勉強しすぎて時間を持て余した 悪役令嬢
「それと、陛下から殿下に関して匂わせて来た。」
「匂わせ?」
「メイを気に入ったようだ。」
マジですか…
警戒していたのに…
でも、
確かに見た目は好み…かな?
「匂わせということは特に何かしなくても大丈夫でしょうか?」
「なぜメイを気に入ったのですか?」
「メイ、詳しく話しておくれ?」
「はい、お父様。」
お茶会の始まる前に庭で小鳥と戯れていたこと。
お茶会が始まると声をかけられたこと。
会場にエスコートされたこと。
お茶会で例の失礼なご子息から声をかけられていて、殿下が割り込んで会話を終わらせてくれたこと。
第一王子と2人で他の男性を遠ざけてくれたこと。
帰ろうと思ったらダンスのお誘いを受けたこと。
ダンスの最中にまた会いたいと言われたこと。
全て話した。
「完全に気があるではないか。」
「そうかしら?」
「殿下達と他になんの話をしたの?」
「私の噂話よ?あと洗礼式のあと一瞬で人攫いにあったとか。」
「メイを見ただけで一目惚れしてしまうらしいわ。」
「わからないでもないけどね。」
見ただけでって、
中身はどうでもいいってことじゃない。
失礼な噂だわ。
「一目惚れなんて信じられないわ。」
「私はいいと思うわよ?」
「一目惚れに関しては私も悪くないと思うよ?」
お父様まで?
お母様は恋愛小説を読んでいたからわかるけど。
「メイはどうして信じられないの?」
「見た目だけで中身はいらないみたいで私は嫌だわ。」
「ふふふ、メイは現実的ね。」
「そうだね、慎重でいいと思うよ。」
「メイは変な男に引っかかることはなさそうだな。」
「殿下はどうだい?」
第二王子か…
「素敵な方だとは思うわ。」
「思う?」
「あまり話したことないもの。」
「なるほど(笑)」
「それに、私結婚したくないわ。家族みんなと一緒にいたいわ。」
「そうか。じゃあメイはずっと私達と一緒にいよう(笑)」
みんな嬉しそうだ。
それに、家族がずっと一緒。
私が前世からずっと望んでいることだ。
「だから、婚約の話は全部断ってくださいね!」
「わかったよ。私に任せなさい。」
「お父様ったら本当にメイに甘いわ。」
「そうは言っても、ミリムにも甘いぞ?」
「あら、ダニエルは家族に甘いのよ。」
違いないわね。
私は家族と幸せになりたいんだもの。
これが正解だと思うわ。
万が一、殿下が私を気に入ってくれたとしても譲れない。
異性のお友達くらいでいいと思うのよね?
でも、最近よく思うけど、完全に悪役令嬢ではなくなったわ。
これなら断罪もないでしょう。
地球の神様にも、この世界の神様にも感謝しなくちゃね。
そうだわ、教会!
そろそろ自己防衛ができるようになったのだから行ってもいいわよね?
もし、駄目だったら…
神様のお人形でも作ろうかしら?
そういえば、
この世界で縫い物とか編み物とかやったことなかったわ。
明日お願いしてハンカチを数枚と、
刺繍糸、肌色と白と緑の生地、綿と、
縫い物セット、
編み物セットと赤と青の毛糸を購入しましょう。
あ、便箋とかも必要ね。
前世で暇だったからぬいぐるみとかマフラーやセーターも作っていたの。
刺繍はキャラクターの刺繍をよくしたわ。
家族がとにかく喜んでくれた。
あまりお金がなかったから、
100円ショップで材料を買ってもらった。
家族の分を作って、
たまにバザーにも出してもらったりしていた。
ふっとした時に思い出すのよね。
今の家族は喜んでくれるかしら?
