?」
「大きな声で驚いてしまったわ。」
「申し訳ありません…」
「まあ!?すごい汗だわ?」
「怖い夢を見てしまって…」
「そうなの…」
「それなら、着替えたら私と一緒に寝ましょう?」
「お姉様…ありがとうございます。」
「私も一緒に寝ようかしら?」
「お母様、3人だと狭いわ。」
「そうよね…じゃあ明日は私と寝ましょうね?」
「はい、お母様。」
お風呂で汗を流して着替えました。
「お姉様、お待たせしました!」
「さぁ、ホットミルクを飲んで寝ましょう。」
「はい。」
「メイはいつも怖い夢を見ていたのね?」
「…はい…」
「いつから?」
「え?」
「侍女が落ち着いて対処してたもの。いつもなのでしょう?」
「…はい。攫われてから、暗いところと狭い所が怖くなって…夜も怖い夢で起きてしまいます。」
「そう…怖かったものね…」
「はい…」
「屋敷に来てからは平気だったわよね?」
「はい。最初の日はうなされていて次の日には平気でした。」
「そう…トラウマになっていたのね?」
お姉様は頭を撫でてくださいました。
「さぁ、そろそろ寝ましょうか。」
「はい、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
お姉様がいたから、すぐに眠る事が出来ました。
朝起きるとお父様やお兄様達はもう出かけた後でした。
「おはようございます。お父様達は早かったのですね?」
「そうね。心配だから近衛兵を追加配備するって言っていたわ。」
「お母様とお姉様はご予定はあるのですか?」
「今日は屋敷が危ないというからキャンセルして屋敷にいるわよ。」
「申し訳ありません…」
「いいのよ?婚約の話しかされないんだもの。」
「そうそう。本当にめんどくさい。」
「それより、屋敷も安全とはいえないけれどどうするのかしら?」
そういえば…
「特に聞いているわけではないので、わからないです。」
「そう…メイは大丈夫なの?この前みたいに危ない事に巻き込まれてない?」
「はい。」
「メイの事は殿下やお父様達が守ってるもの。」
「でも、ずっと一緒にいるわけではないのでしょう?」
「はい。でも護衛や近衛兵をたくさん配備してくれています。」
「そう…そういえば、メイはもうすぐ14歳ね?」
「はい。あっという間です。」
「お誕生日のパーティは開けないから離宮のお庭でお茶会をしましょうね?」
「はい!」
お誕生日…
もうすぐです。
そういえば…ラルフ様のお誕生日がお祝い出来なかったわ。
何か喜んでもらえる贈り物はあるかしら?
色々とありすぎて失念していました…
『奥様。ご来客が来ているようですが、近衛兵に帰らせるように伝えますか?』
「はぁ…また約束もなく来たのね?名前を聞いて帰らせてくださいな。」
『かしこまりました。』
「本当に失礼な方達ね。」
「随分とお手紙も来ているのでしょう?」
「そうなのですか?」
「今朝たくさん届いて、お父様が抗議するって言っていたわよね。」
「ジャンとアークもね。」
その後、日が暮れるまで来訪者が何人も…
どうしてこんなに広まっているのかしら?
でも口が軽くて噂好きなんてたくさんいるもの。
お茶会にたくさん出る方ならいくらでも広まるわよね?
調査はクリス様やセイラ様にたどり着けたかしら…
内通者から最終的にどこまで繋がっていくのかも調べないといけないわね。
お友達は欲しかったけれど…
こんなに複雑な状況を作る事があるのね…
クリス様やセイラ様…
一体なぜこんな事になってしまったのかしら?
セイラ様がラルフ様を慕っていたのか、地位が目的なのかがわからない。
確実なのは10歳から疎まれていたという事になるのかしら?
神様が言っていた悪役令嬢は本当にセイラ様なのかしら?
そろそろ本物の悪役令嬢を考えます…
考えているんです。
お話も複雑にします。
最終的にどうなるかは決めてあるので
自分の脳内マップの整理をしようと思います。