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悪役令嬢に第一王子と第二王子が思うこと

【第一王子 アダム】


ジャン達と久しぶりにメイリンに会いに行った。


「申し訳ございません。メイリン様はまだ眠っておられます。」


メイリンはいつも早く起きているはずだが…


「風邪か?」


「いえ…」


「何かあったのか?」


「実は…」


侍女に聞いたら、あまり眠れていないらしい。


夜中にうなされて起きてしまうそうだ。


やっぱり、トラウマになってしまったか…


一度戻る事にした。


「ジャン、アーク。申し訳ない。」


「アダム殿下が謝る事はありませんよ。」


「そうです。私達の責任でもあるのですから…」


「いや、私がもっとしっかりしていれば…」


「そんな事をいつまでも言っている場合じゃないです。」


「今度の遠出で少しでも良くなるといいのだが…」


「そうですね。姉上や母上が来るなら喜ぶと思うし、少しは良くなると思いますが…」


「悔しいな…」


本当に悔しい。


私がもっと力になってやりたいが、


家族には敵わないな…




少しして、メイリンが起きたという事で離宮に向かった。


「お待たせして申し訳ありません。」


「おはよう、メイ。」


「今日も綺麗だよ。」


「ごめんなさい、お寝坊して…」


「アダム様、ラルフ様。ごきげんよう。」


「なかなか会いに来れなくてすまなかったな。」


「メイリンに会いたいのに時間を調整してくれなかったのだ。」


「ふふっ、お忙しいのですね。」


メイリンは起きたばかりで何も食べていないから軽食を用意させる事になった。


ジャンがまだうなされている事について話し始めた。


やはりジャンやアークは遠慮せずに聞いた。


「メイリンはあまり眠れていないのか…」


「いえ…ちゃんと寝ていますよ。」


「ウソはつかなくてもいいよ?」


メイリンは嘘がつけないのだな?


すぐにわかった。


「私達の責任だな。」


「そんな事はありません!」


「今は責任とかはどうでもいい。」


「ミリムや母上に来てもらおうか?」


「お姉様やお母様にご迷惑が…」


「とても心配しているんだ。」


「そうだよ?」


「それと殿下達のお休みを数日まとめてとったから一緒に過ごすといい。」


喜んでくれるといいが…


ラルフを見て、いつもの反応とは違っていた。


「メイ?」


「どうした?」


「なんでもないですっ」


過剰に意識をしている?


全員が気づいたが、ラルフを見ないようにしているようだ。


お腹が空いたというから軽食を食べて、お茶を飲みながら本題を切り出した。


「メイリンは少し遠くに出かけるならどこに行きたい?」


「遠く?」


「そう。殿下達と私達と遠くに出かけようと思ってるんだ。」


「陛下があまりにもメイが可哀想だと言っていてね。護衛は多くなってしまうが遠出をする事になったんだ。」


「それでお休みなのですか?」


「そうだ。どこに行きたい?」


「え…どこかに…?」


「ないのか?」


一生懸命に考えていて可愛いな。


「星が見たいです!あと、海が見たいです!」


「あはは。見たことないもんな?」


「星くらいはあるだろう?」


「基本的に暗くなったらカーテンを締めて室内に入るようにしていたのです。」


「危ないから。」


「はい。だから、夜は窓に近寄ってはいけないのです。」


随分と過保護だな?


