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仕切り直しのお茶をする事になった第二王子

【第二王子 ラルフ】


執務室でメイリンの2通目の手紙を読んで、


すぐにお茶会のやり直しをしたいと書いてあった。


初めてだ。


メイリンが4日後に兄上と出かける前に会いたいという。


なぜだ?


一通目は謝罪を含めてまた誘って欲しいと書いてあった。


でも、先ほどの手紙はそうではないのだ。


メイリンが…


兄上より先に会いたい…


私のほうが好感度が高いという事なのか?


それとも兄上より先に会って結論を出した事を伝えたいのだろうか?


「アーク。どういうことだろうか?」


「知りませんよ。言っておきますけど、早く仕事を終わらせないと中止にしますからね。」


「…冷たいな、未来の兄上は。」


「やめてくれ、その言い方は。切なくなる…」


「アーク、今のは無礼だが?」


「あー…すいません。メイリンの事なんで、水に流しておいてください。」


「はぁ…メイリンは何を考えて会いたいというのだ?」


「とりあえず、落ち込まないために最悪を想定して行くのがいいのでは?」


「そうだな…仕事が出来なくなりそうだ。」


「あー…そうでしょうね。とりあえず、最速で仕事をお願いします。」


メイリンはこんなにわかりにくいのに、兄はなぜこんなにわかりやすいのだろうか。


最悪を想定して…か。


覚悟をするとしよう。


とにかく、明日は時間をとるために明日の分まで仕事を進めよう。


その後は悶々としながら黙々と仕事をした。




翌日、昼食後に離宮に向かった。


思わず息を飲んだ。


姿を見せたメイリンは今まで見た中で最も美しかった。


落ち着いた赤のドレスで、


髪型もアップにしていてうなじが色気があって、


ほんの少しだけツヤツヤの唇で、


露出が少し多めで、


ため息が溢れてしまう程に美しい…


私に会うために?


少し勘違いをしてもいいだろうか?


「ラルフ様ごきげんよう。今日は急に申し訳ありません。」


「いや、いい。私は毎日でも貴方に会いたい…」


思わず本音が出て口を押さえる。


「…ありがとうございます。」


「今日は随分とお洒落をしているな?」


「はい…昨日の仕切り直しなので。変ですか?」


眉を下げながら首を傾ける。


「変ではないが、今までの中で最も美しいから驚いたのだ。」


「そうですか…」


わかりやすく頬がピンク色に染まる。


なんだ、この反応は…?


本当に勘違いしてしまう…


「では、行こうか?」


そう言って手を差し出すとすんなりと手を取った。


これはヤバいな…


『美しすぎる…』


『その上愛らしいなど…』


『殿下が羨ましい』


『あのような姿だとまた狙われるな?』


「うるさいぞ?」


「ふふっ」


メイリンは苦笑いをしていた。


テラスについて落ち着くハーブティーというお茶が用意された。


「このお茶はとてもリラックス効果があるのでよく飲むのです。」


「そうか…」


「ラルフ様、なんだか顔が赤いですよ?」


「あー…からかってるだろう?」


「ふふっ、でも本当ですよ。」


「だが、なぜ急にお茶に誘ったのだ?」


メイリンが頬をピンク色に染めて、目を伏せた。


こんな顔は見たことがない。


期待していいのだろうか?


「昨日はなぜか涙が出てしまってもう少しお話をしたくなったのです。」


「また誘って欲しいという手紙の後に、4日以内にお茶をしたいと手紙が来て驚いたぞ?」


「お忙しいのに我儘を言って申し訳ありません。」


「いや、誘ってもらえたのは嬉しい。私は時間があれば会いたいと…思っている。」


ここまでならセーフだろう。


あんまり攻めて昨日のように泣いてしまったら…


「昨日は話たらなかった気がして…」


やっぱり少し期待してしまうな。


「私はもっと一緒にいたかったな、と思っていた。」


「とても…嬉しいです。」


恋しいと思ってくれていたら嬉しいのだが…


「兄上と4日後に約束をしていると言っていたが?」


「はい…馬に乗せてほしいとお願いしました。」


「メイリンからか?」


「はい。」


兄上もメイリンから誘われたということか…


「なぜ急に誘ったのか聞いてもいいだろうか?」


「最近心拍数が上がるのです。ラルフ様といる時も、アダム様といる時も…」


それは…


メイリンが私達に異性としてかなり好意を持ってくれたのではないだろうか?


