予定が変わってしまった悪役令嬢
今、すぐ近くでアダム様とラルフ様、お兄様達がお仕事をされています。
「メイリン、馬に乗せてあげられなくてすまない。」
「いえ、仕方がありませんわ。舞踏会が終わったらお願いします。」
「アダム殿下、仕事を進めてくださいよ。」
「わかっている。」
ふふっ。
お兄様達はお強いのね。
「くっ…メイリンに笑われた。」
「笑われたくなければ仕事をしてください。」
「メイ、つまらないか?」
「はい、やる事がないのでどうやって時間を使おうか考えています。」
「メイリンらしいな。」
「ラルフ殿下。」
「わかっている!」
「メイがいると殿下達も仕事が捗ると思ったんだけど、無理なら私達と隣に移動するか?」
「兄上、それはいい考えだ。」
「ふふっ」
「頼む。仕事するから目の届く所にいてくれ。」
「そうですか?じゃあ、メイ。欲しい本があれば持ってくるよ。」
「ありがとうございます。では、他国の歴史書を。」
「わかった。いくつか見繕って来よう。」
「はい、ありがとうございます。」
「ちょっと図書室に行ってくるから。兄上、ラルフ殿下も見ておいてください。」
「わかった、早めに頼む。」
「ふふっ」
「「くっ…」」
「うふふふふっ」
とても仲良しですね。
羨ましいと思いながらお茶を飲みました。
少しして、アークお兄様が何冊かの本を持って来てくれました。
「さっき父上が来て、例の商人が出国して行ったと聞いた。商人も3人いたそうだ。」
「3人?」
「そうだよ。それも商人と言いながら何も売り買いしていなかったらしい。」
「いかにも怪しいじゃないか。」
「本当ですね?」
なんの為に来たのかしら?
舞踏会の話と私の話を城下で聞いたけど…
「使節団本当に来るのか?」
「一応来ることになっているよ。」
「意図が全く読めないですね。」
「警戒を強めないとだな。」
「はい。」
その後は私は本を読み、殿下達とお兄様達は仕事を続けました。
お仕事の邪魔にならないようにしていました。
しばらくして夕食の時間に。
「メイ、もっとたくさん食べたほうがいいよ。」
「そうですか?」
「もう少し太ったほうがいいかもね。」
「まぁ…細すぎるからな。」
「でも、いつもすぐお腹いっぱいになってしまって…」
「無理強いは良くないな。」
「そうだな。いつもメイのお皿は量が少ないからダイエットかと思っていたよ。」
「ふふっ。ダイエットとか考えたことがないです。」
「そうか。まぁ、その量だと考える必要もないか。」
賑やかな食事はとても楽しいわね。
普段は1人で食事しているから。
「この後もお仕事ですか?」
「もちろんメイがお風呂に入って寝るまではね。」
「大変ですね…」
「もちろん、メイリンが寝る時は部屋に私達は入れないから、女性の近衛兵が来る。」
「眠ってる間もですか?」
「護衛だからね。」
「寝顔を見られるのは恥ずかしいです…」
「「くっ…」」
「殿下達、可愛いって言ってもいいんですよ?メイが可愛いのは事実ですから。」
「そうなのか…」
「メイが可愛いのは当たり前のことですからね。」
「お兄様達は褒め過ぎなのです。」
「仕方がないだろう?事実だからな。」
「そういう事は殿下達に言っては駄目です。」
家族だから良いのであって、殿下達はまだ…
「そういえば、殿下達は普段どんなお仕事をされるのですか?」
「うーん…公共事業の事だったり、納税に関する事だったり色々あるよ。」
「納税も関係するのですか?陛下が行うものかと思っていました。」
「私達は陛下に提出する前に内容を精査するんだ。提出したものを陛下が許可を出したり、采配を振るったりして指示に従って行動するんだ。」
「そこまで役割があるのですか…」
それはお忙しい…
もう少し軽いものを数をこなしているとばかり思っていました。
「特に兄上は視察が多い。私はまだ成人したばかりだから、視察はまだやっていないのだ。」
「そうでしたか。そんなにお忙しいのに、私なんかの為に仕事を増やして頂いて申し訳ありません。」
「メイが謝る事はない。どちらかの妃になるんだから当然だよ。」
「そうだな。私達はメイリンを妃にするのだ。自分の妻を守るのは当たり前の事だ。」
「妻…」
改めて言われると照れくさいですね。
「まだ婚約してないですからね。」
「わかっている。」
「使節団は何を目的としているのでしょう…?新聞の記事が全て正しいわけではないと思うのです。」
記事の内容をどこまで信用していいのかしら?
