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悪役令嬢の望みを叶える第一王子③

急に馬車が止まった。


「どうした!?」


『殿下!襲撃です!』


「襲撃だと!?何者だ!?」


『野盗のようです!』


「コールマン公爵達はどうした!?」


メイリンもさすがの騒ぎに目を覚ました。


「すいません、たくさん寝てしまって…」


「メイ。今野盗の襲撃を受けているから、静かに隠れるのよ?」


「襲撃ですか?」


「メイリン。静かにしていろ。近衛兵達が追い払うからな。」


「はい」


「心配するな。メイリンが狙いではない。」


「わかりました。お父様達は?」


「あちらにも近衛兵達がちゃんといるから大丈夫だ。」


メイリンは起きたばかりだからかまだ頭が回らないようだ。


さっきまで穏やかな旅だったからな。


「大丈夫だ。必ず守ってみせる。」


『殿下!人数が多すぎます!』


『公爵達も戦闘になってます!』


「お父様、ジャンお兄様、アークお兄様…」


「わかった、私達も行く。メイリン、ミリム嬢。ちゃんと隠れておけ。」


「はい…」


積んでいた剣をとり、馬車を出た。


馬車に護衛を数人残しておいたが大丈夫だろうか?


信じるしかないが…


前方で戦っているのが見えた。


しかし後方にも野盗が迫って来ていたから応戦した。


確かに人数が多いな…


一部が方向を変えて馬車に向かうのが見えた。


「ミリム嬢、メイリン!」


早く戻らなければ!


馬も怯えているし、動けないようだ。


戻ろうとしたが、野盗が邪魔をして戻れない。


「くそっ!馬車を守れ!」


「護衛はどうした!?」


馬車の所に野盗が数人辿り着きそうだ。


「おい!メイリンとミリム嬢を守れ!」


「馬車に行けるヤツはいるか!?」


『メイリン様!ミリム様!逃げ』


くそっ、間に合わん!


野盗が馬車に手を伸ばした。


「兄上!馬車に行けますか!?」


「こいつらがいて…っ…無理だ!ラルフは行けないのか!?」


馬車の扉に手がかかった時、メイリンが勢いよく扉を開いた。


「メイリン!?」


なぜメイリンが扉を開けて出てきたのだ?


「メイリン!戻れ!」


「メイリン!馬車に戻れ!」


メイリンが護衛の剣をとって戦い始めた。


以前もそうだったな。


剣を弾き飛ばして野盗に足をかけた。


「捕らえて!」


『はい!』


「遅いですわ!」


メイリンが野盗を捕らえているのだが…


『申し訳ありませんっ』


「急いでくださいませ!」


1人捕まったことで数人が更に馬車に向かった。


『メイリン様!』


「メイリン!」


本当に邪魔だな!


メイリンは更に柄を思いっきり蹴り落としているし。


目の前の野盗を捕らえてメイリンのもとに走った。


「メイリン!大丈夫か!?」


「メイリン!」


なんとか残りを取り押さえたようだがメイリンはすとんと力が抜けてしまったようだ。


「「「メイっ!!」」」


「「メイリン!!」」


「あ…申し訳ありません…」


「怪我はしていないのか!?」


「大丈夫です。」


「すまなかった。怖かっただろう?」


「はい…でも大丈夫です。あの、お母様は!?」


「大丈夫だよ。護衛を2人つけておいたからね。」


こんなに震えて…


まだトラウマも消えていないのにこんな目に…


それなのに自分以外の心配をしている。


見た限り怪我はなさそうだが…


汚れた姿を見て不甲斐なさに悔しくなった。


「メイリン、すまなかった…」


「アダム様が謝らなくても…」


「いや、私とラルフはメイリンを守らなければならなかったのだ。」


メイリンが少し震えているように見える。


「お父様、怪我人は…?」


「ラルフ殿下とジャンと数人だが…」


「そうなのですね…魔法を使ってもよろしいですか?」


戦った後に治癒魔法を使うなんて…


また倒れたりしないだろうか?


