侍女達と恋バナをする悪役令嬢
自分の悲鳴で起きてしまいました。
「メイリン様っ!」
「ごめんなさい…」
「いえ、いいのですよ。またこんなに汗が…」
「汗を流して着替えましょう。」
「はい。」
あれから何日もこんな感じです。
「食欲もなくなってしまって、少しやせてしまいましたね?」
「なんだかすぐお腹いっぱいになってしまうの。」
「そうですよね…」
きっと時間が解決してくれるわよね?
うっかり俯いてしまいました…
「メイリン様…大丈夫ですよ、きっと。」
「すぐお腹いっぱいになってしまうなら、少し回数を増やしてみましょうか?」
「どういう事かしら?」
「食事の量を少なめにして、1日に5食とか回数を増やしたらよいのではないかと…」
「それはいいアイデアね。」
「では明日からはそのように準備をいたします。」
着替えを済ませて、またベッドに入りました。
翌日から食事の回数が増えました。
朝食を食べて、お茶を飲んでいたらアークお兄様とラルフ様が来てくださいました。
「メイリン、少し痩せたか?」
「はい、食欲があまりなくてすぐお腹いっぱいになってしまうのです。」
「そうか…まだあまり眠れていないのか?」
目の下に指をあてて、隈をなぞりました。
「夢を見て起きてしまうし、暗いと怖くて眠れないのです。」
「そうか…トラウマになってしまったのだな…」
「…そうみたいです。」
どうやったら治るのかしら?
気分よく眠っても、あの王子達の顔と箱の中での事を夢で見てしまう…
「あの時、ちゃんと守れていれば…」
「命は守っていただきましたし…平民の方が王子の所に行く前に気持ち良くなってもいいかと思ったと言ってましたから…」
「気持ち良くなっても?そうか…貞操は守られたのだな。殿下。危ない所、本当にありがとうございました。」
「いや…しかし、下衆だな」
「メイじゃなかったとしても腹が立つな…」
「……」
「どうした?」
「貞操…」
「あ…メイリンに聞かせる事ではなかったな?」
「なぜ平民は手を出さなかったのでしょうね?」
「綺麗過ぎて無理だと言っていました…」
「そうか…本当はまともな奴らだったのだな?」
「はい…だから治安が良ければ、こんな風に巻き込まれずに済んだかもと考えてしまいました。」
「メイリンは箱の中でそんな事を考えていたのか?」
「はい…何かを考えていなければ正気ではいられませんでしたから…」
「他にはどんな事を考えていたんだい?」
「お兄様達や殿下達やお姉様とお父様、お母様の無事と助けに来てくれるかと…」
たくさん考えていた気がします。
「自分以外の心配をしていたのか…本当に心が美しい…」
急に褒められるのは困ります…
「殿下、そろそろ。」
「そうだな。メイリン、またすぐに会いに来る。」
「そうだね。時間を都合つけられるように仕事を頑張るから。」
「お兄様、ラルフ様。ありがとうございます…」
お兄様に抱きしめてもらいました。
ラルフ様は頭を撫でてくださいました。
お兄様とラルフ様は執務室に戻っていかれました。
また1人の時間になりました。
早く選ばなければ…
1人の時間はできるだけ婚約の事を考えていますし、
考えるようにしています。
それに婚約の事を考えていないと怖い事を思い出してしまうのです。
もちろん焦っているのも本当です。
今のままでは良くない事はわかっているのです。
まさか自分が少女漫画の主人公のような状況になるなんて思ってもみなかったし…
でも恋愛って、どうしたら理解出来るのかしら…?
「メイリン様、どうかされましたか?」
「え?」
急に声をかけられて驚きました。
「いえ…何もなければ良いのですが、辛そうに見えたものですから。」
心配をかけてしまったのね?
