お茶をだと思ったら外出だった悪役令嬢
今日はラルフ様とお茶をする約束になっています。
今は支度中です。
もう少ししたらお迎えが来るので侍女達が楽しそうに着飾らせてくれています。
「ラルフ様と2人だけなのだからそこまで気合を入れなくても…」
「だからこそです!ラルフ様やアダム様にはもっともっと美しいメイリン様をお見せしなくては!」
気合を入れられるとはりきっているみたいで恥ずかしいのよね?
しかもラルフ様とお茶の時間にはラルフ様から頂いたドレスだし、
アダム様も同様で毎回少しだけ恥ずかしくなるのです。
「素敵です…」
「ありがとう。」
「メイリン様。ラルフ様がかお迎えに見えております。」
「はい、今行きます。」
少しだけ緊張しているのは昨日お2人の事を考えていたからでしょうか…
ラルフ様は緊張とかするのかしら?
「ごきげんよう、ラルフ様。」
「あぁ。…メイリンは何を着てもよく似合うな。」
「ありがとうございます。」
「今日は父上とコールマン公爵から許可をとったから馬に乗ろう。」
「馬?」
「前に兄上の馬に乗っただろう?」
「はい。」
「気に入ったみたいだったから…」
「それで近衛兵の方達がこんなにいらっしゃるんですね?」
「メイリンをどうにか連れ出してあげたかったが、護衛と近衛兵の数を増やさなければ許可が取れなかったのだ。」
馬…
「ラルフ様、ありがとうございます!とても嬉しいです!」
嬉しい!
ずっと離宮から出ていなかったから本当に嬉しい!
ふふっ
「…そんなに喜んでもらえて、私も嬉しい。」
今、赤くなるポイントはあったかしら?
「あー…いや、そんなに無邪気に喜ぶメイリンが見れたから。」
「そうでしたか?」
「厩舎に行こう。」
「はい!」
うふふっ
また、あの馬に会えるのね。
「メイリンは本当に動物が好きなのだな?すごく楽しそうだ。」
「はい。動物の種類や数が違っても、人よりも多く出会ってましたから。」
「そうだったな。」
結局、馬術は教えてもらえなかったわね。
厩舎について、ラルフ様に手を引かれて中に入りました。
「こいつが私の馬だ。兄上の馬と比べるとすごく大人しい。」
「そうなのですね。こんにちは、今日はよろしくお願いしますね。」
ふふっ、可愛い。
「今日は遠くまでは行けないが軽食を食べて少しゆっくり出来る。」
「楽しそうですね。」
「そう言うと思った。さぁ、行こうか。」
「はいっ!」
手を引いて乗せてもらいました。
やっぱり高いわね。
横に座って、ラルフ様が腰を押さえてくれました。
しっかりと座った所で歩き出しました。
徐々にスピードが上がっていきます。
「メイリンは細いな?」
「え…そんなにキツく押さえなくても良いのでは?」
「落ちないようにしっかりと押さえなくては。落として怪我をさせたらコールマン公爵に怒られるのだ。」
「まあ!お父様ったらそんな事まで言っていたのですね?」
「メイリンはしなくていい辛い思いをさせてしまっていたからな。」
「それは…殿下達や我が家のせいではないですから、気にしないでくださいませ。」
ラルフ様の手に力が入りました。
きっと、責任を感じていらっしゃるのね?
「ラルフ様、本当に気にしないでください。私のほうがご迷惑をおかけしたのですから。」
「だが、城に来るまではそんな事はなかったのだろう?」
「それはそうですが、学院に入るまで屋敷から出ていなかったからで…っ…」
「大丈夫かっ!?」
「はい…」
段差を飛び越えたから揺れてしまったので、
うっかりラルフ様に抱きついたような形で受け止めていただいてしまいました。
「申し訳ありませんっ!」
「いや…構わない。そのまま捕まっていてもいいぞ?」
「え…?」
そのまま?
「それは…ちょっと恥ずかしいです。」
「そ、そうか…」
顔が熱いです。
ドキドキしているという事でしょうか?
「メイリン?」
「はいっ!?」
「…もうすぐ着くぞ?」
「近いのですね?」
「許可が出た場所が少なかったからな。その中で気に入りそうな場所を選んだ。」
「そうなのですね。ありがとうございます。」
「そろそろ着くからまた目を瞑ってくれるか?」
「ふふっ、また驚かすおつもりなのですね?」
「驚くかどうかはわからないが。」
言われた通り目を瞑って、到着を待ちました。
少ししてゆっくりと止まりました。
「ラルフ様?」
「メイリン、そのまま手を前に。」
「はい。」
今回は馬車からではなくて、馬の上から降りるから少し怖い…
「ラルフ様、ちゃんと受け止めてくださいね?」
「あはは、大丈夫だ。ほら。」
ん?
横抱きでしょうか?
殿下達は慣れているのかしら?
「なんだか…安定感がありますね?降ろしてくだされば歩けますよ?」
「大丈夫、そのまま抱えて行くほうが早い。」
「それは、目を瞑っているからです。」
「確かにな。」
そこそこ歩くのね?
