思い詰めて前世の記憶で落ち込んでいく悪役令嬢
今日は何をしようかしら?
離宮の本は制覇しました。
王宮の図書室はまだ3分の1しか読めていません。
離宮から出てはいけないから…
手元にある本はもう何回も呼んでしまったのです。
本当にやる事がない…
図書室に行ければ新しく読む本を持ってくるのに行けないのです。
だから、持ってきてもらうの。
歴史の本と恋愛の本は読み終わったわ。
恋愛の本…
全然理解が出来ませんでした。
前世では、少女漫画も読んだけど少年漫画のほうが好きでした。
そういえば好きなアニメで、小さい身体から一時だけ元の身体に戻って、
『あんた、探偵でしょ?私の気持ちくらい推理しなさいよ!』
『おめえは厄介な難事件なんだよ!ホー●ズでも好きな女のことを正確に推理なんてできねーと思うぜ!』
っていうのを観ました。
私にも難事件なのです。
推理ではなくて理解したいのですが…
『真実はいつもひとつ!』
そうなのでしょうか?
わからないから恋愛小説を読んでいるのですが…
恋愛小説を見ても全然気持ちが理解出来なくて、
どんどん深みにハマってしまいそうになります。
早くアダム様とラルフ様のどちらかと婚約しなければならないといけないのですが…
年齢の釣り合いがって言われるとラルフ様。
陛下が言うように、私の頭脳を国のために使うならアダム様。
そこに気持ちがいらないと言うなら…
王家で話し合って決めてくだされば婚約は決まっていたでしょうね。
きっとアダム様とラルフ様が陛下に同時に婚約をしたいと仰ったから、
どちらかを選んで欲しいという事に…
王子妃でも王妃でも頭脳を使って欲しいと言われるかもしれないけれど、
頭脳を抜きにしても王家に迎え入れたいとの事でした。
アダム様もラルフ様も私の事を淑女として扱ってくれています。
貴族は基本的に恋愛結婚は少ないです。
私は殿下達がお兄様達のお友達認識だったので、
恋愛になかなか結びつかないのかもしれません。
お父様が決めてくだされば、悩むことはないのに…
将来の選択は間違えられません。
前世では何度だってやり直せると皆が言っていました。
でも、私はやり直せる機会が存在していませんでした。
生まれてから病室と家でずっとベッドの上にいたので、
保育園も幼稚園も学校にも通えなかったのです。
私は将来よりも今生きているというだけが現実でしたし、その先に未来が存在しませんでした。
家族は元気になれるから頑張れって…
病は気からだよと言われました。
それにお医者さんや看護師さんが病室の外で両親と話しているのを聞いてしまったことがありました。
両親は泣き崩れて…
あぁ…私は生きるという希望がないのだとその時に知りました。
私は生きると死ぬの選択も出来ず、
頑張ると頑張らないの選択も出来なかったのです。
もちろん元気なフリをしている事と落ち込む事は唯一自由に選択出来ました。
頑張ればいつか元気になれる。
頑張らなければ元気になれない。
その選択をしてもやり直せる機会はやって来なくて、
諦めて決まっている未来を待つしかありませんでした。
この世界で私は選択する機会があるけれど、
やり直せる機会は来ません。
だから、選択を他人に任せたいと思っているのかもしれません。
こんな事を考えてしまうのは、期限が近づいているからでしょう。
どちらかと恋愛する…
殿下達は私が殿下達を意識し始めたと喜んでいたけれど、
本当に前から意識はしていたのです。
デートをしたり、お茶をしたりする度に恋愛を出来るだろうか?とちゃんと意識して考えていました。
どちらもお兄様達と同じように優しくしてくれて、
大事にしてくれて、
一緒にいる時間を作ってくれて、
ちゃんと私を見た目以外でも評価をしてくれていたこと、
私の答えを待ってくれていること。
素敵な方達だと思っています。
でも、これだけの判断材料があるのにまだ決められていないのは良くないとわかっています。
婚約の話を聞いてからまだ1年満たないけれど…
殿下達お2人から求婚されていて自分で選べと言われても、
選択した事のない私にはとても難しいのです。
前世からもっと恋愛に興味を持っていたら悩まなかったのでしょうか?
殿下達の見た目から選択するのはとても難しい。
アダム様は穏やかな細マッチョ?で、
ラルフ様は穏やかだけどはっきりした性格。
どちらも一途で一生懸命で、とてもまじめな方です。
簡単に選ぶ事は出来ません。
この国の王妃、もしくは王子妃になるのですから責任が伴うのです。
残り半年を切っています。
期限のひと月前には決めなければなりません。
最近、申し訳なさと期限が迫ってくるから焦ってきました。
真剣に悩んでいます…
もちろん今までも真剣でしたが…
今日こんな事を考えているのは理由があります。
陛下と王妃様からお手紙をもらったからです。
陛下と王妃様は早く娘になってほしい。
早く婚約をして、公務も積極的に行って欲しい。
どちらに決めるのか?
そんな手紙をもらったので、考えていました…
はぁ…
「メイリン様。どうかされましたか?」
侍女達に心配をかけてしまったようです。
「考え事をしていたのです。陛下や王妃様からお手紙を頂いたので。」
「そうでしたか…思い詰めたお顔をしていらしたので心配してしまいました。」
「ごめんなさいね。」
「お茶を淹れ直しますね。」
「ありがとう。」
誰かに相談したいけど…
王家との事を話すわけにはいかないものね。
「お庭でバイオリンを弾きたいので確認をお願い。」
「かしこまりました。羽織の準備もしてまいります。」
「気分転換にドレスに着替えたらいかがですか?」
必要はないけど、気持ちのリセットするには丁度いいかもしれません。
確認と支度がすんで、お庭でバイオリンを弾きました。
小鳥さん達が遊びに来て落ち込んだ気分が少し浮上してきました。
「メイリン様、そろそろ中に入りましょう。」
「わかったわ。小鳥さん達、今日はありがとう。また一緒に演奏会をしましょうね。」
小鳥さん達をひと撫でずつしてから部屋に戻りました。
「気分は晴れましたか?」
「ふふっ、ありがとう。もう大丈夫よ。」
久しぶりに前世の事を思い出して、
少し思い詰めてしまいました。
でも、小鳥さん達と小さな演奏会で気分が少し上がりました。
明日はラルフ様とお茶をするから、
好きになれるかしっかりとお話をしてみようと思います。