「夜は変なヤツがどこに隠れているかわからないじゃないですか。」


「小さい頃にメイを攫いに来たヤツがいたんです。」


それは…過保護にもなるな。


どうやらメイリンは聞かされていなかったようだ。


そうか…2歳からもう記憶があるのか。


2歳には教えられないな…


「それで、コールマン家はみんなで行こうかと思うんだ。」


「お姉様とお母様とお父様も一緒に?」


「そうだよ。」


「嬉しい!」


よほど嬉しかったのか、ジャンとアークに抱きついた。


「あ…申し訳ありませんっ」


「ジャン、アーク。なんだか腹が立つな…」


「メイリン、私達に抱きついても良かったのだが…」


ラルフの本音が漏れた。


「え?」


「ラルフ殿下。私達の妹になんて事を言っているのですか?」


「アダム殿下も私達の妹が可愛いからって睨まないでもらえます?」


メイリンが俯いた。


あまりの可愛さに息を飲んでしまった。


「「くっ」」


「メイ。ほら、こっちに座りなよ。そっちは危ないからね?」


「いかがわしい事を考える殿下達は相手にしなくていいぞー?」


「いかがわしい事を考える?」


「いや、そんな事はないぞ!?」


ラルフが慌てて否定した。


いかがわしい…


「…そうだな…」


うっかり否定をするのを忘れた。


しまった…


「アダム殿下、見損ないましたよ。」


「兄上、私も残念です…」


「いや、待て待て待て待て!否定するのを忘れただけだ!」


気を取り直して。


「じゃあ、メイリンを海に連れて行こうか。」


「危なくないのですか?」


「大所帯で出かけるんだから、しっかり護衛がつくし、大丈夫だ。」


「油断はしない。」


「メイは楽しみに待っていてくれればいいからね。」


「はい!」


「(メイリンが可愛い…)」


「兄上、そんな当たり前な事を小声で言わなくても…」


「海には何を持っていけばいいのですか?」


「それはミリムと母上に相談して用意するといい。」


「はい、ジャンお兄様。」


「ラルフ殿下もアダム殿下もいかがわしい事を想像しないでくださいね。」


「いかがわしい事を想像?」


「余計な事を言うな!」


「メイリン。違うからな?」


「はい…?」


「わかりました?」


「わかっていなくて良かった…」


「どういうことでしょうか?」


「メイ。気にしないで。」


「はい…?」


「ほら、首を傾げたら駄目だろう?」


「そうでした!」


メイリンが首をコテンと傾けた。


なんて可愛い顔をするのだ。


「「くっ…」」


兄弟だな…


「さて、殿下。そろそろ行きましょうか。休みの為に。」


「ラルフ殿下も行きますよ。」


「わかっている。メイリン、またな。」


「はい、勝手に頭ぽんぽんしないでくださーい」


「ふふっ」


「「ぐっ」」


「殿下達もお兄様達もお仕事頑張ってくださいませ。」


「メイ、無理はするな。」


「はい、ジャンお兄様…」


「何かあったら、すぐに言うんだよ?」


「はい、アークお兄様…」


ジャン達はメイリンを抱きしめて頭を撫でた。。


「無理はしないようにな?」


私も頭を撫でた。


メイリンは目を大きく開いて微笑んだ。


はぁ…


ラルフに負けたのは確実だったようだが…


あまりにも美しくて可愛らしい仕草に決意が揺らいだ。


執務室に戻るとジャンが一言。


「殿下。とりあえず、頑張りましょう。」


ジャンは婚約解消された事があるから、


気持ちがわかったのかもしれない。


「わかっている。早く仕事を進めろ。」


「はいはい。」


わかってくれる同士に感謝した。






【第二王子 ラルフ】


メイリンに休みの件で兄上とアーク達と離宮に向かうと、


まだ寝ていた。


珍しいな?


アークが侍女に問いただすと、夜はうなされて起きてしまうらしい。


だから、メイリンの為に起きるのを遅くしているそうだ。


「完全にトラウマになってしまったな…」


あんなに大人びていても13歳なのだ。


あんなに怖い思いをしたのだから、


トラウマにもなるか…


一度戻って、メイリンが起きてから再度向かう事にした。


離宮に行くと、メイリンが支度をして部屋に入ってきた。


「アダム様、ラルフ様。ごきげんよう。」


挨拶をしたのだが…


今日は化粧をしていた。


今日もやはり美しいな…


「なかなか会いに来れなくてすまなかった。」


「ジャンが会う時間の調整をしてくれなかったのだ。」


やっぱり兄上もか。


ジャンとアークがうなされている事について問いただした。


「いえ…ちゃんと寝ていますよ。」


「ウソはつかなくていいよ。」


「はい…」


申し訳なさそうにしている。


「私達の責任だ。すまない…」


「いえ、責任はありません!」


本当に心まで美しい。


少しして本題を切り出した。


「今度、少し長めに休みをとれる事になった。だから殿下達とゆっくり出来るよ。」


「休みですか?」


嬉しそうにこちらを見たから思わず口元が緩んでしまった。


目が合うと赤くなって目を反らして胸に手を当てて深呼吸をしていた。


え?