「よし、着いた。目を開けていいぞ?」
「ラルフ様、降ろしてください。」
「わかった。」
降ろしてもらって目を開ける。
「…ここも綺麗な…お花畑ですね?」
「ここは自生している花畑だが、メイリンの庭にない種類のものだ。」
「えぇ、初めて見ました。」
ひまわりのような白い花が一面に広がっていて、
「綺麗…」
「気に入ったか?」
「はい。ありがとうございます。」
「ラルフ様は私がお花畑が好きだと思っていらっしゃるんですね。」
「違うのか?」
「違わないです。」
お花畑は嬉しいですが、
お花畑って歩く道がないから気をつけなければならないのよね?
だから、あまりお花を踏んだりしないようにしなくては…
「やはり、メイリンは花に囲まれていると更に美しくなるな。」
「え?なんですか、急に?」
ラルフ様が手を引いて、
お花畑の奥の木陰に案内されてお茶を飲むことに。
「ラルフ様はどうしてお花畑に私を連れてきてくださるんですか?」
「メイリンが喜ぶからだ。それに、こういう所に連れて来るととても嬉しそうに笑うからな。」
「嬉しいです。」
「屋敷と城以外に行く事がないのだから、地理はわかっても街や景色とか詳しくは知らないだろう?」
「はい。」
「前に馬車のカーテンはいつも閉めていたのと聞いた。だから、景色が綺麗な所は全て共有出来たらと思った。」
「共有…」
確かに外の景色を知らないから庭に花の種を撒いて好きな花を育てているのかもしれないわね…
「おかしいか?」
「いいえ。あまり疑問に思ったことがなかったので、驚いただけです。」
「疑問に思ったことがないのか。残念に思ったこともないのか?」
「はい、一度もないです。」
ラルフ様は可哀想に思ったのかしら?
外に興味を持った事がなかったけど…
家族が私の為にそうしていたのだから、
疑問も持ったり残念に思う事もありませんでした。
「メイリンは色々な景色を見たくはないのか?」
「そんな事はありません。考えた事がなかっただけです。」
ラルフ様が目を丸くして驚いていました。
そんなに驚く事でしょうか?
「私は今後、兄上と違って遠出をしての公務が増える。一緒に見れたら嬉しい。」
こんな風に思ってくださるのは本当に嬉しいし、楽しそうです。
「ありがとうございます。そのような事を言われたのは初めてです。」
「まぁ、私の我儘でもあるが。」
「そうなのですか?」
「それはそうだろう?常にメイリンと一緒にいたいと言う事なのだから。」
そういう考え方なのね…
「メイリンは私と何かやりたい事はあるか?」
「ラルフ様と?」
「例えば…観劇とか買い物とか公園とか何かないか?」
ラルフ様と何かやりたい事…
「すみません、想像が出来ません。今まで誰かと何かをしようと考えた事がありません。」
「そうか…それなら仕方ない。私がやりたい事を作ろう。」
「ふふっ、考えるではなく作るのですね?」
「駄目だったか?」
「いえ、楽しみです。1人で時間をどのように使うかくらいしか考えた事がなかったので。」
「そうか、それならたくさんやりたい事を作る。」
「そんな事を考えてもらえて嬉しいです。」
「あと、これを。」
「これは?」
「開けてみてくれ。」
言われた通り、包みを開けてみたら…
「素敵…」
「やっぱりな。メイリンはシンプルなアクセサリーが好きなのではないかと思って…」
「ありがとうございます。よくわかりましたね?」
「普段つけている物が控えめな石が多かったから。」
そんな所まで見てくれていたのね…
本当に優しい方です。
「つけてあげるから、髪を上げてくれるか?」
「はい。」
言われた通り髪を上げました。
「…くっ…」
「ラルフ様?」
後ろから抱きしめるような形でネックレスをつけてくれました。
「メイリンは本当に美しいな…」
「……ありがとう、ございます…」
なんとなく恥ずかしい…
「似合いますか…?」
「あぁ、とても似合っている…」
ラルフ様、耳まで真っ赤になっているわ?
私は心拍数が上がって身体が熱くなってしまいました。
「メイリン、顔が赤いぞ?」
「ラルフ様も耳まで赤いですよ?」
「メイリンが喜んでくれたからな…」
そんな事で?
「また花冠でも作るか?」
「はい、作りましょう!」
その後花冠を家族分を作りました。
私の分とラルフ様とアダム様の分も。
ラルフ様は以前上手くいかなかったからか作らずに、私の手元を見たり空を見上げたりしています。
「ラルフ様はつまらないですか?」
「いや、穏やかだな、と思っていた。少しこちらを向いてくれ。」
「はい。」
1輪を選んで耳元に刺してくださりました。
「お花に負けてしまいますね。」
「花のほうが負けている。」
「ふふっ。」
ラルフ様は楽しそうに笑っていました。
「またからかったのですか?」
「いや、本気だ。」
じっと見つめられて落ち着かなくなってしまいました。
「…そうですか…」
「メイリン…」
ラルフ様の手が私のほうへ伸びてきましたが…
『殿下。風が冷たくなってきましたので、帰りますか?メイリン様が風邪をひいてしまっては…』
「……わかった。メイリン、おいで?」
「はい。」
帰り道で風を感じましたが、熱くなった私には気持ちが良かったです。
ラルフ様は来る時よりも強く支えてくれていました。
離宮に戻ってお礼を伝えて自室に戻りました。