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望みを叶えてもらう悪役令嬢⑤

目がさめるともう日が上るところでした。


お姉様がいてくれたので、


今日は怖い夢でうなされることはありませんでした。


こんなに眠れたのはとても久しぶりです。


「おはようございます。」


テントから出るとジャンお兄様とアダム様が近衛兵達と焚き火の番をしていました。


「おはよう、メイ。早いね?」


「メイリン、おはよう。今日はすっきりした顔をしているな?」


「良く眠れたからでしょうか。とても寝起きの気分が良いです。」


「そのようだね。」


「アダム様とジャンお兄様は眠いですよね?代わりましょうか?」


「メイリンにそんな事はさせないぞ?そもそもメイリンを守る為に見張っているのだから。」


「そうでした…」


「メイ、お茶でも飲むかい?」


「はい。」


「では私達もお茶にしよう。」


「初めて見た星空はどうだった?」


「はい!とても綺麗で感動しました!あんなにキラキラ輝いていて…」


思い出しただけでうっとりとしてしまいました。


「「くっ…」」


あら?


「離宮に戻ったら星や空に関連した本を読もうと思います。」


「はぁ…メイリンは本当に可愛いな。」


「そうでしょう?星空を見てこんなにキラキラした目で話すんだから、本当に可愛い…」


「お兄様、アダム様に何を言っているのですか…」


お兄様達がこんなに自慢しているなんて…


「ジャン、私もメイの義兄になるからな。自慢は私にも出来るぞ?」


「いやいや、まだ婚約も結婚もしていないのだから当分の間は自慢出来ませんよ。」


「お兄様、アダム様をからかい過ぎです。」


本当に我が家は王家に対して辛辣ね。


「今日は海か。メイは泳げないだろう?」


「はい、習っておりません。」


「泳がないのか?」


「泳ぎたいですけど…」


わからないから水辺で遊ぶくらいかしら?


