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使節団が来なくて焦る悪役令嬢

今日は使節団が到着する日です。


王宮も城下もぴりぴりしているようです。


「メイリン、今日は必ず私達から離れてはならないぞ。」


「はい。」


「周囲もピリついているし、使節団の派遣に関してもまだ意図がわからない。」


そう、まだ意図がわからない以上油断はできません。


「大丈夫。メイは必ず私達が守ってみせるよ。」


「アークお兄様…」


「だから心配そうな顔をするな。」


「はい、ありがとうございます。」


今日入国予定だったはずだけれど、なんの報告も入っていないようです。


通常、近くまで来ると連絡がすぐに来るはずなのですが…


お昼を過ぎても来ていません。


夕方くらいかしら?


「アダム殿下。いつまでも待っていられないので、仕事を進めておきましょう。」


「そうだな。」


「ラルフ殿下もですよ?」


「わかっている。」


「では私は…新聞をチェックします。」


「メイリンもいつも通りだな。」


「はい。」


みんなでお部屋に戻りました。




少し仕事が片付いたということで、お茶の時間にしました。


「まだ到着の連絡がありませんね?」


「日程を間違えたのかもしれないな?」


「そうですね。なんだか、イヤな予感がするのですが…」


「私もだ。」


「時間にルーズな国なのだろうか?」


「さあな。王宮でもやきもきしているようだ。」


「そうでしょうね。予定が大きく変わりますから。」


「途中まで迎えに行かせるようだ。」


「そうですか。どちらにしても、舞踏会は今から中止には出来ないのですよね?」


「あぁ。少し遠くからも参加をする予定だったからな。」


「それまでには来られるといいのですが…」


「全くだ。」






それからしばらくしても使節団の入国の知らせは来ていません。


だんだん舞踏会の時間が迫っています。


仕方なく、支度をする事にしました。


「メイリン。私達はここで待っているからな?」


「はい。」


部屋に戻り、侍女達が舞踏会のドレスに着替えさせてくれました。


「メイリン様…美しいです…」


「ふふっ、ありがとう。こんなドレス着たことがないわ。」


「そうなのですか?とても良くお似合いです!」


「メイリン様の為のドレスですね。」


「大袈裟よ?」


侍女達に絶賛の声を受けて、扉の外へ。


「お待たせいたしました。」


「「……」」


「流石、私達の妹…」


「これは…やっぱり参加を止めようか。」


「え…?」


「メイリンが美しすぎて…これは困るな?」


「困るのですか!?」


似合うと言われていたのだけれど…


「もみくちゃになってしまうのではないだろうか?」


「そんな事にはならないと思いますが…」


「いや!絶対になる!」


あまりに興奮気味で少し驚いてしまいました。


「メイ。妹でなければ、すぐにでも連れ去りたいくらい美しいよ。」


「そうだな、ショーケースに飾って自分だけで楽しみたいくらいに美しい。女神とはメイのことだろうな。」


「アークお兄様、ジャンお兄様…褒めすぎですっっ!」


「いや、メイ。自覚しなさい。本当に女神のように美しい。」


「美しすぎて…直視が出来ない…」


「そうでしょうね?お2人とも首まで真っ赤ですから。」


「煩いぞ。」


「鏡を見てきたらどうですか?」


「…そんなに赤いのか?」


「はい。先程、父上が来てミリムと母上が会場に到着したらしい。」


「それでエスコート役が変わってミリムのエスコートをアダム殿下、メイのエスコートをラルフ殿下がする事になった。」


「そうなのですね。ラルフ様、よろしくお願い致します。」


「ラルフ殿下。気をつけてくださいよ、色々と。」


「…わかっている。」


「メイも気をつけなさい。」


「はい。アダム様、お姉様も守ってくださいね?私達お揃いのドレスなんですよ。」


「そうなのか?」


「はい、色違いです!お姉様はゴールドです。」


「そうか。姉上はゴールドでメイはシルバーなのだな。」


「はい。とても綺麗でした!」


「まぁ、メイ程ではないがミリムもメイの次に美しいからな。」


「わかっている…」


たくさんの護衛と殿下達とお兄様達と会場に向かいました。






「お姉様!お母様!」


「まあ!メイ、とても綺麗よ!」


「ふふっ、お姉様もとても綺麗だわ!」


「お母様もとてもお綺麗です!」


「お、揃ったか。」


「お父様!」


「メイ、まるで女神のように美しいな。」


