小さいお友達に後押しされて決着をつけた悪役令嬢
「イヤですっ!」
「メイリン様っ!」
目を開けると自室にいました。
「また夢を見てしまったのですね…」
「ごめんなさい…」
「さぁ、お風呂に行きましょう。汗だくです。」
「はい…」
もう随分と経つのに…
「メイリン様。あまり気にしないでください。大丈夫ですから。」
「はい…」
心配されてしまうから眠りたいのに恐怖で起きてしまいます。
このまま治らなかったら…
婚約もなくなるかもしれません。
こんなにめんどくさい婚約者なんていないほうがいいのでは…
「さぁ、着替えて寝ましょう。今日も少し遅めに起きればいいですから。」
「ありがとう」
また眠りにつきました。
「メイリン様、おはようございます。」
「おはようございます…」
まだ少し眠い…
「元気がないですね?」
「そんな事はないわ。」
元気なんて出るはずがない…
「ラルフ殿下からお手紙が届いていますよ。」
「えっ!?」
ラルフ様から…
治ったかどうかの確認だったらどうしましょう?
ーメイリンへ
もう少しで休みだ。
それまで我慢するつもりだったが…
会いたいのだ。
ドレスとアクセサリーを一緒に渡してある。
午後にお茶だけでも出来ないだろうか?
返事を待っている。
ラルフ
「どうしましょう…」
「お返事を書いてから支度をしましょう!」
「そ、そうね…」
急いで、お返事を書きました。
ーラルフ様
お茶のお誘いありがとうございます。
午後、お会い出来るのを楽しみにしています。
メイリン・コールマン
「ドレスを贈ってくださったようだけど…」
「はい。とても美しいドレスですよ。」
とても綺麗…
薄い紫色でピンクのラインが入った爽やかなドレスでした。
「どうかしら?ちゃんと似合うかしら?」
「ふふふ。メイリン様に似合わないものなどございませんよ。」
「褒めすぎです…」
「今日はいつもより綺麗にしましょう。お2人でお会いするのは久しぶりですものね?」
「…お願いします…」
ラルフ様と2人で…
また、心拍数が…
「まずはお食事にしましょう。」
「はい。」
食事をして支度をする事にしました。
その間もずっと落ち着きませんでした。
「まだ時間はあるかしら?」
「えぇ。大丈夫ですよ?」
「少しお庭に出ていい?」
「はい。準備いたします。」
お庭の確認をしてもらい、バイオリンを準備してもらいました。
お庭に出てバイオリンを演奏し始めました。
少しすると小鳥さんやうさぎさんが遊びに来てくれました。
「来てくれてありがとう。」
いつもよりもたくさんいるわ?
「今日は随分たくさんお友達を連れて来てくれたのね。」
小鳥さん達がテーブルに整列しました。
「どうしたの?整列なんてして?」
すると、うさぎさん達が私の足元に集まり始めました。
「あら?うさぎさんまで…?」
「メイリン様。ラルフ殿下がいらっしゃいました…?」
「あ、はい。すぐ、」
「ふふふ、こちらにお通ししましょうか?」
「ふふっ、そうね。お願いします。小鳥さんとうさぎさん達のおやつもお願いします。」
「かしこまりました。」
「小鳥さん、うさぎさん。今、ラルフ様がいらっしゃるの。」
うさぎさんは足元から離れないし、
小鳥さん達は整列して綺麗な鳴き声を…
本当にどうしたのかしら?
「メイリン。」
「ごきげんよう、ラルフ様。」
「今日は随分と…いや、今日も美しい…」
「ありがとうございます…」
目が見れないのはなぜかしら…?
「今日は随分と小鳥やうさぎが集まっているな?」
「はい。小鳥さんもやうさぎさんも様子がおかしくて…」
「そうなのか?」
「はい。小鳥さんは整列していますし、うさぎさんは足元から…?」
「あ?」
「うさぎさんっ!?」
「おいっ!?」
思いっきりラルフ様とくっついているのですが…
「メイリンこのまま座るか…」
「あ、でも…」
せっかくのドレスが…
「そうだな、ドレスだからな。少し待て。」
ラルフ様はポケットからハンカチを出して敷いてくれました。
「ありがとうございます。」
優しいな…
「うさぎさん、もう押したら駄目よ?」
うさぎさんはラルフ様や私の膝の上に乗ったり、周りを跳ね回ったりご機嫌のようです。
「ラルフ様、お仕事は大丈夫なのですか?」
「もうだいぶ片づいてきたからな。休みは問題なくいけそうだ。」
「そうですか。無理はしていませんか?」
「まぁ…多少の無理は必要だ。メイリンは気にしなくていい。」
ふっと顔を上げたら、ラルフ様と目があってしまいました。
「メイリン、あまり目を合わせないようにしていないか?」
あっ…
気づかれてしまいました。
「申し訳ありません…」
「いや、何か理由があるのか?」
話してもいいかしら?