「そうだな。新聞記者にどこから情報を得ていたかを問いただす必要がある。」
記者がどこから情報をもらっていたのか、
どこかで聞いたのか、
確認に行ってから掲載したのかも聞かなくてはいけないでしょうね。
あとは、どこまでその話が知られているかどうか…?
識字率はそんなに高くないから全ての人間が新聞を読んでいるはずがないわ。
「メイ、何か気になった事があるなら話してごらん?」
私の気になった事をはなしてみました。
「確かに…」
「すぐに父上に報告を。」
こんな風にお仕事をしていたのね?
「メイリン様。そろそろ入浴を。」
「わかりました。アークお兄様、ジャンお兄様、ラルフ様、アダム様失礼いたします。」
「あ、メイ。護衛を呼ぶから。」
「すぐ隣のお部屋のお風呂ですが…?」
「それでも入浴中に何かあったら困る。」
「「入浴…」」
「殿下達、やましい事を考えないでくださいね。」
少しして、女性の護衛が来て入浴に。
「メイリン様、今日は残念でしたね?」
「え?あ、馬に乗れなかったのは残念だわ。でも、舞踏会が終わったら乗せていただけるから大丈夫。」
「そうでしたか。少し楽しみが先に伸びただけですものね?」
「えぇ。楽しみにしていることが長く続くのだからいいのよ。」
「でも、眠っている間も護衛がついているのは落ち着きませんね。」
「そうね。でも私の為にしてくださっているのだから、我慢出来るわ。」
女性の護衛は廊下に1人。
室内の窓際とドアの前に1人ずつ。
続き部屋の扉の前に1人。
合計4人。
侍女が1人だけ部屋に残る事になっています。
入浴をして寝支度をしていた所、
続き部屋の扉のほうから声が聞こえてきました。
「アークお兄様、ジャンお兄様。どうかされたのですか?」
「いや、気にしないでくれ。殿下達に仕事を早く終わらせるように言っているだけだよ。」
「そうでしたか。どうかお仕事を無理なさらないでくださいね。」
「あぁ、大丈夫だよ。それより入浴が済んだのなら湯冷めしないうちにおやすみ?」
「はい。では皆様、おやすみなさい。」
「おやすみ。」
落ち着かないのか、なかなか眠れない…
「メイリン様。眠れないのでしたらホットミルクでもいかがですか?」
「ありがとう。いただくわ。」
侍女がホットミルクを用意する為に部屋を出ていきました。
護衛の女性達は緊張しているようでほぼ固まっているように見えます。
「皆さん、そんなに緊張しなくていいですよ?私の護衛だからと言っても難しい事はありませんから。」
「お気遣いありがとうございます。護衛なんか初めてで…」
「女性は護衛の仕事はしないのですか?」
「力負けしてしまうので…」
「そうでしたか。私は自衛の為に剣術も体術も習いましたから、本当は強いのですよ!」
「ご令嬢なのにですか?」
「私が少し特殊なのです。小さい頃からずっと屋敷と王宮以外は外に行けなかったので、時間潰しに色々と習っていたのよ。」
「意外です。公爵令嬢となるともっとお高い…」
「ふふっ、私の事を知る人は少ないのです。お茶会やパーティは学院に入るまで片手で数えるくらいしか参加しませんでしたから。」
「随分と窮屈な生活だったのですね?」
「いいえ。屋敷の中で自由だったので好きな事を学ぶ機会も多かったわ。」
少しずつ緊張が和らいできたようですね。
「メイリン様、お待たせしました。」
「ありがとう。」
「護衛の方と何をお話していたのですか?」
「ふふっ、緊張しなくていいですよってお話していたの。」
「そうでしたか。男性の護衛達とはあまりお話にならないのに珍しいですね。」
「そうなのですか?」
「お話は色々な方としたいですが、男性とはあまり…」
「メイリン様を好きになってしまうので極力お話にならないのですよね?」
「そんな理由で話さないわけではないのよ?」
色々と護衛の女性達と男女差別のお話や、
普段の勤務に関してのお話、
訓練のお話などを聞いていました。
私は前世でも人付き合いがなかったので、
男女差別を感じたことはありません。
でも、貴族社会はもちろん平民でも差別を受ける事は多いそうです。
お父様にお願いして普段からお話が出来る女性の護衛を増やしてもらおうと思います。
その後も眠くなるまでお話をしていました。
「メイリン様。そろそろ眠れそうですね?」
「ふふっ、皆さんとたくさんお話出来たからかしら?それでは皆さん、おやすみなさいませ。」
おかげで安心して眠れました。