波ってどのくらいの感覚で来るのか、


どのくらいの深さがあるのか、


知りたいことはまだまだあります。


浮力の感覚も、砂浜の砂など知りたいことだらけです。


「海で知りたい事もたくさんありますから。泳げなくても楽しみです。」


「そうか。泳ぎは学ばないのか?」


「学べるなら。」


「今日しか泳ぎを学ぶ機会はないからね。」


「でも先生が…」


「私が教えようか。」


ジャンお兄様とアダム様が教えてくれることになりました。


「おはよう、メイ。」


「今日は体調が良さそうだ。」


「おはよう、メイ。起きるの早いわね。」


「おはようございます。すっきり目が覚めました。」


「そうか。それは良かった。」


「メイが嬉しそうで何よりだ。」


「お姉様とお母様と一緒でしたから。」


「ふふっ、私達もメイと一緒で嬉しいわ。」


「さて、朝食を食べたら出発しようか。昼には到着するよ。」


「楽しみです!」


朝食を食べて馬車に乗り、出発しました。


「メイリンは楽しそうだな?」


「はい、とても楽しいです。」


「メイは海で何が楽しみなの?」


「アダム様とジャンお兄様が泳ぎを教えてくださるのです。」


「兄上が?」


「朝話していたら泳げないと聞いたからな。」


「はい。」


「私が教えるぞ?」


「ラルフはあまり得意ではなかっただろう?」


「うっ」


「そうなのですね。ラルフ様も一緒に教わりますか?」


「それはいい。どうだ?」


「あー…そうですね…」


「あら、では私も教わろうかしら。」


「はい、ぜひ。」


「メイがいつもどのようにして学んで習得しているのか見たいもの。」


「それは私も見たいな…」


お姉様とラルフ様も一緒に教わることになりました。


海でやりたい事がたくさん増えて、とても嬉しいです。


貝もとってみたいし、海水も楽しみ。


「ふふっ」


「メイリンは王城で会う時の令嬢としての印象とだいぶ変わったな。」


「そうですね。私もメイリンと初めて会ったときの印象とだいぶ違うかもしれません。」


「私達にはこんなに可愛いのです。本当に我が家以外で見せたくなかったのに…」


「そのような理由だったのですね?」


「それだけの理由ではないわよ?」


「そうですか…」


そんな理由もあったなんて。


美しいから、賢いからと言われていましたが…


「確かに、あまり知られたくないな。」


「そうですね。」


その後は海に着くまで、海の色や海の生き物のことなどたくさん教えていただきました。


それからはあっという間でした。


「さぁ、メイリン。」


「はい、ラルフ様。」


「それでは、ミリム嬢もどうぞ?」


「ありがとうございます、アダム殿下。」


お姉様?


なんだかお姉様のお顔が赤いわね?


ふふっ、お姉様も照れていらっしゃるのね。


「メイ、早速着替えて来ましょう?」


「はい、お姉様。」


「では私達も着替えて来る。」


「後でな。」


「はい。」


お姉様と着替え用のテントに向かいました。


テントには侍女と女性の近衛兵が待っていました。


「メイリン様、ミリム様。お着替えの準備は出来ております。」


「あら、お母様は?」


「はい、公爵夫人は着替えてコールマン公爵とあちらに。」


お母様とお父様はパラソルの下で仲良くお話をされているようです。


「ふふっ、お父様もお母様も仲睦まじいわね?」


「そうですね。楽しそうです。」


テントに入って水着に着替えました。


お姉様はやっぱり綺麗だわ。


「メイ!いつの間にそんなにスタイルが良くなったの!?」


「そうですか?お姉様も綺麗ですよ?」


「ありがとう!メイは本当に女神のように美しいわ。」


「ふふっ、お姉様は大袈裟ね。」


「お兄様やアークもきっと驚くわね?」


「そうかしら?」


兄弟なのに驚くのかしら?


テントを出て、お父様やお母様の所に向かいました。


「「メイリン、ミリム嬢!」」


「ラルフ様、アダム様。お待たせして申し訳ありません。」


「メイリンもミリム嬢も美しい…」


「……」


「メイ!姉上!2人共とても似合うよ。」


「本当に私の妹達は美しいな…」


「ふふっ、ありがとうございます。」


「ありがとうございます…」


そんなにじっと見られると恥ずかしいのですが…


「メイは女神のように美しいでしょう?」


「本当に。ミリム嬢もとても綺麗だ…」


アダム様、真っ赤ですね?