今の反応はなんだ?


誰も何も言わないが…


勘違いしてもいいのだろうか?


その後もほとんど目が合わないようにしている気がする。


「その休みに遠出をしようと思うのだがどこに行きたいか希望はあるか?」


「陛下があまりにもメイリンが可哀想だと言っていて、護衛の人数は多くなるが遠出をしようかと思ってるんだ。」


「で、どこに行きたい?」


メイリンは少し考えて


「星が見たいです!あと海も見たいです!」


「あはは、見たことないもんな?」


「星くらいはあるだろう?」


どうやら、2歳の頃に夜中攫われそうになって夜は窓に近づかせないようにしていたらしい。


やはり美しいと危険が多いのだな。


これからは私が守ってみせる。


「それで、遠出するならコールマン家もみんなで行こうと話しているんだ。」


「お姉様とお母様とお父様も?」


「そうだよ?」


「嬉しい!」


アークとジャンに抱きついた。


「ジャン、アーク。なんだか腹が立つな…」


「メイリン、私達に抱きついても良かったのだが…」


「ラルフ殿下、私達の妹になんて事を言うんですか」


「アダム殿下も私達のメイが可愛いからって睨むのやめてもらっていいですか?」


「いくらなんでも殿下達に抱きつくなんて…」


真っ赤になって俯いた。


「「くっ…」」


可愛すぎる…


「メイ、こっちにおいで?殿下達のほうは危ないから」


「いかがわしい事を考える殿下達なんて気にするな?」


「待て!そんな事は考えてないぞ!?」


焦って立ち上がろうとした時、

兄上の同意が遅かった…


「うわー」


兄上は少なからず考えてしまったようだ。


「兄上、良くないと思います。見損ないました。」


「いや、待て待て待て待て!」


兄上がこんなに焦るなんて思わなかったな。


「じゃあ、海にしよう。」


「でも、危なくないのですか?」


「もちろん、護衛は多く連れて行くから安心して。」


「メイは楽しみに待っててくれればいいよ」


「はい!」


あー…


可愛い…


「ラルフ殿下もアダム殿下もいかがわしい事を想像しないでくださいね。」


「メイリン、違うからな!?」


「はい…?」


わかってなくて良かった…


「さて、殿下。そろそろ行きましょうか。休みの為に。」


「わかった。」


「ラルフ殿下も行きますよ。」


「わかっている。メイリン、またな。」


なんとなく、どこかに触れたくて頭を撫でた。


「はい、勝手に頭ぽんぽんしないでくださーい」


「ふふっ」


「「ぐっ」」


あまりに可愛らしく笑うから…


兄上も同じようだ。


やはり兄弟なのだな…


「殿下達もお兄様達もお仕事頑張ってください!」


うん。


頑張れそうだ。


海に行く時に着るドレスを贈ろう。


そうだな…ターコイズがいいかもしれないな。


でも、その前に一度2人でお茶をしよう。


振り向くと兄上が頭を撫でて、メイリンが目を大きく開いて驚いた表情をしていた。


兄上もなんとなくいつもと違う表情をしている。


「ラルフ殿下。」


アークに連れられて執務室に戻った。


「殿下。メイはもう決めるかもしれません。許しがたいけど。」


「わかっている。もし決まったなら、私の全てをかけて幸せにしてみせる。」


「あーあ…。大事にして来たのにな…」


「…諦めてくれ。」


アークは肩を落とした。


だが、最後に見た兄上とメイリンを思い出す。


勘違いかもしれないが私を選んでくれると信じよう。

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