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フライングをしそうになった第二王子

【第二王子 ラルフ】



今日はメイリンとお茶をする約束にだ。


離宮へついてメイリンを呼んでもらう。


この間恋バナをしてから暇があるとメイリンの事を考えてしまう。


こうして待っている間にもメイリンの姿を思い出してしまう。


メイリンを好きになってしまった者がいたが、


彼らは同じだったのだろうか?


もちろん、私は彼らのように異常な行動はしていないが…


メイリンの事を考えていたら、


彼女が支度を終えてやって来た。


私が贈ったドレスを着てくれていた。


「ごきげんよう、ラルフ様。」


「あぁ。…メイリンは何を着てもよく似合うな。」


「ありがとうございます。」


何を着ても似合うに決まっているのだが、


自分が贈ったドレスを着てデートに行くのはやはり嬉しいものだ。


「今日は許可をとったから馬に乗ろう。」


「馬?」


「気に入ったようだったからな。」


前に兄上の馬に乗ったと聞いた。


馬に乗せるということは、メイリンを自分の手で支える事が出来るのだ。


兄上が、メイリンは馬の高さに驚いたようでしがみつく姿が可愛かったと言っていた。


「それで近衛兵の方達がこんなに…」


「どうにか外に連れ出したかったのだ。でも護衛と近衛兵の数を増やさなければ許可を出さないと言われた。」


「ありがとうございます。とても嬉しいです!」


よっぽど外出が嬉しかったのか、馬に乗れるのが嬉しいのかはわからない。


だが心から喜んでいるから良しとしよう。


馬の事か外出の事を考えているのか、


すごく嬉しそうに微笑んでいた。


無邪気に笑うメイリンは珍しい。


最近は気を許してくれたのか色々な表情が見られて、


つい、見惚れてしまう。


先日もそうだが、うっかり顔が赤くなってしまう。


もっと余裕のある大人の男のほうが良いのだろうか?