ふふふ、ラルフ様は相変わらず固まっているわ。


「ラルフ様?」


「メイ、ミリム。美しいが…水着はやめないか?」


「ダニエル、それでは楽しめないでしょう?」


「ふふっ、アダム様に泳ぎを教えていただくの。」


「そうよ。メイが習得する瞬間を見れるの。楽しみだわ。」


「お姉様も教わるって言ったではないですか?」


「そうでしたわ。」


「アダム殿下。あまり無理させないでくださいよ?」


「わかっている。」


「ラルフ殿下。いい加減戻ってくださいよ。」


「…はっ!?」


あ、戻ったようです。


それでも、あまりにも見られているので困っているのですが…


「ラルフ殿下…見すぎです。」


「すまない、あまりにも美しすぎて…」


「まぁ、わからないでもないですけど。」


「アークお兄様?」


「はぁ…なぜメイは私の妹なのだろうか?」


「アーク、ジャンもそうだがメイと他の令嬢を比べると結婚出来ないぞ?」


「それはそうだけど、本当に残念だ。」


「全くだ…」


「お兄様もアークもメイばかり褒めるのだから。」


「ミリムも他の令嬢と比べるととても美しいからね?」


「そうだよ。メイが生まれる前は姉上以上に美しい令嬢がいなかったのだから。」


「アークもジャンもミリムより素晴らしい女性じゃないと婚約しないと言い張っていたからな。」


「ふふっ、お姉様お美しいですもの。私もお姉様のようになりたかったのよ。」


「メイはミリムから離れなかったものね?」


「メイリンもミリム嬢も他の令嬢と比べると本当に美しいと思っていたぞ?」


「そうだな、メイリンが生まれる前はミリム嬢なら婚約したいと思っていたからな。」


とてもいたたまれない気持ちになりました。


お姉様も恥ずかしくなってきたようです。


「じゃあ、メイ。海に入りましょう?」


「はい、お姉様!」


「私達も行こう。」


初めて海に足を入れました。


「わあ!とてもふわふわしているのですね?」


「ふわふわ?」


「なんだか、浮かぶような感じです!」


「それは面白い感想だな。」


「これは私も浮かぶのではないでしょうか?」


足を地面から持ち上げてみると、


思った通り浮かびました。


「浮かびました!」


ふふっ、これは楽しいです。


「メイリン、あまり浮かぶとラルフが固まる。」


「ラルフ様が?」


「(メイ、浮かぶとお胸が目立つのよ?)」


そうですね…


通りで視線を感じます。


「メイ、ラルフ殿下は気にするな?」


「そうだぞ?どうせろくなことを考えていないからね」


「あー…まぁ、わからないでもないが。とりあえず、泳ぐ練習でもしようか?」


「はい!」


「ふふっ、メイったら元気ね。」


「はい、楽しみにしていましたから!」


それからアダム様とジャンお兄様が教えてくれました。


浮かぶことができたので、顔をつけてみることに。


顔をつけると、お風呂や顔を洗う時と違う感覚になりました。


その次は目を開けて潜りました。


「(まるで人魚のような美しい姉妹だな?)」


「(当たり前でしょう。)」


「(美しいのは知っているが…)」


「(殿下達は一体どこを見ているんだか…)」


「(うるさいぞ、お前達。)」


「(いや、見てしまうのは仕方がないだろう?)」


「(それは…そうかもしれないけど)」


「目が開けられるようになりました!」


「「くっ…」」


「「うぅ…」」


「まあ!メイったら、呑み込みが早いわね!」


「ふふっ、アダム様とジャンお兄様の教え方が上手いのです。」


「そうね。」


「では、からだを浮かせて顔をつけてみようか」


「はい!」


わぁ…海は潜っても綺麗だわ。


海の中でも砂浜は砂のようね。


「顔をつけたまま泳ぐのは苦しいですっ!!」


「あはは、メイリン。これから息継ぎの練習するから安心しろ。」


「メイはこんなに楽しそうに学んでいるのか…」


「本当に楽しそうね。天才だと思っていたけど…」


「たくさん勉強していたんだね。」


「これは努力以外の何ものでもないな。」


息継ぎはタイミングが難しいですね?


「メイリン、苦しくなる前に顔を上げるといい。」


「はい、アダム様!」


とても教え方が上手だわ!


「メイリンは学ぶ時にこんな顔をしているのだな?」


「私達も初めて見ましたよ。」


「いつも教師から天才だとしか聞いていなかったしね。」


「そうね、一緒に勉強する機会もなかったから新鮮だわ。」


「そうなのか?仲が良いからなんでもわかるのだと思っていた。」


息継ぎの間、お兄様達とお姉様、殿下達は何やらお話をしているようでした。


だいぶ慣れてきた気がします。


あ、貝が…


実際はこんな風に動いているのね?


以前から生き物をちゃんと見る機会がなかったから不思議だわ。


「メイリン、少し休もうか。あまり一気に練習すると足をつってしまう。」


「はい、アダム様。」


海からあがり、パラソルに向かうと冷たい果実水が用意されていました。


「メイはすぐに泳げるようになるね?」


「そうですか?」


「あぁ、一生懸命練習しているからな。」


「ふふっ、ありがとうございます。」


「次は足を動かして問題なければ、手を離してみようか。」


「はい!」


「メイは集中力が高いのだね。昔頑張って勉強すべきだったと思うよ。」


「本当ね。私もお茶会のない時は勉強しようかしら?」


「姉上も?何を勉強するんですか?」


「そうね…とりあえず、地理やお花かしら?」


「ミリム嬢も勉強するとなるとメイリンのように護衛が必要になるな?」


「そうですね。メイリンとは別の意味で護衛は必要になると思います。」


「メイとミリムはこの国でNo.1とNo.2の美しいご令嬢だからな。」


「メイ、もう少し髪を拭いておいで?」


「そうね、ラルフ殿下がさっきから固まっているわよ。」


気づきませんでした。


固まる理由がわからないけれど、なぜ顔が赤くなっているのかしら?