「メイリン、命に関わる怪我ではないから大丈夫だ。治癒じゃなくて手当だけすれば平気だ。」


「そう仰ってもラルフ様もジャンお兄様も怪我をされてます。馬車の修理もありますし、応援を呼んでしばらく待つのでしょう?」


「そうだが…」


「コールマン公爵。無理をさせる必要などない。」


「でも怪我したままでは良くないです。」


「重症ではない。治癒なんてしてまた倒れたらどうするのだ!」


「ラルフ様。怪我を治すための治癒だと思うのです。それに、ラルフ様とジャンお兄様が怪我したままではイヤです。」


「…わかった。ミリム、シエルの所で待っていてくれ。」


コールマン公爵はしぶしぶ許可をだした。


メイリンは馬の怪我を治してから怪我人に治癒をかけていた。


「「メイリンっ!?」」


メイリンが倒れそうになったのでラルフが抱きかかえた。


「ふふっ、大丈夫です。少し魔力を使いすぎたようです…」


「すぐに野営の準備をさせる!」


急いで指示を出した。


「ラルフ殿下、頼みますよ?」


「わかっている。」


「メイリンは大丈夫なのか!?」


「…治癒魔法で魔力を結構使ったらしいです。」


「そうか…私達がちゃんと馬車を守っていれば怖い思いをさせなくて済んだのに…」


「大丈夫です、あの状況では仕方がないと思います。」


「それに治癒まで…」


「アダム様。このような時のために治癒魔法はあるのですから…」


「野営の準備が出来た。私がメイリンを連れて行こう。」


「大丈夫です、ラルフ殿下。メイは私が抱えていきます。」


「…そうか。」


「ありがとうございます、ジャンお兄様。」


ジャンがメイリンをテントに運び、アークはミリムをテントに連れて行った。


「殿下。ちゃんと説明してください。」


「あぁ、もちろんだ。」


ラルフとふたりで状況説明をした。


「とりあえず、わかりました。」


「でも、今回は野盗でしたからあの人数を考えると仕方がないと思います。ですが、メイを必ず優先して守ってください。」


「「必ず守る。」」


その後はなかなか眠れなくて焚き火の所に向かった。


「ラルフ。眠れないのか?」


「兄上?」


「いや、寝つけなくてな…」


「私は婚約者として守ってあげられなかった。その上、治癒魔法まで使わせて…」


「ラルフだけではない。今回はコールマン公爵とジャン達、私達全員がメイリンの護衛だったからな。」


「兄上、私はメイリンの婚約者としては不釣り合いなのだろうか…」


自信が無いということか?


