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妹の願いを叶える姉④


しばらく眠って日が昇り始めた頃にメイが目を覚ました…


良かった…


「おはよう、メイ。」


「…お姉様?」


「まだ寝ていていいのよ?」


「もう大丈夫です。」


「そう?じゃあ、お茶を準備してもらうわね。」


「ありがとうございます。」


テントを出ると、お父様とお母様がメイの顔を見に来た。


「メイはどう?」


「今ちょうど目が覚めて、お茶の準備を頼みに行こうと思って」


「良かった…」


お父様?


聞かないほうがいいのかしら?


馬車に向かう途中でうっすら聞こえた箝口令という言葉。


安心した理由はそれだと思うけど…


お茶の準備をしてもらっていると、


メイがお父様に抱きかかえられてこちらに来た。


「大丈夫?立てないの?」


「いや、私が歩かせたくなかっただけだ。」


「そうなのね。」


先程のお父様を見ればどれだけ心配したのかわかるわ。


「おはよう、メイ。もう大丈夫?」


「はい、アークお兄様も疲れていませんか?」


「私は怪我をしていないから大丈夫。」


「メイリンは起きて平気なのか?」


「大丈夫です。アダム様はお怪我をしていなかったのですね。良かった。」


「本当にすまなかった、メイリン。私と兄上のどちらかが馬車で守るべきだった…」


「ラルフ様。あの時は仕方なかったのです。」


「もっと言ってもいいんだよ?私達も含めて叱られるべきなんだ。」


「なぜですか?叱られるようなことはしていなかったはずですが…」


「それはメイが殿下の婚約者だからだよ?」


「婚約者だからですか?」


「そう。婚約式前に婚約者を怪我をさせてはいけないことになっている。だからちゃんと守らなければならないんだよ?」


「そうなのですね…」


「結果としては良かったかもしれないけど、本来メイリンから離れてはいけないんだ。」


「……」


メイ…


「申し訳ございません…」


「メイリンは謝らなくていいぞ?だけど、護衛達と近衛兵達は訓練をさせなければいけないな。」


「そうですね。近衛兵や護衛がメイや殿下達に助けられているようでは意味がない。」


そうよね…


あの時もっと強かったら、メイは戦う必要がなかったもの。


だから同意するけど、責める気にはならない。


野盗の人数が倍近くいたから。


「しかし、私達はメイに助けてもらってばかりだな…」


「そんな事はないと思いますけど」


「いや。助けられてばかりだよ。魔法まで使わせてしまった。」


メイの魔法…


あの時の話のことなら、きっと治癒魔法よね…?


使えるのね、治癒魔法。


そうでなければ箝口令などと言わないでしょう。


あえて聞いていないフリをした。


「私は殿下達やお父様、お兄様達にいつも助けて頂いているのです。だから恩返ししたと思っていただけませんか?」


「私達はメイを守るためにいるのだから」


「私はちゃんと守っていただいています。」


「メイ…」


「お父様、ジャンお兄様、アークお兄様。私は皆さんが思っている以上に助けてもらっているのです。」


「……そうか。」


「はい。だからそんなに辛そうにしないでください。」


「「ありがとう、メイ」」


「アダム様、ラルフ様。お2人もそうです。いつも守ってくださっています。だから責任を感じなくていいのです。」


「メイリン…」


「…ありがとう、メイリン。」


ちゃんと言いたいことは言えました。


「あら?皆さんでどうされたのですか?」


「お母様!」


「ふふっ、メイは本当に可愛いわ。皆さん、朝食が出来ていますよ?」


「はい、今行きます。ね?」


朝食を終えると応援で来た近衛兵達と合流。


ようやく帰路につけた。


帰る途中の馬車の中では殿下達にメイの自慢話をたくさんしたの。


小さい頃から学院に入るまでどのような勉強をしていたか、


小さなお茶会の話や勉強していない時の話などを離宮に着くまでずっと。


メイは恥ずかしがっていたけれど、殿下達はとにかく聞きたいらしくて楽しそうに聞いてくれたの。


離宮につく頃には自慢が出来てスッキリしたわね。


最近はあまりメイの話を友人になかなか自慢出来ないし…


婚約の話はたくさん聞かれているけど、お母様と一緒で教えていないのよ。


「メイリンの自慢が出来てスッキリしました。」


「私達もその話を聞けて良かった。」


「そうですね。」


「お姉様も殿下達も本当に恥ずかしいので、これ以上はもう…」


「あはは。わかったわかった。ではメイリン。またすぐに会おう。」


「はい、ラルフ様。」


「では、私はミリム嬢と一緒に茶会をするとしよう。」


それはどちらの意味かしら?


2人で?


メイを入れて?


でも、どちらでもいいわよね。


幼馴染みなのだし。


「それは素敵!アダム殿下、絶対やりましょう!」


「ふふふ。お姉様、アダム様。お茶会楽しみにしています。」


やっぱりメイと3人だったのね…


あら?


なぜ勘違いしたのかしら…?


「私は呼ばれないのか?」


「ラルフ様もたくさんお茶に誘ってくださいね!」


「うっ…」


「メイ?2人きりで離宮で会うのはダメだから、王城のテラスとかでお茶をしなさいね。」


「あ、そうでした。ではラルフ様、テラスに誘ってくださいね?」


「あ…そうだな。わかった、必ず誘おう。」


ラルフ殿下はなんとか2人で会いたいのね。


メイも嬉しそうだからいいわよね。


お父様やお兄様、アークはきっとダメだと言うから、王城のテラスなら大丈夫でしょう。


「メイ、海は楽しかった?」


「はい、お姉様。みんなで行けてとても楽しかったです。」


「ふふっ、私も楽しかったわ。」


あら、お父様達はそのまま仕事に戻ってしまうのね?


あ、仕事終わったらお話でもするのかしら…


ずるいわ…


「じゃあ、メイ。しっかり身体を休めるのよ?たくさんお茶に誘ってね。」


「はい、お姉様。」


メイリンが離宮に入っていくのを見送ると殿下達が私とお母様の見送りをしてくださった。


「ラルフ殿下、メイをよろしくお願いします。アダム殿下も。」


「わかった。」


「私も約束しよう。」


ふふっ、殿下達はメイに家族になると言われて喜んでたから大丈夫ね。


アダム殿下も妹のようにメイに接していたし。


きっとアダム殿下とはメイの話で盛り上がれると思うわ。


帰りはお母様とメイのドレスの話をたくさんしたの。


婚約が決まったのだから、ドレスを作るだろうから日程を決めて立ち会おうと思って。


ふふっ、楽しみだわ。




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