「はい、行ってきます。」


お姉様と一緒にテントに向かいました。


「メイは本当に勉強熱心ね。」


「そうですか?」


「あんなに一生懸命に勉強しているなんて知らなかったわ?」


「学べる時間が多かったので、やる事がなかった分頑張ってしまったのです。」


「泳げるようになるためにあんなに頑張っているから、私達も勉強しようかとお話していたの。」


「そうなのですね。私は勉強する癖がついていたかもしれません。」


「ふふっ、メイらしいわ。それにしても、メイはまるで人魚のようね。」


「ありがとうございます。でもお姉様もですよ?」


「あら、そうかしら?」


「はい。お姉様が泳いでいるのを見たらとても綺麗でした!」


「ふふっ、ありがとう。きっとメイが泳げるようになったら人魚のお姫様になるわね。」


お姉様も大袈裟なのだから…


侍女たちに髪をしっかりと拭いてもらって、また戻りました。


「おかえり。ちょうどお茶が入った所だよ。」


「ありがとう、少し寒くなってきたと思っていた所よ。」


「海に長く入っていたからね。」


「そうですね。」


「ん?それなら練習やめておくか?大丈夫か?」


「大丈夫です。もう少しだけお願いします!」


「あはは、わかったよ。」


その後、練習して少しだけ泳げました。


本当に少しだけですが…


「メイは本当に泳げるようになったのね。すごいわ!」


「お母様、ジャンお兄様とアダム様の教え方がとても上手だったのよ?」


「あはは、ありがとう。でもメイが頑張っていたのは確かだよ。」


「ふふっ」


「はー…すごいな。」


たくさん褒められました。


「メイリン、少し唇が紫色になっている。温まったほうがいいぞ?」


「本当ですか?」


「本当だな?メイ、こちらでお茶を飲みなさい。」


「はい、お父様。」


温かい…


「メイはこの後何をするんだい?」


「さっき、貝を見かけたのです。貝殻を探してみようかと思います。」


「貝殻か…綺麗な巻貝もあるからな。」


「はい。」


「では、とりあえず着替えたほうがいいね。」


「そうだな。濡れたままで風邪をひくと良くない。」


「そうね、そうしましょう?」


「はい、そうします。」


少し日が暮れかかっているものね。


着替えて戻ると、ラルフ様が固まっていました。


「ふふっ、ラルフ様はなぜ固まっているのでしょう?」


「さあな?」


「メイ、砂浜を歩こうか?」


「はい、アークお兄様。」


「あ、待て待て。私も行く。」


「メイ、あの辺りがキラキラしているよ?」


「え?本当ですね!」


走って見に行くと、ピンク色をしたキラキラ光る巻貝でした。


綺麗な貝殻…


その後も水色の大きな貝殻やキラキラした砂など、見たことのないものをたくさん見て歩きました。


「メイリン、そろそろ暗くなる。戻ろう。」


「はい。」


もうすぐ夜ですね。


「もう帰る準備は出来てると思うよ?」


「もう帰るのですね、残念です。」


もう少し、旅を楽しみたかったので残念です。


「私達も残念だよ。こんなに可愛いメイが見れなくなるからね?」


「ふふっ、そんなにいつもは可愛くなかったのですね。」


「えっ?ごめんごめん。いつもよりもっと可愛かったからって意味だよ?」


「私はメイリンが本当に泳げるようになるとは思わなかったな。それに人魚のようだった。」


戻ったときには出発の準備が整っていました。



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