お母様とお姉様とお洒落談議をする事になった悪役令嬢
ふふふ。
今日はお母様とお姉様が来て舞踏会用のドレスの仕立てをします。
久しぶりに会えるのです。
使節団の件はお父様とお兄様達にお任せしました。
私が調べた情報は新聞の記事ですが、お父様達が調べるともっと詳細がわかるかもしれません。
お姉様とお母様は使節団の細かいお話を知っているのかしら?
もし、知らなかったとすればお父様達があえて教えてない可能性が高いわね。
まだ謎が多いから、警戒しなければ…
以前も内通者がいたというし、
今知らない人がいたならしっかりと見極めなければならないわ。
もう以前のようにご迷惑とご心配をかけないようにしなくては。
私も少しは成長しているのです。
たぶん…
まだ離宮からはなかなか出られないけれど、
先日ラルフ様が連れ出してくれたから少しは気が晴れました。
ラルフ様はいつも、私の気持ちを理解しようとしてくれます。
アダム様は、とても真面目で心配症で頼もしい感じがします。
どちらも、少しずつわかってきました。
お姫様のように扱ってくれるのでそわそわしてしまうけれど、
それがどちらを選ぶというところになっていません。
ドキドキとそわそわが殿下達と同じようになってはいないと思うので、
あと少しだけ待ってもらいたいです。
心拍数が上がる事がドキドキで、原因が意識しているという事を知りました。
殿下達はまた違う感情なのはわかってきました。
顔が赤くなる時は違うようです。
あと3週間で舞踏会ですが、それまでに決められれば婚約者として紹介されるそうです。
決められるかどうかはわかりませんが、
私の気持ちが少し前に進んでいるのは確かです。
あと4ヶ月を切りました。
私の気持ちが前に進んだ事は殿下達も気づいているみたいです。
お兄様達は殿下達の側近だから、聞いているかもしれません。
相談が出来ないから、自分と殿下達とで話をしながら早く決めなければ…
そうでなければ、ただの悪女で悪役令嬢のような人間になってしまうのではないかと思ってしまいます。
私は神様と悪役令嬢ではなく、
幸せになる為に転生したのです。
家族にはとても愛されていますし、幸せを感じています。
周囲の方々にも大事にされているので幸せです。
「メイリン様。お母様とお姉様と仕立屋がお見えになりましたよ。」
「えっ、はい。すぐ行きます!」
いけない。
考え事で時間を忘れていたわ。
すぐに客室に向かいました。
「お母様!お姉様!」
「あらあら。そんなに急がなくても良かったのに。」
「メイ、とっても会いたかったわ!」
「私もとっても会いたかったです!」
「ふふっ。メイはこんなに寂しがりやさんだったかしら?」
「ずっとお会い出来なかったのですもの。」
「あら、私は寂しがりやのメイだって嬉しいですわ。」
「私も嬉しいわよ?でも、こんなに感情のままに喜ぶなんて思わなかったから。」
「あ。はしたなかったですね。申し訳ありません。」
「大丈夫よ。私なんてしょっちゅう貴族らしくしなさいって言われてしまうもの。」
「ミリムは顔に出てしまうのだから気にしてちょうだい?」
「ふふっ。お母様、お姉様。ごきげんよう。」
「ご挨拶を忘れていたわね?ごきげんよう。」
「舞踏会に一緒に行けるなんて嬉しいわ!」
「はい、お姉様とご一緒する舞踏会は初めてです。」
「ドレスはどんなのがいい?」
「私はお姉様が選んでからにします。」
「メイも好きなドレスにしていいのよ?」
「私はあまりドレスに興味がないので…」
「そうだったかしら?」
「屋敷にいた時は着飾らなかったもの。お茶会やパーティとか外出の時だけだったわ。」
「そういえば…ミリムのお下がりを着てなかった?」
「普段着るものだからよ?」
「メイに仕立てましょう、と言っても必要がないからって。」
「はい。特に出かける事もなかったので、お姉様が似合うドレスを選んで譲ってくれていましたから。」
「こちらではちゃんと仕立ててるの?」
「殿下達が月に何度か贈ってくれます。」
「まあ!ダメじゃない!」
「そうでしょうか?贈っていただいたらすぐに着ていますし、新しくいただいたら前のドレスは普段に着ていますよ?」
「メイは選んでいないのね?」
「はい。選んだ事がないので難しいのです。」
「それは…私達の責任ね…」
「そうですね…では今日徹底的に選び方をレクチャーしなくちゃいけませんね。」
「そうね。メイ、ちゃんと覚えるのよ?」
「はい。」
仕立屋さんがたくさんのドレスと色見本や布地見本を出してくれました。
これは…
「今の流行りはこの形とこの形。メイはあまりナイトドレスは持ってなかったわね?」
「はい、念の為に2着持っています。」
「2着しかないですって!?」
「あなた、メイのドレスを持ってきてちょうだい。殿下達の贈り物以外よ!」
「かしこまりました!」
「そんなに気にしなくてもいいと思うのですが…」
「いいえ、ダメよ!これから先に妃になるのだから、ちゃんと選べるようにならなくては!」
「お母様…」
「お母様の言う通りよ?今は殿下達が贈ってくれるけど、妃になったら自分で選ぶのだから。」
「わかりました…」
振り返ってみたら、侍女達が楽しそうでした。
