お茶会のリベンジをする悪役令嬢
自分から誘うのは初めての事です。
ラルフ様はどう思ったかしら…
「メイリン様、今日は今までで一番美しいですよ。」
「ありがとう。」
支度を終えてラルフ様が来てくださるのを待っています。
「変じゃないかしら?赤いドレスなんて着たことがないから…」
「大丈夫です!本当に今までで一番美しいと思います!」
「そう…かしら?」
「はい!自信持ってください。」
「メイリン様、ラルフ殿下がお見えになりました。」
「すぐに行きます!」
昼食後にラルフ様が迎えに来てくださいました。
ラルフ様は目を大きく開けて少し固まってしまいました。
「ラルフ様ごきげんよう。今日は急に申し訳ありません。」
似合わないかしら?
赤なんて着たことがなかったものね…
「いや、いい。私は毎日でも貴方に会いたい…」
ラルフ様はさらっとお気持ちを話してくださるので、
いつも少し照れてしまいます。
「…ありがとうございます。」
「今日は随分とお洒落をしているな?」
「はい…昨日の仕切り直しなので。変ですか?」
「変ではないが、今までの中で最も美しいから驚いたのだ。」
「そうですか…」
また少し心拍数が上がりました。
「では、行こうか?」
手を差し出してくださったので手を重ねました。
『美しすぎる…』
『その上愛らしいなど…』
『殿下が羨ましい』
『あのような姿だとまた狙われるな?』
「うるさいぞ?」
「ふふっ」
護衛や近衛兵達の声が聞こえるのですが…
思わず苦笑いをしてしまいました。
テラスについてハーブティーを用意してもらいました。
昨日は途中で取り乱してしまったので、ハーブティーで落ち着こうと用意してもらったのです。
「このお茶はとてもリラックス効果があるのでよく飲むのです。」
「そうか…」
あまりハーブティーは好きではないのかしら?
なんだか顔が赤くなっていたので少しだけからかってみました。
「ラルフ様、なんだか顔が赤いですよ?」
「あー…からかってるだろう?」
「ふふっ、でも本当ですよ。」
「だが、なぜ急にお茶に誘ったのだ?」
昨日の謝罪と本音を話させていただこうと思ったのです。
呆れていないかしら?
「昨日はなぜか涙が出てしまってもう少しお話をしたくなったのです。」
「また誘って欲しいという手紙の後に、4日以内にお茶をしたいと手紙が来て驚いたぞ?」
「お忙しいのに我儘を言って申し訳ありません。」
「いや、誘ってもらえたのは嬉しい。私は時間があれば会いたいと…思っている。」
良かった…
呆れられたりしていなかった…
「昨日は話たらなかった気がして…」
「私はもっと一緒にいたかったな、と思っていた。」
「とても…嬉しいです。」
「兄上と4日後に約束をしていると言っていたが?」
「はい…馬に乗せてほしいとお願いしました。」
「メイリンからか?」
「はい。」
「なぜ急に誘ったのか聞いてもいいだろうか?」
「最近心拍数が上がるのです。ラルフ様といる時も、アダム様といる時も…」
「だから心拍数が上がる時がどんな時かを知りたいのです…」
きっと知らなくてはいけません。
私自身の事ですから…
「なぜ兄上は馬に誘ったのだ?」
「初めてデートをした時と気持ちがどう変わったかを知りたいからですね…」
「そうか…」
「なので、ラルフ様にもう一度お花畑に連れて行って欲しいです…駄目ですか?」
最初のデート場所で今の気持ちとどう違うのかを確認すれば、
心拍数の謎が解ける気がするのです。
「私は喜んで連れて行こう。いつがいいだろうか?」
喜んで…やはりラルフ様はとても優しい方…
「ラルフ様はいつならいいでしょうか?私は基本的に時間がたくさんあるのでいつでも…」
「そうか。では5日後ではどうだろうか?」
「わかりました。」
「そういえば、舞踏会まであと10日だな。準備は出来ているのか?」
「はい。舞踏会用に新調しましたし問題ありません。」
「そうか。なんだかたかが使節団だというのに大袈裟な舞踏会だな。」
「そうですね。情勢を考えると使節団を送り込む意図がわかりません。」
「あぁ、父上がコールマン公爵と相談していたな。」
「はい。美女を集めての舞踏会をして欲しいというお願いされるのはおかしいですから。」
「そうだな。メイリンはしっかりと護衛の配置をすると聞いた。」
「お父様が、私だけ名指しで怪しいと…」
なぜ私の名前を知っているのかしら?
それになんの為に…?