「お父様もジャンお兄様と同じ事を言うのね?」


「ははは。流石は私の息子達だ。」


「父上、それで使節団のほうは?」


「未だに連絡が来ない。」


「何かあったのでしょうか?」


「わからん。先日の不法入国の件もあるし、警戒はしておかないとな。」


「アダム殿下、ラルフ殿下。ミリムとメイのエスコート、しっかりとお願いします。」


「もちろんだ。」


「ミリムも美しい娘だからな。何かあったら…」


「わかっている。必ず守ってみせる。」


殿下達はお父様とお兄様達と険しいお顔で頷きあっていました。


「メイ、とても綺麗だわ。殿下達もそう思うでしょう?」


「私達も美しすぎて驚いたのだ。」


「ミリム嬢も美しいぞ。」


「まあ!ラルフ殿下。私まで褒めてくださるのね。ありがとうございます。」


「ミリム嬢もこの国の美女だからな。」


「あら、アダム殿下も褒めてくださるのですね?ありがとうございます。」


「私達はウソは言わないからな。」


「メイリンとミリム嬢以外に美しいと言ったことはないぞ?」


「そうなのですか?他にもたくさんご令嬢がいらっしゃるのに。」


周囲を見渡すと綺麗な女性はたくさんいました。


不思議…


なぜかしら?


「メイリン、綺麗だと思っても下心が見えると綺麗に見えなくなるんだ。」


「そうなのですね。」


「そうそう。私達も下心にうんざりしたよ。」


「王家が駄目なら公爵家みたいな令嬢が多くてね。」


「そうよね?私もドン引きしてお断りするの大変だったわ。」


「私も断わられたからな。」


「アダム殿下は…断ったかしら?」


「覚えていないのか?相変わらずはっきり言うな。」


「そうは言っても、全部断っていたから誰を断ったか覚えていませんわ?」


「そうだったのですね?じゃあ、断らなかったらずっとお姉様と一緒にいられたのですね。」


「そうね。それを考えると悪くないお話だったのね?」


「全くミリム嬢は…」


「ふふっ。」


「でも、お父様は許さないと思うわ?」


「なぜでしょうか?」


「2人も王家に嫁いでしまっては家が恨まれてしまうもの。」


「恨まれるのですか?」


「ただでさえ、お兄様やアークが殿下達の側近なのよ?全員が王家に関わるなんてあり得ないもの。」


「そうだな。今となっては断られて良かった気がする。」


「父上も陛下の側近だからね。」


「そうでしたのね…残念です。殿下達も兄弟なのですから、姉妹だといいと思ったのですが。」


「もう、メイは考え方まで可愛いわ!」


「それにしても、使節団は一体どういうつもりなのだろうか?」


「そうだな。この前の商人もそうだが、意図が見えない。」


「そうですね、今もまだ連絡が来ていないでしょ?」


「でも、メイは名指しだったとお父様から聞いたわ?」


「そうなのだ。来ないのなら警戒していたのが馬鹿みたいだ。」


「あら。お友達がいたわ!挨拶してくるわね。」


「はい、お姉様。」


「アダム殿下。少しよろしいですかな?」


「コールマン公爵。どうかしたのか?」


「少し殿下を借りていくが、メイを囲んで守っていてくれ。」


「はい、父上。」


「どうしたのでしょうか?」


「さあな?でもあまり良くない事なのは間違いないだろう。」


お父様はアダム殿下を連れて人目のない場所に行ってしまいました。


「もう乾杯はするみたいだな?」


「そのようですね。」


全員にドリンクが配られました。


お酒とソフトドリンクが選べるようです。


「メイリン、念の為に私達の間に。」


「はい、ラルフ様。お姉様が…」


「戻って来たようだ。」


「ごめんなさい。あら?アダム殿下は?」


「先程父上が連れて行ってしまったが…」


少ししてアダム様が戻って来られました。


「アダム様?」


「メイリン、ミリム嬢。私達と腕を組んでおけ。」


「はい。」


お姉様と目を合わせて腕を組みました。


お兄様達と護衛達や周囲の近衛兵達が一気に警戒をしているようです。


「ラルフ様…」


「くっ…大丈夫だ。」


「アークお兄様…」


「私達がいるから安心しなさい。」


「はい…」


なんだかとてもイヤな予感がします。


ラルフ様の腕をぎゅっと掴むと、上からラルフ様の手が重ねられました。


「大丈夫だ。メイリンは私が守ってみせる。」


「はい。」


乾杯をすると急に眠気が…


それに周囲が真っ暗になり、煙が充満していくような…


「メイリン…?」


「ラルフさ…」


ラルフ様の名前を呼び終えないまま意識がなくなりました。


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