パーティでちゃんとエスコートされる悪役令嬢②
会場に向かう途中はとにかく道が塞がれてしまいました。
『コールマン公爵令嬢は姉妹でこんなに美しいのか…』
『公爵の次女のメイリン様…』
『メイリン嬢!のちほどダンスを…!』
『いえ、私と!』
「(なるほど。これがメイリンを守る理由なのだな…)」
「(そうですわね。久しぶりにこの状況を見ましたわ。)」
「(卒業パーティでもこんな感じだった。)」
「(私は会釈だけでいいのでしょうか?)」
「(そうね。メイはとりあえず落ち着くまでは私達の耳元で喋るようにして?)」
「(そうだな。)」
「(とりあえず護衛は前後左右につかせよう。)」
「(指示してくるのでメイを一瞬お願いします。)」
「「わかった。」」
「姉上もメイと一緒に守られてくださいよ」
「ふふっ、わかっているわ。」
お兄様達は後ろにいた護衛達に指示を出して、
数人の近衛兵を集めてきました。
「護衛達の周りに近衛兵を配置したからもう喋っても大丈夫だよ。」
人の壁が…
「少し動きづらいが、喋れないよりはマシだな。」
「そうね。会場についたら少し護衛達を減らさなければならないけど。」
「そうなのですか?」
「そうだよ。パーティなのに物々しいのはおかしいだろう?」
「はい。」
「だからメイリンは私と常に一緒にいてくれ。私と反対側にアークがつく。」
「そ。だから今日は私も護衛だから剣を持っているよ。」
「本当ですね。」
「ミリムは私とアダム殿下がつくから安心していい。」
「はい、ありがとうございます。」
「お姉様達とは離れるのですか?」
「挨拶で離れることはあるが、基本的には一緒に行動する。」
「わかりました。」
しばらく歩いて、ようやく会場に到着しました。
「さて、ミリム嬢。行きましょうか。」
「はい、アダム殿下。」
「では我々も行こうか。」
「はい、ラルフ殿下。」
お兄様達も横について会場に足を踏み入れました。
「メイリン、大丈夫か?」
「はい。」
「そんなに緊張しなくていいよ。」
「はい、お兄様。」
近くで護衛達と近衛兵達が控えてくれています。
すると、次々に殿下達に挨拶をしに人がやって来るのですが…
『殿下、隣の方が噂のご令嬢ですか?』
「そうだがあまり見るな。」
「殿下?」
『まだ婚約はされていないと聞いておりますが?』
「それがどうした?」
ラルフ様が不機嫌そうに会話をしています…
「(メイ、挨拶はできるだけ会釈にしてくれ)」
「(はい、わかりました。)」
「仕方がない。メイリン、挨拶だけしていいぞ?」
「はい、ラルフ殿下。」
それからしばらく挨拶が続きました。
中にはご令嬢がいて、私を睨みつけることもありました。
そのご令嬢はすぐに近衛兵によってその場から遠ざけられました。
お姉様を見ると、笑顔で嫌味を…
お姉様が言っていました…
やっぱりお姉様はお強い。
「(ミリム嬢はいつもあのように対応している。)」
「(姉上ははっきりと断ったりするから男はすぐに離れざるを得ないんだ。)」
「(私もあのように対応をしなければならないのですね?)」
「(メイには無理かなぁ)」
「(そうだな。中には先程のように情報を知りたくて話しかける者もいるから気をつけてくれたらいい。)」
「(はい。)」
その後も挨拶が続いていましたが、
お友達の令嬢達が4人で挨拶に来てくれました。
「「「「メイリン様!」」」」
「メイリン様、ご無沙汰しております。」
「ごきげんよう、メイリン様!」
「やっとメイリン様にお会い出来ました!」
「まだパーティには参加されないのだと思っていたので嬉しいです!」
「皆さん、ごきげんよう。」
「やっぱりメイリン様はお美しいわ!」
「ふふっ、最初の言葉がそれですか?」
「だってメイリン様ったら一気に卒業してしまって、話したりなかったのですよ?」
「私も皆さんともう少し一緒にお勉強したかったわ。」
「それにしてもまたお美しくなられて…」
「本当に…ラルフ殿下が羨ましいです。」
「私がなんだ?」
「メイリン様と一緒にいられて羨ましいです。」
「私達にとってメイリン様は癒やしの存在でしたから。」
「メイ、彼女達は友達かい?」
「はい。以前お話していたクラスメイトです、お兄様。」
「そうか。では少し話したいだろう?別室を用意させる。」
「「「「いいのですか!?」」」」
「アークお兄様、ラルフ殿下。よろしいのですか?」
「護衛と近衛兵をつけるが、構わないならいいぞ。」
「ありがとうございます!」
「「くっ…」」
「メイリン…頼むから公の場でそんなに可愛く笑わないでくれ…」
「そうだよ、メイ。周囲を見てごらん?遠目で見ていた男達がこちらを見ている。」
「え?」
「メイリンが微笑んだ途端に顔を赤くしたり、こちらに来る男達がいるようだ。」
近衛兵達に複数の男性が追い払われていく…
「メイ!彼女達がお友達ね?」
「はい、お姉様。学院でお友達になってくださったのです。」