メイリンはラルフを選んだというのに。


「…どういう意味だ?」


「本当は私ではなく…」


「メイリンがお前を選んだのだが?」


「そうですね…」


「私に譲る気になったというのか?」


きっとメイリンは困惑するだろう。


それに悲しむはずだ。


「私は困るのだが?」


「……」


「ラルフがメイリンを守れていなかったのは事実だ。同時に私も守れていなかった。アークもジャンもだ。」


「わかっていますが…私は頼りなさすぎるのではないでしょうか?」


「そうか。なら、私がメイリンにラルフではなく私の婚約者になれと命令でもするか?」


今は発破をかけたほうが有効だろうな…


「いえ、譲りません。」


「ならば、メイリンを守れるように強くなるしかないだろう?」


ラルフは拳を握って頷いた。


その後、アークとジャンも眠れないようだったから4人で今後についての話し合いをした。






日が昇り始めるとメイリン達が起きてきた。


「おはよう、メイ。もう大丈夫?」


「おはようございます。大丈夫です。アークお兄様は疲れていませんか?」


「私は怪我をしていないから大丈夫。」


「メイリンは起きて平気なのか?」


「はい、大丈夫です。」


「本当にすまなかった、メイリン。私と兄上のどちらかが馬車で守るべきだった…」


「ラルフ様。あの時は仕方なかったのです。」


「怒っていいんだよ?それに私達も含めて叱られるべきなんだ。」


「叱られるようなことはしていなかったはずですが…」


「メイは殿下の婚約者だ。だからメイを守る義務があった。」


「義務だからですか?」


誤解をさせるな…


「もちろん義務だけではない。私の婚約者だから守りたいと思っている。」


「婚約者だから…」


「婚約者を怪我をさせてはいけない。だからちゃんと守らなければならなかったんだよ?」


「そうなのですね…」


「メイリンの言いたいことはわかっている。結果としては良かったが、本来メイリンから離れてはいけないのだ。」


「……」


「それに、近衛兵や護衛がメイや殿下達に助けられているようでは意味がない。」


「私も含めて剣術と体術、護衛に関してもちゃんと時間を作って訓練をするつもりだ。」


私達は本当にメイリンを守れる強さを手にしなければならない。


「しかし、私達はメイに助けてもらってばかりだ…」


「そんな事はないと思いますけど」


「いや。助けられてばかりだよ。今回は魔法まで使わせてしまった。」


「私は殿下達やお父様、お兄様達にいつも助けて頂いているのです。だから恩返ししたと思っていただけませんか?」


「いや、私達はメイを守るためにいるのだから」


「私はちゃんと守っていただいています。」


「メイ…」


「私はいつも守られています、お兄様。ちゃんと心を守ってもらっているのです。」


「…そうか…」


「私は皆さんが思っている以上に助けてもらっているのですよ?」


「メイ…」


「だからそんなに辛そうにしないでください。」


「「ありがとう、メイ」」


「アダム様、ラルフ様。お2人もそうです。いつも守ってくださっています。だから責任を感じなくていいのです。」


「メイリン…」


「あら?皆さんでどうされたのですか?」


「お母様!」


コールマン公爵と夫人が朝食が出来たのだと知らせにやって来た。


公爵は途中聞いていたようで苦々しい顔をしていた。


「ふふっ、メイは本当に可愛いわ。皆さん、朝食が出来ていますよ?」


「はい、今行きます。ね?」


「「「「くっ…」」」」


メイリンが笑顔で首を傾げたら全員が悶絶している。


本当の兄達まで悶絶するのだ。


私だけではないのだな…


朝食を食べて少しして応援が到着した。


新しい馬車は到着に時間がかかるようだが修理する者が先に来た。


新しい馬車が来るまで野盗の見張りを立て、先に修理した馬車で帰ることに。


途中で合流してから新しい馬車に乗り換えて、


修理した馬車をここに戻して野盗を連れて城の廊に送り届けるのだ。


近衛兵を半分残して出発する。


「…メイリン、行こうか。」


「はい、ラルフ様。」


馬車を出したがなんとなく、空気が重い。


「ラルフ殿下、アダム殿下。お2人はメイがあんなに強いと知っていたのですか?」


「離宮にメイリンが来てから知ったのだ。」


「そうなのですね。」


「ふふふ。お姉様、私が剣術と体術を学んでいたと知っていたのに信じていなかったのですね?」


「知っていたけど、あんなに強いなんて知らなかったわ?」


「ミリム嬢は知っていたのか…」


「はい。でも実際見たことがなかったから先生のお世辞かもしれないと…」


「確かに剣術と体術も学んだと聞いていたが、私もここまで強いなんて知らなかった。」


「私なんて全く知らなかったから初めてメイリンが剣を持った時に目を疑ったぞ。」


「ふふっ、私もです。護身の為に習っていたので戦うつもりなんてありませんでした。」


そうなのか。


剣術も体術も思った以上に習得していたということだな。


「だが、今後はもう戦わせない。私はメイリンと絶対に離れずに守る。」


「お願いしますね、ラルフ殿下。」


「必ず。」


メイリンはラルフの言葉を聞いて顔を赤くした。


その後は離宮に着くまで、ミリムとラルフがメイリンの可愛い自慢をしていた。


婚約の申込みをする前は鬱陶しかった妹自慢が、


こんなに楽しいとは思わなかった。


離宮に到着した時にはミリムはすっきりした顔をしていた。


きっと自慢をしたくて仕方がないのだろう。


「はぁ…メイリンの自慢が出来てスッキリしました。」


「私達もその話を聞けて良かった。」


「そうですね。」


「お姉様も殿下達も本当に恥ずかしいので、これ以上はもう…」


「あはは。わかったわかった。ではメイリン。またすぐに会おう。」


「はい、ラルフ様。」


「では、私はミリム嬢と一緒に茶会をするとしよう。」


3人でお茶をするのは気分が良さそうだ。


婚約者のいない私には、両手に花で間違いなく癒やしの時間になるだろうな。


「それは素敵!アダム殿下、絶対やりましょう!」


「ふふふ。お姉様、アダム様。お茶会楽しみにしています。」


「私は呼ばれないのか?」


「ラルフ様もたくさんお茶に誘ってくださいね!」


「うっ…」


婚約式が終わってメイリンが成人するまでは離宮でふたりきりにはもうなれないのだ。


「メイ?2人きりで離宮で会うのはダメだから、王城のテラスとかでお茶をしなさいね。」


「あ、そうでした。ではラルフ様、テラスに誘ってくださいね?」


「あ…そうだな。わかった、必ず誘おう。」


ラルフは顔を赤らめて約束をしていた。


メイリンを離宮に送り届けると見送るとミリム嬢を見送りに行った。


「ラルフ殿下、メイをよろしくお願いします。アダム殿下も。」


「わかった。」


「私も約束しよう。」


私が初めて真剣に婚約を申し込んだ令嬢だ。


義妹になる予定だが、メイリンには幸せになってもらわなければならない。


明日からはラルフやジャンとアークの4人で剣術と体術を訓練することにした。


教師はまだ打診していないが、メイリンの訓練をしたという者を希望している。


メイリンがあれだけ強くなったのだ。


私達も彼に特訓を頼んでメイリンよりも強くならなければ。


もちろん、護衛や近衛兵達にも訓練をしてもらうつもりだ。


一緒に戦っていた者達はメイリンを戦わせた挙げ句に助けられていたのだ。


私達が特訓する事を知って、近衛隊長に進言するつもりらしい。


今度こそメイリンを危険に合わせない。


そう思いながら、執務室に向かった。





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