そういえば、いつも私を着飾っては喜んでいたわね。
楽しそうで何よりです。
「メイ、こちらとこちらはどうかしら?」
「え…右かしら…」
「なぜ?」
「そうですね…こちらのほうが派手じゃないからです。」
「そうね。公務じゃなければだけど、公務の時は派手さが必要な時もあるわ。」
「必要な時ですか?」
「そうよ?例えば祝いの席だったり、大勢の前に出る時はこういう派手な物がいいわ。」
「メイは私と違って似合わないものがないけど、妃になったら大人っぽい物を選ぶのよ。」
「はい。」
「じゃあ、これはどちらが大人っぽいかしら?」
「…こちらのほうがすっきりとしていて大人っぽいかと思います。」
「ミリムお嬢様お持ちしました。」
「ありがとう。」
「メイ。離宮に来てから仕立てた?」
「いえ、特に必要がなかったから仕立てませんでした。」
「なぜ必要なかったの?」
「離宮から1歩も出なかったもの。」
「1歩も出なかったの?」
「はい。殿下達も殆ど来ませんでしたし。」
「だから今でも決まらないのね?」
「私も悪いのです。恋愛というものが理解出来なかったから…」
「そう。でも、殿下達の責任ね。」
「なぜでしょうか?」
責任があるわけないのに…
「それは、メイに結婚を申出を殿下達が同時にしたのよ?まだ10歳くらいだったかしら?」
「そうよ、メイ。お父様が12歳で学院に入学するまでアプローチする事は認めないって。」
「そうでしたか…でも、それと責任が結びつきません。」
「学院に入学して落ち着くまでは、アプローチは認めないけどダニエルが許可したのよ?」
「お父様から許可が出て、離宮に入ってから全く行動しなかったのなら責任は殿下達にあるわ。」
「全くでは…」
「出かける事もなく、離宮に籠もっていたのなら確かに必要なかったでしょうね。」
「屋敷にいた頃と場所が変わっただけで同じような生活でした。」
「そうなのね。それなら、殿下達の努力が足りなかったのよ?」
「今はお茶をしたり、時々外に連れ出していただいているわ。」
「それなら、メイも努力が必要ね?」
「私も努力するのですか?」
「メイがどちらかを選ぶための努力をしなくては。」
「選ぶ為の努力…」
「難しいことをしなくてもいいの。例えばメイがお茶に誘ったり、行きたい場所に連れて行ってとおねだりしたりね。」
「それが努力ですか?」
「だってメイは誰かとやりたい事を考えたりしないでしょう?」
「自分の時間を過ごす事は考えられるけど、他人と過ごすのは考えた事はないです。」
「どうして?」
「何処かに行きたいと思ってはいましたが、外を知らないから具体的に考える必要がなかったので。」
「まぁ、それはそれとして。ドレスの仕立てを進めましょう。」
「はい。」
「メイのドレスは淡い色が多いから、赤とか青とかはどうかしら?」
「派手な色は目立ちませんか?」
「あら、メイは濃い色は嫌い?」
「いえ、好きですけど派手に目立つと良くないと思っていたのです。」
「そうね、でも似合わないわけではないでしょ?」
「そうでしょうか…?大丈夫ですか?」
自分にあてて鏡を見てみました。
デザイン次第かしら?
「素敵じゃない。デイドレスとナイトドレス両方仕立てましょう?」
「そうよね?そもそもメイの予算が減ってないってダニエルが言っていたもの。」
「そうなのですか?殿下達がプレゼントしてくれているので気にした事がありませんでした。」
「ダメよ、それじゃ。そうね…デイドレスを6着とナイトドレスを4着は仕立てなさい。」
「そんなに必要かしら?」
侍女達を見ると、目がキラキラしていました。
みんなのやる気にも繋がるのね…
結局、デイドレスは赤と青と紫色で少し大人っぽいデザインのもの。
薄い青と薄い紫色のドレスの6着。
ナイトドレスは赤と紫色とゴールドの少し大人っぽくて露出の多めのものと赤と青のレースが使われたものの5着。
殿下達やお父様、お兄様達はなんていうかしら?
来週には出来るみたいです。
13歳の私には大人っぽすぎると思うのだけれど…?
「メイ。もう帰らなくてはならないけれど、ちゃんとお洒落についても学ぶのよ?」
「わかりました。」
「ちゃんと殿下達それぞれと話をしなさいね。」
「はい。」
「時間があるなら、またバイオリンを聞きたいからお茶に誘ってね。」
「はい、ご迷惑でなければ。」
「メイの事で迷惑に思う事など何もないわ。」
「ふふっ、ありがとうございます。」
半日も仕立てをしていたのね…
お母様とお姉様はドレスを仕立てた事で満足したようで、
とても嬉しそうに帰っていかれました。
お洒落って正解がわからないから難しいわね。
すごく疲れました。
あんなにたくさんのドレス…
着る機会はあるのかしら?
「本当に似合うのかしら…」
「以前からドレスの色は強めのお色も似合うとお伝えしたではありませんか。」
「それに色々なドレスを着るメイリン様を着飾る事が私達の喜びです。」
「大袈裟だと思うわよ?」
「真実です!」
その後はしばらく興奮した侍女達に説得されました。
今日は疲れたから早めに就寝しようと思います。
只今、絶賛引越準備中です。
ついでに断捨離をしているので時間がかかります。
お金があれば全部捨てて必要な物を買うほうがラク…
疲れました。