パーティでちゃんとエスコートされる悪役令嬢①
いよいよ、今日はパーティです。
仕立て屋さんとお姉様がいらっしゃいました。
「メイ、お待たせ!」
「ふふっ。お姉様、ごきげんよう。」
「今日のパーティのドレスは出来たわよ。」
「まあ!そんなに早く?」
「ふふっ、急いでもらったもの。」
「そうなのですか。仕立て屋さん、ありがとう。」
『いえ、おふたりのドレスを仕立てられて嬉しいです。』
「今までにないドレスを次からは着られるわよ。」
お姉様はとても楽しそう。
「それはとても嬉しいです。でも仕立て屋さん、無理をしないでくださいね?」
『お気遣いありがとうございます!ですが、私達もあのようなデザインのドレスを仕立てるのが楽しいですよ。』
「ふふっ、そうでしょう?メイの読んだ物語の挿し絵にあったドレスは素敵よね。」
「お姉様が気に入って良かったです。」
「じゃあ早速着替えましょう?」
「はい。」
お姉様が一緒で良かったわ…
パーティでエスコートされるなんて初めてだから、とても緊張しています。
「メイ?どうしたの?」
「いえ、緊張して…」
「あら、どうして?」
「パーティは久しぶりですし、エスコートされて参加なんて初めてで…」
「そうだったかしら?」
「はい…」
困ったわ…
マナーは問題ないけれど、
うまく出来るかしら?
「大丈夫よ。ラルフ殿下がちゃんとリードしてくれるわ。」
「あ…そうですよね?」
「それより早く着替えましょう?」
「はい。」
出来上がったドレスはとても素敵でした。
お姉様が流行りのデザインを選んで、とても綺麗な生地で…
「お姉様…お待たせしてすいません。お姉様のお色ですけど大丈夫かしら?」
「素敵!なんて美しいのかしら!」
「本当ですか?良かった…」
お姉様が言うのなら大丈夫よね?
「はぁ…私の妹はなぜこんなに美しいのかしら?」
「お姉様。いつも言って頂いていますが、大袈裟です…」
流石に恥ずかしい…
「そんなことはないわよ?こんなに美しいと少しでも殿下と離れたら大変だわ。」
「それを言ったらお姉様だってとても綺麗です。」
「ふふっ、メイと一緒に参加するなんて嬉しいわ。」
「私も心強いです。」
「頑張りましょうね?メイはお勉強なのだから。」
お勉強よね?
そうよね?
「はい、頑張ります。」
お姉様と一緒に客室に向かいました。
殿下達がお迎えに来てくれるのです。
はぁ…
やっぱり緊張します…
「ふふっ、メイ。緊張しすぎよ?」
お姉様が震えていた手を握ってくれました。
「冷たいわ。そんなに緊張しなくていいわよ、大丈夫。」
「はい…」
「大丈夫よ。それに私にはジャンお兄様、メイにはアークが護衛としているわ。」
「そうですよね…」
「もう…可愛らしいんだから!」
お姉様にぎゅうぎゅうされています。
ふふっ。
『メイリン様、ミリム様。殿下達がいらっしゃいました。』
「では行きましょう。」
「はい、お姉様。」
お姉様がのぎゅうぎゅうと抱きしめてくれたので、少し緊張がほぐれました。
「アダム殿下、ラルフ殿下。お待たせいたしました。」
「本日はよろしくお願いいたします。」
「「………」」
「お姉様?殿下達がまた固まってしまいました…」
「本当に固まるのね?思った以上に固まっているわ。」
「アダム殿下。」
「ラルフ様?」
「メイ!ミリム!」
「メイ!姉上!」
「お兄様!殿下達が固まってしまったの…」
「「またかっ、!?」」
「はい。」
「それにしても…2人ともとても綺麗だ!」
「2人とも殿下達と絶対に離れないでくれよ?」
「はい。」
「さて、兄上。殿下達はどうする?」
「殿下達を放置して私達がエスコートしようか。」
「「待て待て待て待て!?」」
「あら、戻ってきたわ。」
「ふふっ。」
「すまない……」
「はぁ…美しすぎるから仕方がないだろ?」
「毎回固まるのやめてくださいよ。」
「いや、固まりたくて固まるわけではないからな?」
「殿下達、いい加減エスコートして頂かないと遅れてしまいますわよ。」
「あ…」
「そうだな。ではミリム嬢、手を。」
「はい、アダム殿下。」
お姉様、綺麗…
「ではメイリンも。」
「はい、ラルフ殿下。」
「私達は後ろに控えているからね。」
「はい、アークお兄様。」
「お兄様とアークも気をつけるのよ?護衛なんだから。」
「言われなくても。」
少しの距離しかないのに馬車が…
「メイリン、2人をエスコートするには馬車が必要なのだ。」
「そうなのですか?」
「2人とも貴族達の羨望を受けるからね?」
「羨望?」
「身分、容姿、殿下達のエスコート。これだけ揃えばね。」
「そういうことだ。」
「怖いのですね…」
「だから護衛が必要なんだ。常に殿下達と一緒にいてくれよ」
「わかりました。」
馬車に乗り込みました。
「メイリンはそんなに緊張しているのか?」
「ラルフ殿下。貴族令嬢の鑑と言われてますもの。表情じゃわからないと思いますわ?」
「それもそうだな…」
「メイの手を握ればわかりますわよ?」
「えっ?」
「そうか。じゃあ…手を貸して?」
「はい…」
「冷たっ!?」
「申し訳ありませんっ」
「ね?冷たいでしょう?」
「あぁ、驚いた。」
「メイはエスコートされてパーティやお茶会に参加したことありませんもの。」
「ないのか!?」
「はい…卒業パーティでエスコートされたくらいで。」
「あれはエスコートとは言わないな。」
「ラルフ殿下、ちゃんとリードしてあげてくださいね?」
「わかっている。」
ラルフ様が顔を引き締めました。
でも…いつ手を離してくれるのかしら?