今回は他国相手だから謎が多い。
「今度こそ、必ず守ってみせる。」
「はい、お願いします。」
頼もしい限りだわ。
お父様やお兄様達、殿下達がいるのだから安心できます
「そういえば、昨日のうさぎや小鳥はどうしたのだ?」
「それは私にもわかりません。今までこのような事はなかったので驚きました。」
今までこんな事はありませんでした。
ラルフ様とうさぎさん達…
ミスマッチだけど、とても素晴らしい光景だと思いました。
「メイリンの危機だと思ったのだろうか?」
「ふふっ、まるで小さな護衛さんですね。」
「それはいいな。護衛は多いに越したことはないからな。」
「それはラルフ様達では難しいということですか?」
「そんなわけがあるか。メイリンを守る為に我々は毎日訓練しているのだからな。」
私を守る為に…
「ありがとう…ございます。」
「メイリン、うさぎが来たぞ!?」
「あ、うさぎさん!またラルフ様に会いに来たのね。」
うさぎさん達がラルフ様に懐いたのはなぜかしら?
とても可愛らしくて思わず可愛いと言ってしまいましたわ。
「メイリン、急に懐いた理由はなんなのだ?」
「それがわからなくて…」
「まぁ、理由はわからないが懐かれるのは悪い気はしないな。」
「ふふっ」
「くっ…」
ふふっ、また口癖が…
「ラルフ様?」
「気にしないでくれ。ただ…」
「ただ?」
「いや、メイリンの顔が赤くなるからやめておこう。」
「…そうですか…」
「そういえば欲情の意味は調べたのか?」
急にその話をされて驚きました。
その後に辞書で調べて赤面した事は秘密にしておきましょう。
「アダム様から聞いたのですね?」
「フェアにいこうと約束したからな。」
「そうでしたか…意味は調べました。」
「そうか。」
「ラルフ様?どうかされましたか?」
「あー…すまない。見惚れていただけだ。」
「あの…」
「どうした?」
気になっていたことがあります。
アダム様は口説かれているとわかるけれど…
「実は私…」
「お2人とも口説くと仰っていたのですが、最近アダム様は口説くのにラルフ様は…」
「メイリンは…あまりガツガツされるのは苦手だろう?」
「そうですね、怖いです。」
「私達も怖かったのか?」
「いえ。お2人は大丈夫でした。」
それを気にしてくださってくれていたのね…
「口説かれるのは嫌な気持ちにならないか?」
「嫌な気持ちになった事はありません。」
「ではちゃんと口説くとしよう。」
「ちゃんと?ですか?」
「メイリンは私が口説いていないと思ったのだろう?」
「違いましたか?」
「あまりガッツリ口説くとイヤだと思ったのだ。」
「そうでしたか…」
「メイリンは異性との交流どころか同性の交流も殆どないだろう?」
「そうですね…」
「だから控えめにアプローチをしていた。」
「ありがとうございます…」
「ラルフ様?」
急にラルフ様が黙り込んでしまいました。。
「すまない。メイリンの事を考えていた。」
「私が目の前にいるのに私の事を?」
目の前の本人を考えるのはどうかと思いますが…
「まぁ、そうなのだが…」
ラルフ様は少し照れくさそうにしていたので、
釣られて笑顔になっていました。
「では、遠慮せずに口説いていこう。」
「えっ?」
「メイリンが言ったのだろう?」
急に口説くと言われて驚きました。
私が口説かれたいみたい…
「はい…」
「では、兄上のような口説き方がいいか?」
「それはちょっと…」
「そうか。では褒めまくるか?」
「それではいつもです…」
「そうか?」
「はい。」
「それなら、少し考えてみようか。」
「え…」
「メイリンは焦っていても可愛らしいな。」
「ありがとうございます…」
「では、そろそろメイリンの口説き方を考えなければな?」
「ラルフ様、それを私に言われても…」
私にどうしろと言うのかしら?
「あはは。そうだな。じゃあ、花畑の話でもするか?」
「はい。」
その後は花畑の話とか、
うさぎ達を愛でたりと穏やかなひとときを過ごせました。
「ラルフ様、今日はありがとうございます。とても楽しかったです!」
「私も楽しかった。何よりメイリンと一緒だったのだ。それだけでいい。」
これも口説いているのかしら?
顔が赤くなりました。
「ラルフ様?」
「メイリン…やはり今までで一番美しい。」
「え…」
「これからはしっかりと口説く、覚悟をしておいてくれ?」
「わ、わかりましたっ」
穏やかな顔つきが少し変わりました。
男らしい?
男らしいってどういうことなのかしら?
「あはは、では送ろう。」
「ありがとうございます…」
離宮まで送っていただいて背中を向けられた時に、
なんだか恥ずかしい事を話した気になりました。
でも…
今日は知りたかった事が少し知れました。
数日後にアダム様とラルフ様に会ったらもっとわかると思っています。