「だから心拍数が上がる時がどんな時かを知りたいのです…」


やっぱり…


まだ決められないが、


決め手を知りたいということだろうな。


「なぜ兄上は馬に誘ったのだ?」


「初めてデートをした時と気持ちがどう変わったかを知りたいからですね…」


「そうか…」


「なので、ラルフ様にもう一度お花畑に連れて行って欲しいです…駄目ですか?」


またあの場所へ?


また誘ってくれた…?


「私は喜んで連れて行こう。いつがいいだろうか?」


「ラルフ様はいつならいいでしょうか?私は基本的に時間がたくさんあるのでいつでも…」


「そうか。では5日後ではどうだろうか?」


「わかりました。」


「そういえば、舞踏会まであと10日だな。準備は出来ているのか?」


「はい。舞踏会用に新調しましたし問題ありません。」


「そうか。なんだかたかが使節団だというのに大袈裟な舞踏会だな。」


「そうですね。情勢を考えると使節団を送り込む意図がわかりません。」


「あぁ、父上がコールマン公爵と相談していたな。」


「はい。美女を集めての舞踏会をして欲しいというお願いされるのはおかしいですから。」


「そうだな。メイリンはしっかりと護衛の配置をすると聞いた。」


「お父様が、私だけ名指しで怪しいと…」


なぜメイリンだけが名指しされているのか…


そもそもメイリンの名前をどこで聞きつけたのか?


今回は他国相手だから謎が多い。


「今度こそ、必ず守ってみせる。」


「はい、お願いします。」


メイリンに何かされないように、しっかりとついていないと。


「そういえば、昨日のうさぎや小鳥はどうしたのだ?」


今まで触らせてくれなかったのに、昨日はかなり触らせてくれたのだ。


バイオリンも弾いていなかったというのに…?


「それは私にもわかりません。今までこのような事はなかったので驚きました。」


「メイリンの危機だと思ったのだろうか?」


「ふふっ、まるで小さな護衛さんですね。」


「それはいいな。護衛は多いに越したことはないからな。」


「それはラルフ様達では難しいということですか?」


「そんなわけがあるか。メイリンを守る為に我々は毎日訓練しているのだからな。」


メイリンは目を大きく見開いた。


どうやらそんな事をしていると知らなかったらしい。


まぁ、わざわざ話すことではないからな。


「ありがとう…ございます。」


嬉しそうに礼を言われた。


少しずつ好意がわかりやすくなってきた。


それは一緒にいる時間が長くなって来たからだろうか?


「メイリン、うさぎが来たぞ!?」


「あ、うさぎさん!またラルフ様に会いに来たのね。」


うさぎが私の膝の上に…


どうしたというのだ?


「メイリン、急に懐いた理由はなんなのだ?」


「それがわからなくて…」


メイリンにもわからないのか…


「まぁ、理由はわからないが懐かれるのは悪い気はしないな。」


「ふふっ」


「くっ…」


あまりにも見た目と笑顔のギャップにやられた。


「ラルフ様?」


「気にしないでくれ。ただ…」


「ただ?」


「いや、メイリンの顔が赤くなるからやめておこう。」


「…そうですか…」


そういえば…兄上が欲情していると伝えてしまったらしい。


「そういえば欲情の意味は調べたのか?」


「アダム様から聞いたのですね?」


「フェアにいこうと約束したからな。」


「そうでしたか…意味は調べました。」


「そうか。」


私も欲情していると聞いたら関係は変わるだろうか?


いや…まだ言えない。


少なくとも、舞踏会が無事に終わるまでは。


なんとしてもメイリンを守る。


明らかにメイリンが狙われているのだから…


「ラルフ様?どうかされましたか?」


「あー…すまない。見惚れていただけだ。」


「あの…」


「どうした?」


「実は私…」


なんだ?