「今、別室を用意させているんだ。」
「あら、では私も別室を用意して頂いてもいいですか?私のお友達もいるのでお話がしたいもの。」
「構わない。ジャン、すぐに手配させてくれ。」
クリス様やスカーレット様、セイラ様、シャロン様が嬉しそうにしていました。
「ではメイリン。別室まで我々も一緒に行こう。」
「ありがとうございます、ラルフ殿下!アークお兄様!」
「「うっ…」」
私達は別室に案内されました。
「メイリン、話が尽きたら近衛兵に伝えると良い。私達が迎えに来るから1人にならないでくれ」
「はい!わかりました。」
「私も殿下について行くが、護衛は常に2人つけておくよ。部屋の外に近衛兵は3人つける。」
「わかりました。」
お兄様とラルフ殿下は会場に戻って行きました。
「「「「メイリン様!」」」」
「まさかお会い出来るなんて思いませんでした!」
「私も皆さんとまたお話が出来るなんて思いませんでした。」
「本当にまたお美しくなっていて驚きましたわ。」
「これ以上美しくなってどうするのですか?」
「そうかしら?」
「もう…メイリン様はご自身のことに鈍感なのです。」
「そうですわね。肌艶も綺麗だし、またスタイルも良くなってますわよ?」
「スタイルは良くなっていませんよ?ダイエットもしていませんし…」
「メイリン様、違います。」
「(お胸が更に豊満になっていてウエストのくびれがはっきりしています)」
「(それがスタイルが良くなったということなのですね?)」
「(それにしてもなぜメイリン様が内緒話を?)」
「(小声で話されたからですけど?)」
「可愛い!!」
「相変わらずピュアなんですね!」
「そういえば、メイリン様。変な噂が流れております。どうかお気をつけくださいね?」
「噂?」
「メイリン様を良く思っていないご令嬢が数人いらっしゃるのです。」
「あ…あの方々ですよね?メイリン様はお兄様達を侍らせて結婚出来ないようにしているとか…」
「そうそう。殿下と結婚する為に陛下や王妃様に取り入っているとか」
「魔法で異性の方々を虜にしたとかよね?」
「そんな噂が…?」
「えぇ…私もお母様に聞かれて驚きました。」
「そうなのですか…」
『メイリン様、失礼いたします。』
「はい、どうされましたか?」
『この件は後ほど殿下達に相談しましょう。』
「…相談して良いのでしょうか?」
『何か良からぬことが起こるやもしれません。』
「そうですね…何か起きてからでは遅いもの。」
『はい。そのほうがよろしいかと。』
「ありがとうございます。あら?あなたは以前上着を貸してくれた方ね?」
『覚えていたのですね?あの後から殿下とメイリン様専任になりました。』
「ふふっ、そうなのですね。今後もよろしくお願いしますね。」
『はい!』
「メイリン様は護衛の方々ともお話されるのですか?」
「はい。いつもお世話になっているので、時々侍女達や護衛達にお菓子を差し上げることもあるのよ?ね?」
『う…はいっ!』
「まあ!」
「前に頂いたチョコレートとかですか?」
「ふふっ、私と料理長で作ることがあるの。」
「そんなことをメイリン様が…」
「メイリン様は本当に美しいだけじゃなくお優しいわ。」
「メイリン様の噂は私達も気にしています。」
「そろそろ、戻って社交をしなければ…」
「そうですわね。」
「メイリン様がいらっしゃったのでついお話を…」
「私はとても嬉しいです!大事なお友達ですもの。」
「「「「可愛いー!」」」」
「皆さんも相変わらずだわ。」
「メイリン様が可愛いから仕方がありませんわ。」
「本当に。ラルフ殿下にエスコートされていましたが、婚約されたのですか?」
「まだよ?」
まだ極秘だもの。
それに噂の件もあるわ。
この4人に何かあったらどうしましょう?
「皆さん、普段護衛はいますの?」
「クリス様はいなかったわよね?」
「私は下位の貴族ですもの。」
「そうなのですか…」
「何か?」
「私のせいで何か危険がないようにして欲しいのです。」
「危険…ですか?」
「はい。離宮に来てから何度も良くないことがあったので心配なのです。」
「そうなのですか…でも、家で護衛なんて…」
「殿下にもお願いして対策しますので、気をつけてくださいませ…」
「はい、ありがとうございます。」
「ではメイリン様。またお会いしましょう。」
「えぇ、皆さんとまたお会いできるのを楽しみにしています。」
ふぅ…
きっと、また何か良くないことが起こるのね…
100%ではないけれど、対策は必要かもしれません。
確か…
あの小説では何か悪い事をして婚約式が婚約破棄になっていたような…
あの小説とは全然違うことになっているから悪い事にならないとは思うけれど…
神様はあの時、別の方が悪役令嬢になったと言っていたわ。
もっと警戒を…
『メイリン様。殿下達をお呼びして参ります。』
「えぇ…お願いします。」
近衛兵にラルフ様とアークお兄様を呼んでもらうことにしました。