「ごめんなさい、考え事していたのよ。」
「考え事ですか?」
「えぇ…恋愛ってどうしたら理解出来るかと…」
「そうですか…」
「心拍数が上がる事とドキドキするという事は同じなのかしら…?」
「ふふふ、そこからでしたか。では時間がかかるのも無理はありませんわね?」
「そうなのですか?」
「はい。好きになると、その方を思うだけでそわそわしたり、ドキドキするのです。」
「そわそわ?」
「あ。申し訳ありません!私がメイリン様とお話するなんて…」
「いいの!教えてくださいませ。」
人の話を聞くのは初めてです。
「できれば皆さんのお話も聞きたいです。」
「まあ!メイリン様と恋バナを?」
「いいのかしら?」
「大丈夫よ。私恋バナなんて女性とした事ないのです。」
「ふふふ。では、お茶のご用意をして来ましょう。」
侍女達と初めて女性の恋バナをする事になりました。
「皆さんは男性を好きになった事はあるのですか?」
「私は婚約してからお慕いするようになりました。」
「婚約してから?」
「貴族は政略結婚が当たり前ですもの。」
「そうですよね?」
「はい。ですから異性とお話する機会はお茶会とパーティだけでした。」
「それでどうして?」
「ふふふ。メイリン様は興味深いのですね?」
「はい!」
「婚約をしてお相手の方とお会いしたらとても紳士的な方でドキドキしました。」
「ドキドキ?」
「はい。その後は時々観劇に誘っていただいたり、お手紙をいただいたりしたのです。」
「私と同じようにデートをされたのね?」
「ふふっ、そうです。それからはいつ会えるのかとか考えるだけでドキドキしていました。」
その後もたくさんお話を聞きました。
「そうなのですね…では私の心拍数が上がったりするのはそのドキドキなのね。」
「アプローチをされるとやっぱりドキドキしますよね。」
「じゃあ、殿下達とお会いした時はドキドキしていたのね…」
「ドキドキしているのですか?」
「はい。心拍数が上がって熱くなってしまいます。」
「ではもうすぐ婚約されるかもしれませんね」
「あら、もうこんなお時間ですわ。」
「メイリン様と恋バナをするなんて思ってもみませんでしたね?」
「本当に。」
「皆さん、私のお願いを聞いてくれてありがとう!」
「少しは気晴らしになりましたか?」
「ふふっ、とても!」
「メイリン様のこんなお顔を見るのは久しぶりですわ。」
「そうですか?」
「ずっと大変でしたもの。色々と悩まれていて、いつも苦しそうでしたから。」
「読書や演奏会やお勉強されている時は生き生きとしていますけどね。」
「…恥ずかしいわ…」
「照れているメイリン様…可愛らしいです。」
「殿下達もこんなに悩んでいるなんて思わないでしょうね?」
「私達の秘密よね。」
「きっと、こんなメイリン様をみたら卒倒されてしまうわね。」
「そうかしら…?」
「お会いするだけであんなに真っ赤になるのですもの。倒れてしまうかもしれませんわ!」
侍女達は仕事に戻って行きました。
また時間が出来てしまったわ…
でも、皆さんのお話だと心拍数が上がるのは胸のドキドキと同じだった…
そうすると、
アダム様は口説いてくださってると思う時はドキドキしています。
ラルフ様は口説いていると思う時…
あら?
なぜラルフ様は普通に会話している時にもドキドキしていたのでしょう?
ん?
アダム様は?
考えてみたらドキドキしますね…
ラルフ様は?
ドキドキします…が?
顔が熱く…?
え?
え?
ええっ!?
「メイリン様?」
「あ、ごめんなさい。リラックスするお茶を…」
「ふふっ、かしこまりました。」
お茶を淹れてもらい、少し落ち着いてきました…
改めてラルフ様の事を考えてみました。
やはり顔が熱くなりました。
もう一度お茶を飲んで落ち着いてから今度はアダム様を考えてみました。
ドキドキはしたのですが…
まだ顔が熱くなりません…?
え…?
もう一度お茶を飲みました。
ラルフ様を考えてみました。
また顔が熱くなりました…
なぜか顔を覆ってしまいました。
「メイリン様、どうされましたか?」
「え?」
「メイリン様!?顔が真っ赤です。風邪では?」
「いえ…大丈夫です。なんでもありませんっ。」
驚きました…
なぜでしょうか…?
この前助けていただいたからかしら?
それとも、少し疲れているのかしら?
「メイリン様、お風呂にでも入られますか?」
「そうですね、そうします。」
「では、支度をしてきます。」
「お願いします。」
気のせいかしら?
お風呂でリラックスしましょう。
そろそろラストスパートです。
年内には完結するつもりですが…
とりあえず、頑張ります。