「ラルフ様?」


気がつくとメイリンが顔を覗き込んでいた。


顔が近い…


そうだ。


「厩舎に行こう。」


「はい!」


「メイリンは本当に動物が好きなのだな?すごく楽しそうだ。」


「動物の種類や数が違っても、人よりも多く出会ってましたから。」


「そうだったな。」


私もメイリンが学院に入って来るまで会うことがなかった。


厩舎についたから、メイリンの手を引いて私の馬の所へ案内した。


「兄上の馬と比べるとすごく大人しいだろう?」


「アダム様の馬も大人しかったですよ?こんにちは、今日はよろしくお願いしますね。」


動物に挨拶するとか…可愛いな。


「あまり遠くまでは行けないが軽食を食べて少しゆっくりしよう」


「楽しそうですね。」


「そう言うと思った。じゃあ、行こうか?」


「はい。」


馬に乗って、手を引いて乗せた。


軽いし、華奢だな…


ドレスだから横座りにして腰を押さえた。


「メイリンが乗っているからあまり揺れないように走ってくれ。」


利口だから私の言う事を守ってくれる。


「あの…そんなにキツく押さえなくても良いのではないですか?」


「あー…落として怪我をさせたらコールマン公爵に怒られるのだ。」


「お父様ったらそんな事まで言っていたのですか?」


「メイリンにはしなくていい辛い思いをさせてしまっていたから当然だ。」


「それは…でも、気にしなくてもいいのですよ?」


今までのあれこれを思い出して手に力が入ってしまった。


私も兄上もアークやジャンも護れなかったことに後悔をしている。


こんなに美しいメイリンの表情が曇ってしまった時にどれだけ胸が苦しくなったか…


「ラルフ様、気にしないでくださいね?私がご迷惑をおかけしたのです。」


「でも、城に来るまでは危険な事はなかったのだろう?」


「それはそうですが、学院に入るまで屋敷から出ていなかったからで…っ…」


「大丈夫かっ!?」


「はい…」


段差で揺れて驚いたようだ。


捕まる所がなくて私にしがみついたから、


目を合わせられなくなってしまった。


顔を少し下げるだけですぐにメイリンの顔があるからな…


「申し訳ありませんっ!」


「そのまま捕まっていてもいいぞ?」


約得なのだ。


謝る必要などないのにな。


「それは…ちょっと恥ずかしいです。」


メイリンの顔が赤くなった。


今、メイリンが私を意識してくれている…


目を伏せているが、明らかにドキドキしているのがわかる。


「メイリン?」


「はいっ!?」


「…もう着くぞ?」


「近いですね?」


「なるべく危険がないように近場で気に入りそうな場所を選んだ。」


「お気遣いありがとうございます。」


「そろそろ着くからまた目を瞑ってくれるか?」


以前のように感動してくれないか、と思っていた。


「ふふっ、また脅かすおつもりなのですね?」


「驚くかどうかはわからないが。」


メイリンは言われた通り目を閉じた。


揺れて怖がらないようにゆっくりと止まった。


「ラルフ様?」


「メイリン、そのまま手を前に。」


「はい。」


そのまま降ろしてすぐに抱き上げた。


「なぜ、横抱きに?」


まぁ…せっかくだから横抱きにしたかっただけなんだが。


「降ろしてくだされば歩きますよ?」


「大丈夫だ。抱えて行くほうが早い。」


「それは、目を瞑っているからです。」


「確かにな、だが少し歩くのだ。」


「そうなのですね。」


「あぁ…着いたぞ。目を開けて?」


「はい、ラルフ様。では降ろしてください。」


「わかった。」


残念だが仕方がない。


「綺麗なお花畑ですね?」


「メイリンの庭にない種類のものだろ?」


「はい、初めて見ました。」


白い花が一面に咲いていて、メイリンが薄い紫色のドレスを来ているから絵画のように美しい。


「綺麗ですね…」


「気に入ったか?」


「はい。とても!」


「ラルフ様は私がお花畑が好きだと思っているのですね。」


「違うのか?」


「違わないですよ。」


メイリンは少しいたずらっ子のように微笑んで、


花を踏まないように歩いて行く。


「やはり、メイリンは花に囲まれていると更に美しく見えるな。」


「え?なんですか、急に?」


「事実を言っただけだ。」


手を引いて、花畑の奥の木陰でお茶を飲むことにした。


「ラルフ様はどうしてお花畑に私を連れてきてくださったんですか?」


「メイリンが喜ぶからだ。それに、花がある所だと嬉しそうに笑うからな。」


「はい。とても嬉しいです。」


「地理はわかっても街や景色とか詳しくは知らないだろう?」


「はい。」


「馬車のカーテンはいつも閉めていたと聞いた。だから、景色が綺麗な所は全て共有出来たらと思った。」


「共有…」


色々な所に連れ出して、同じ景色を見て一緒に楽しみたいと思ったのだ。


「おかしいか?」


「屋敷や城以外を知らない事をあまり疑問に思ったことがなかったので、驚いただけです。」


「疑問に思ったことがないのか。残念に思ったこともないのか?」


「はい、一度もないです。」


「メイリンは色々な景色を見たくないのか?」


「そんな事はありませんよ?考えた事がなかっただけです。」


考えた事もないくらい、当たり前の事だと思っていたのだな…


「私は今後、兄上と違って遠出をしての公務が増える。その時に一緒に見れたら嬉しい。」


「ありがとうございます。そのような事を言われたのは初めてです。」


「私の我儘だけどな。」


「そうなのですか?」


「それはそうだろう?常にメイリンと一緒にいたいと言う事なのだから。」


メイリンは目をパチパチしてこちらをじっと見ている。


そんなに驚くことだろうか?