心拍数が上がってしまうことと、
トラウマがあるから婚約は無理かもしれないこと。
「メイリン?」
胸がぎゅーっとなりました。
顔を見るのは少し…
でも、見たいと思ってしまうのです…
悩んでいても、相談する人がいないから…
覚悟して正直に話してみましょう…
「あの…暗い所と狭い所が怖くて、夢を見て眠れないことが多くて…婚約は出来ないのではないかと…」
横目でラルフ様を見ると目を大きく開けて止まってしまっています。
「申し訳ありません…」
「いや、違う。あー…婚約出来ないと心配しているのか?」
「はい」
「そうか…それは心配しなくていい。」
「…いいのですか?」
「構わない。あってもなくても。」
良かった…
殿下達や家族に恥をかかせなくてすみました。
「他にもあるのではないのか?」
「じ…実はすごく…すごく心拍数が上がってしまうのです。それにさっきの事を考えていたら、ここがぎゅーっとなるのです。」
「そうか…」
「はい…」
「メイリン、私にだけそうなるのか?」
思わず俯いてしまいました。
「おかしいですよね…」
「いや、おかしくないぞ。」
「でも、ちゃんと目を合わせられないんです。」
「私もそうだったぞ?」
「そうなのですかっ?」
「あはは、そんなに泣きそうな顔をしなくていい。」
「婚約の話がなくなると思っていたので少しほっとしました」
「なぜだ?」
「殿下達や家族に恥をかかせてしまうと思ったのです。」
「トラウマなんてあってもなくても関係ないから安心しろ。」
「はい」
「では婚約は決めたのだな?」
「婚約…」
「まだ決まっていないのか?」
「え?」
「メイリンは私と兄上のどちらが…」
あ…
心拍数が上がるのは、恋愛のドキドキだと…侍女達が言っていたもの。
「ラルフ様?」
「な、なんだ?」
「頭を撫でてください。」
「いいぞ?」
やっぱり…
お兄様達と違うのですね。
「ラルフ様が…いいです。」
「よし。」
「よし?」
「はー…長かった…」
「そうなのですか?」
「ずっといつ決まるか緊張していたのだ。」
「私には短かったです…」
「そうか?」
「はい。殿下達はお兄様達のお友達と思っていましたから。」
「そうだな…幼馴染みだからな。」
「はい。」
「だからどちらかと結婚するのだと思っていましたが、自分で選ぶのは難しくて…」
「そうだろうな…」
「おい。侍女と護衛と近衛兵は見えないように後ろを向け。」
「ラルフ様?」
言う通りに皆が後ろを向きました。
「メイリン、こちらを向け。」
「はい。」
「うわっ」
「え?」
うさぎさんに押されてラルフ様が私の上に乗っかってしまいました。
「ラルフ様大丈夫ですか?」
「あー…」
ラルフ様が真っ赤です。
「ラルフ様?」
「メイリン、すまない…」
「はい?」
え…
口が…
というかどかないのですか?
「はー…幸せだ…」
「ラルフ様?今のは…?」
「(口づけという行為だ。)」
「あの…」
「(嫌だったか?)」
「なぜ小声なのですか?」
「まだ正式に婚約していないからだ。」
「そうなのですね?」
「今のは知られてはいけない行為なのですね?」
「そうだ。他人に知られてはならない。アークとジャンには絶対に言っては駄目だ。」
「わかりました。でも、そろそろ…」
「メイリン?」
心拍数がとんでもなく上がっています。
「退いていただけると…」
「あ。すまないっ」
ラルフ様が慌てて退いてくれました。
その後はお茶を飲みながら、今後のことを話しました。
「では、メイリン。明日迎えに来るから、支度をしておいてくれ。」
「はい」
ラルフ様は侍女達に明日のことを伝えて帰られました。