すごく言いにくそうだが…


もしかして?


やはり兄上に決めるのか?


「お2人とも口説くと仰っていたのですが、最近アダム様は口説くのにラルフ様は…」


あー…


兄上はストレート過ぎるからわかるけど、


私は美しい、綺麗だ、愛らしいと言って手を差し出す事くらいしかしていない。


「メイリンは…あまりガツガツされるのは苦手だろう?」


「そうですね、怖いです。」


積極的に来られると怖いのか…


「私達も怖かったのか?」


「いえ。お2人は大丈夫でした。」


よしっ


「口説かれるのは嫌な気持ちにならないか?」


「嫌な気持ちになった事はありません。」


よしっ


「ではちゃんと口説くとしよう。」


「ちゃんと?ですか?」


「メイリンは私が口説いていないと思ったのだろう?」


「違いましたか?」


「あまりガッツリ口説くとイヤだと思ったのだ。」


「そうでしたか…」


「メイリンは異性との交流どころか同性の交流も殆どないだろう?」


「そうですね…」


「だから控えめにアプローチをしていた。」


「ありがとうございます…」


はにかんでいる…


可愛らしいな。


どうしてもメイリンを婚約者にしたい。


学院でのメイリンによくドキドキしていた。


学院に入ってきた時にはもうメイリンが完全に好きになっていた。


だからこそ、少し遠慮していた。


「ラルフ様?」


「すまない。メイリンの事を考えていた。」


「私が目の前にいるのに私の事を?」


「まぁ、そうなのだが…」


いかんな。


メイリンを想うあまりに…


「では、遠慮せずに口説いていこう。」


「えっ?」


「メイリンが言ったのだろう?」


「はい…」


「では、兄上のような口説き方がいいか?」


「それはちょっと…」


「そうか。では褒めまくるか?」


「それではいつもです…」


「そうか?」


「はい。」


「それなら、少し考えてみようか。」


「え…」


「メイリンは焦っていても可愛らしいな。」


「ありがとうございます…」


「では、そろそろメイリンの口説き方を考えなければな?」


「ラルフ様、それを私に言われても…」


「あはは。そうだな。じゃあ、花畑の話でもするか?」


「はい。」


その後は花畑の場所についての話とか、


うさぎ達を愛でたり他愛のない会話を楽しんだ。


「ラルフ様、今日はありがとうございます。とても楽しかったです!」


花畑の時のような屈托のない笑顔だ。


「私も楽しかった。何よりメイリンと一緒だったのだ。それだけでいい。」


メイリンの手をとって少しだけ近づいてみた。


目を大きく開けて、


顔を赤くした。


これは…勘違いではないかもしれない。


「ラルフ様?」


こんなに目が潤んで…


普通にしてても魅力的なのだが、


こんな顔をされたら卒倒するかもしれないな。


「メイリン…やはり今までで一番美しい。」


「え…」


「これからはしっかりと口説く、覚悟をしておいてくれ?」


「わ、わかりましたっ」


「あはは、では送ろう。」


「ありがとうございます…」


帰りのメイリンは伏し目がちで、


横顔も美しかった。


送り届けて、残りの仕事をする為に執務室に向かった。


「殿下!仕事が増えたので早く仕事してください。」


「あぁ、わかった。」


今は気分がいい。


早く仕事を済ませて、口説き方を考えなければ。


「なんだか機嫌がいいですね?」


「まあな。」


「メイリン嬢のことだろうな?」


「それ以外ないだろうけど。」


「お前達煩いぞ。」


1日の最後にメイリンがいたら、


きっと疲れなんて吹き飛んでしまうだろうな。


「殿下。何にやけてるんですか?」


「いや、別になんでもない。」


「どうせメイの事でしょう?最悪の事態じゃなかったなら仕事をしっかりやってくださいよ。」


「わかっている。次の約束までに仕事を終わらせないとならないからな。」


「次の約束したんですか?」


「まあな。それより仕事するぞ。」


早く帰らないとな。

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