「ふふっ、メイ。そのままでもいいのよ?」
「えっ?」
「ラルフ。手を握ったままだからメイリンが困っているぞ。」
「あ…すまない。」
「いえ、温まりました…」
「はぁ…メイが可愛すぎる!」
「そうだな。でも、ミリムも可愛らしいと思うが。」
「あ…ありがとうございます、アダム殿下。」
「ミリム嬢も照れるのだな?初めて見た。」
「そうなのですか?」
「私だって褒められれば照れますよ。失礼な…」
「すまない…」
「やっぱりお姉様もとても可愛らしいです!」
「ふふっ。」
「あー…なんだか、心配になってきたな。」
「アダム様?」
「2人とも絶対に離れるな。私達も離れないつもりだが…隙を狙われそうだ。」
「そうですね。腕を組んでいようか。」
「それは駄目だな。まだ候補だということにしなければならない。」
「あ。」
「腕は組まなくても必ず離すなよ。」
「はい、兄上。」
こうやって守られていたのね…
「殿下達やお兄様達に守られるなんて贅沢よね?」
「そうですね。」
胸がぎゅーっとなりました。
「大丈夫か?」
「はい。なんだか胸がぎゅーってなってしまって…」
「可愛い!」
「メイリンは出来るだけ会話は避けたほうがいいな。」
「卒業パーティでもそうしたのですが…」
「駄目だったか?」
「挨拶をしない訳にはいかなくて会釈だけにしました。それでも駄目でした。」
「そうですわね?メイは微笑むだけで悪い虫がたくさん…」
「お姉様、虫だなんて…」
「いや、虫だな。」
「…そうですね。」
失礼ではないかしら?
「メイリンはエスコートしていても割り込もうとするヤツがいるから気をつけろ?」
「あ、はい。でもラルフ様と一緒にいれば大丈夫ですよね?」
「まぁ、そうだな。」
「ラルフ、自信ないのか?」
「えっ?」
「ふふっ。大丈夫よ、メイ。これからずっとメイを守るのだから。」
「ラルフ様、守ってくれるのですよね?」
「うっ…それはもちろんだ。」
「ちゃんと守れよ?」
「わかってます。」
大丈夫よね?
「メイリン、そんなに不安そうな顔をするな。」
「はい…」
「ラルフ。今のはお前が悪い」
「メイリン、すまない。大丈夫だ。必ず守ってみせるから。」
「それに私やジャン達もいるのだから心配するな?」
「はい。」
それに、私も警戒していれば大丈夫よね?
馬車が到着しました。
離宮からなので、すぐでした。
馬車からアダム様とラルフ様が先に降りて、
お姉様と私がそれぞれエスコートされる事になっています。
お兄様達も後ろに控えているし、
護衛もしっかりと控えています。
なんとなく物々しいけれど仕方がないですね。
「さぁ、メイリン。行こう。」
「はい、ラルフ様。」
「くっ…」
ふふっ、今固まらなくて良かったわ。
周囲に人だかりが出来てしまったから…
「メイリン、大丈夫か?」
「はい。」
「ミリム嬢は平気?」
「ふふっ、私は慣れてますから。」
「そういえばそうだな。」
「姉上もアダム殿下も油断しないでくださいよ。」
「特にラルフ殿下。メイリンが離れないように気をつけて。」
「わかっている!」
「アークお兄様、必ず後ろにいてくださいね?」
「もちろんだ。」
揃って会場に向かいました。