今日はバイオリン、ダンス、歴史の勉強。
バイオリンは演奏するだけ。
ダンスは踊るだけ。
歴史はこの国の歴史は終わったので、
隣国の歴史を勉強している。
バイオリンもダンスも褒められるくらいまで達している。らしい。
正直、学ぶ必要がないと言われた。
もっと言うなら、学院の勉強は終わってしまっているのだ。
私、10歳です。
前世は13歳でした。
魔法の力と運動神経はチートだけど、
それ以外は加護があるとはいえ、自分で学んだ。
私にそれだけのポテンシャルがあると思わなかったわ。
2歳には読み書きと計算が出来て、
チートってすごいと思っていたのだ。
きっと学ぼうとしなければ、
普通だったということだ。
もちろん、言語に関しての翻訳機能はチートだけど異世界転生ではマストだしね。
自分でも驚いている。
普通に勉強も、
剣術、体術も、
バイオリンやピアノもダンスも努力でここまでこれたのだ。
健康な身体はとてもありがたい。
むしろ、チート能力よりも健康な身体が嬉しかった。
勉強の時間のあとは昼食をとり、
午後はお買い物…
街に行きたかった…
人だかりが出来てしまうから駄目だと言われてしまった。
教会も神父様が洗礼式の時の方だから駄目だとも言われた。
だから商人を家に呼び、
必要な物を買うことになった。
縫い物セットや編み物セット。
刺繍糸、生地、毛糸、綿、ハンカチ、便箋などを買うのだ。
手紙の返事を書かなくてはならないから便箋…
書きたくないのよね、本当は。
代筆ありということだけど、
手紙をくれた方はあまり綺麗な字ではなかったから手書きなのよ。
そうなると、手書きで返事をしなくちゃいけないと思う。
はぁ。
商人は私が買いたい物のたくさんの種類を用意してくれていた。
選ぶから種類は多く用意してくれているのだ。
まずは便箋。
思ったより種類が多い。
匂い付きもあった。
今後も必要になるかもしれないから匂い付きの物を1種類、
花柄の便箋を5種類、
無地の色違いを5種類を買うことにした。
しばらく買わなくていいように購入。
ハンカチは無地の白と水色と黄色とピンクを5枚ずつ。
刺繍糸は赤、白、青、黄、ピンク、紫、水色、薄紫を5つずつ。
生地は白を10メートル、
エメラルドグリーンと薄い緑を3メートル、
肌色を3メートル、
水色と薄紫を5メートルを購入。
綿もたくさん買った。
毛糸は赤、白、水色、紫、薄紫、エメラルドグリーン、薄い緑、黄色、グレー、黒を5玉ずつ。
縫い物セットと編み物セット、刺繍用のセットも購入。
マリーカが驚いていた。
今まで買い物なんてしたことないものね。
時間潰しにもなるからこれだけ買っても問題ない。
まずは編み物から始めようかしら?
寒くなってきたからみんなにマフラーを編むつもり。
お父様にはグレー、
お母様は水色、
ジャンお兄様は薄紫、
アークお兄様は薄い緑、
お姉様はピンク、
全部ケーブル編みにするわ。
マフラーにしようかしら?
少し長めで、幅の広いマフラー。
きっとお父様やお兄様達は馬にも乗るからいいと思うのよね。
お姉様とお母様はマフラーよりショールのほうがいいかしら?
マフラーよりもショールを羽織るほうが似合うかも。
「マリーカ、マフラーとショールを作ろうと思うのだけれど、みんなは喜んでくれるかしら?」
「お嬢様が作ってくれるなら喜ばれると思いますよ?」
「ふふふ、早くプレゼントしたいわ。」
「お嬢様がこのような趣味があるとは思いませんでしたわ。」
「図書室の本を全て読みつくしたもの。編み物や刺繍、お人形や料理の本もあったの。」
「そのような本もあるのですね。」
「そうなの。星の本とか聖書とか占いとか。占いは興味をひかれなかったからやってみようとは思わなかったわ。」
我が家に仕える者にも作ろうかしら?
楽しみが出来たわ。