そうだ、聞きたい事があった。


「メイリンは私と何かやりたい事はあるか?」


「ラルフ様とですか??」


「例えば…観劇とか買い物とか公園とか何かないか?」


私はなんでも構わないのだが、


せっかくなら喜ぶ事を一緒に体験したい。


「すみません、特には…今まで誰かと何かをしようと考えた事がないので…」


「そうか…では、私がやりたい事を作ろう。」


「ふふっ、考えるではなく作るのですね?」


「駄目だったか?」


やりたい事がないなら、一緒に探すのも楽しいかもしれない。


「いえ、楽しみです。」


「そうか、それならたくさんやりたい事を作ろう。」


「ふふっ、嬉しいです。」


可愛いな…


そういえば、準備していた贈り物を渡さなければ。


侍女が話しているのを聞いた事がある。


あまり派手な物を好まないと。


それであればシンプルだけど質の良いアクセサリーなら、


普段からつけてくれるのではないかと思って作らせてみた。


「メイリン、これを。」


「これは?」


「開けてみてくれ。」


言われた通り、包みを開けて目を輝かせた。


あまりドレスもアクセサリーも欲しがらないからドレスに合わせて贈っていたのだが…


あまり普段は使っていなかった。


「素敵…」


「やっぱりな。シンプルなアクセサリーが好きなのではないかと思ったから作らせてみたのだ。」


「ありがとうございます!よくわかりましたね?」


すごく嬉しそうだ。


良かった…


「つけるから、髪を上げてくれるか?」


「はい。」


言われた通り髪を上げてくれたが…しくじったな。


「……」


「ラルフ様?」


後ろから抱きしめるような形でネックレスをつけた。


正面にまわって見てみると…


「本当に美しい…」


「……ありがとう、ございます…」


うなじにドキドキして美しいという言葉しか出てこなかった。


「似合いますか…?」


「あぁ、とても似合っている…」


耳まで真っ赤になっているけど、目が離せない。


見惚れていると、メイリンの顔が赤くなっていった。


「顔が赤いぞ?」


「ラルフ様も耳まで赤いですよ?」


「メイリンが喜んでくれたからな…」


少し無言で見つめてしまった。


慌てて何か言葉を口に出そうとして、なかなか思いつかなかった。


「また花冠でも作るか?」


「はい、作りましょう!」


思わず、言ったのだが楽しそうに花冠を作り始めた。


器用ではなかったから、花冠を作っているメイリンを眺めていた。


家族分と自分の分と私と兄上の分もあった。


器用だな…


「つまらないですよね?」


「いや、そんな事はない。じっくりメイリンを見ていられるからな…少しこちらを向いてくれ。」


「はい。」


耳の上に1輪さしてみた。


…妖精のようだ。


「お花に負けてしまいますね。」


「花よりメイリンのほうが綺麗だぞ。」


「ふふっ。」


嬉しそうだ。


良かった。


「またからかっているのですね?」


「いや、本気だ。」


本当に綺麗だ…


恥ずかしそうに俯いた。


「メイリン…」


思わず手を頬に伸ばしてしまった…


『殿下。風が冷たくなってきましたので、帰りますか?メイリン様が風邪をひいてしまっては…』


頬に触れる直前に近衛兵から声をかけられた。


「……わかった。メイリン、おいで?」


「はい。」


危なかった…


まだ婚約もしていないのに、


触れたいと思ってしまった…


さっきメイリンは目を丸くしていたな。


帰りはお互い無言になってしまったが、


少し耳が赤くなっている。


ちゃんと前に進めている。


もっと私を意識して、私を婚約者に選んで欲しい。


どんどん欲深くなっている気がする。


兄上は仕事も出来るし、とても紳士だ。


私は男としてはまだ兄上に叶わないだろう。


兄上は20歳になった頃にメイリンを婚約者にしたいと言った。


それまでなぜ婚約者を選ばなかったんだろう?


あ、そうだ。


ミリム嬢に婚約の申出をして、断られたと聞いた気がする。


でも、兄上が10歳くらいの時だったはず。


それ以降は全て断っていたと思う。


兄上はメイリンが10歳になるよりも前に気になる存在だったのだろうか?


よく考えると私もそうだったかもしれない。


あ…


もう着いてしまう。


「メイリン、楽しかったな?」


「はい、とても!」


厩舎で馬から降ろして離宮に送り届けた。


最後の楽しかったというあの笑顔…


可愛かったな。


自室に戻ってメイリンからもらった花冠を飾らせた。


前回の花冠はメイドがドライフラワーにしてくれて飾ってある。


だから今回も同じようにしてもらう事にした。


あの時のメイリンも初々しくて可愛かったな…


でも、今日のメイリンはもっと可愛かった。


それにしても危なかった…


まだ婚約もしていないのに触れていいわけがない。


コールマン公爵家が外に出さないようにしていて良かったのかもしれない。


そうでなければ幼い時に婚約をしていたはずだ。


誰かと婚約をしていたら、


考えるだけでも嫌な気分になる。


それにしても、メイリン…後ろ姿にドキドキしたな。


ネックレスを着けた後に正面から見て、


思わず見つめてしまった。


私はこんなにもメイリンが…


今日はもう眠ろう。


今眠れば夢の中でも今日の光景をもう一度見れるかもしれない。


そうしたらあの時伸ばした手が触れる瞬間を…


いや、考えるのはやめよう。


でもいい夢は見れそうだ。


やり過ぎた。

やりすぎたかもしれません。

最初は第一王子を推そうとしていたのに、気づけば第二王子推しになっている気がする…

さて、私は明日も引越の荷造りで忙しくなるから早めに眠ろうと思います。

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