恋バナで心拍数の謎が解けた悪役令嬢
「私はラルフが他の子息に割って入った時に話しかけた。」
「覚えています。随分と詳しく知っているのだな、と思っていました。」
「ジャンと仲がいいからな。少し話していたらコールマン公爵夫人と他の貴族に挨拶に行ってしまったのだ。」
「はい、お父様に言われていましたから。」
「その後に、コールマン公爵夫人とメイリンが仲良く話をしていた時にメイリンと一緒なら公務も楽しくなりそうだと。」
「お母様と話をしていた時ですか?」
「メイリンは公爵令嬢として貴族のご令嬢の手本と言われていた。それがいたずらっ子のように笑っていたのだ。すごく可愛らしいと思った。」
そんな所を見られていたのね…
「お恥ずかしいです…」
「メイリンのそんな顔を見れていなかったなんて…」
「そんな所はあまり見られたくないのですが…」
「メイリンはどんな顔をしても美しい事に変わりない。」
「殿下達は褒め過ぎです。その度に心拍数が上がるので落ちつかないです。」
あら?
なぜ真っ赤に?
「どうかされましたか?」
「いや、メイリンは褒められるのは慣れているから口説けていないと…」
「今までそんな風に赤くなるメイリンをちゃんと見たことがなかったからな…」
「顔、赤いですか?」
頬を触ってみるととても熱く感じました。
これは口説かれて照れているということなのかしら?
「熱いですね?」
殿下達に笑われました。
なぜ?
「すまない。こんなに可愛らしいとは思っていなかったから、つい。」
「アダム様、それは酷いです…」
「メイリンが心拍数が上がるなら、もっと褒めてみるか。」
「ラルフ様!?それはやめてください。心臓がおかしくなったらどうするのですっ!?」
「すまない、可愛くて。」
酷い…
「私も殿下達が赤くなるようにしますからね?」
「「えっ!?」」
「アダム様?」
アダム様はじっと目を見ていると赤くなるのです。
だからデートではあまり目が合わなかったのよね。
ふふふっ、ほら。
真っ赤になったわ。
「どうですか?」
「あ…いや、あー…」
いつも、ここから喋らなくなってしまうの。
「な、なるほど…」
「ラルフ様も。」
「えっ!?」
ラルフ様は貴族の令嬢らしく笑うと真っ赤になるのよ?
「ふふっ、ラルフ様もどうですか?」
「くっ…」
ふふふっ、私もいたずら心はあるのです。
「ね?これでおあいこです。」
「「くっ…」」
ふふふ、やっぱり兄弟なのね。
「そ、それよりもメイリンは私達の何を見て好感が持てるのだ?」
殿下達に好感?
「お兄様達みたいに私を大事にしてくれた時…かしら?」
「アークとジャンか…」
「はい。アークお兄様はいつも一緒にいようとしてくれるので楽しいのです。」
「一緒にいようとするのがいいのか?」
「はい、私を1人にしないように、時間があるとお茶をしてくれるから大好きです!」
「なるほど…」
「ジャンはどうなのだ?」
「ジャンお兄様は格好いいのです。お勉強や剣術も手を抜かずに一生懸命やっていて尊敬していますし大好きです!」
「かっこいいのか…」
「ジャンお兄様を見て、一緒にいられるようにお勉強を始めたのです!」
「メイリンのルーツはジャンだったか。」
ジャンお兄様が本を読んでいて、
アークお兄様が絵本を読んでくれた事を思い出します。
割とすぐに自分で読めるようになったけど、
私が勉強すればジャンお兄様とアークお兄様とお姉様と一緒にいられると思ったのです。
「メイリンは一緒にいてくれて大事にしてくれる人が好きなのだな?」
「はい、好きです。」
「「うっ…」」
そうなのね?
私は一緒にいて大事にしてくれる人が好きだったのね…?
ん?
あら?
アダム様とラルフ様は?
どちらも私が好きなお兄様と同じように大事にしてくれて…
どちらも私と一緒にいられるように時間を作ってくれて…
「メイリン…?」
「急にどうした?」
え…?
ラルフ様?アダム様?
うーん…
ラルフ様もアダム様もなんだかアークお兄様のようだわ。
ジャンお兄様要素もあるかしら?
ジャンお兄様は私に対して、とても優しく扱ってくれるから…
「あと、優しいほうがいいです。」
ジャンお兄様くらい優しかったら完璧だわ。
アークお兄様とジャンお兄様に似ている事になるもの。
「アークやジャンは優しくないのか?」
「いいえ。アークお兄様はとても優しいです。でも、ジャンお兄様はふんわりと包んでくれるような優しさです。」
「そうか…では私達がそのように振る舞えば?」
「アダム様もラルフ様もアークお兄様に似ている気がします。」
「「えっ?」」
「どこがだ!?」
「私を守ってくれたり、一緒にいられる時間を作る為に仕事を前倒ししたりしてくれているのでしょう?」
「当然だ。メイリンをコールマン家から連れ出したのだから。」
「それに、メイリンと一緒にいたくて婚約を申し込んだのだ。」
あら?
なんだかすごく恥ずかしくなってきました…
「あの…そろそろ別の話に…」
「メイリン、首まで真っ赤になっているぞ?」
えっ?
頬と首に触れたらとても熱くなっているし…
心拍数が今までで一番上がっている気がします。
「心拍数が今までよりももっと上がっているような感じがします…」
「メイリンが意識してくれたのか…」
「えっ?意識?」
「自覚が出てくるといいんだがな。」
「意識しているとはどういう事でしょうか?」
「あー…そうだな…私達の何かを感じてドキドキしているのではないか…と思うのだが?」
「これを言わなければならない私達は…悲しい限りだ…」
「悲しいのですか?」
「メイリンがジャンやアークやコールマン公爵以外の男性に好意を持ってくれたのだろう?」
「私達にドキドキして心拍数が上がっているのだと思うのだが…」
「何を考えて心拍数が上がったのかわかるか?」
「お兄様達の話をしていて、殿下達がお兄様に似ているなぁと考えていたら心拍数が上がりました。」
「私達はもう少し頑張ればアークやジャンよりも好きになってもらえるかもしれないな。」
「お兄様達よりも好きに?」
「メイリンはアークやジャンのような男が好きなのだろう?」
「はい、お父様やジャンお兄様やアークお兄様が大好きです。でも結婚出来ないから、お兄様達のような方がいいです。」
「似ているほうがいいのか?」
「似ているほうが…?よくわからなくなってきました。でもお兄様達のような方が旦那様だといいなと思います。」
「それだと私達がそれに近いから望ましいと聞こえるのだが?」
アダム様やラルフ様が旦那様だったら…
うわっ…
「また恥ずかしくなってきましたっ…」
「「……」」
殿下達が顔を赤くしてぼーっと私を見ているので、
居たたまれない気持ちになってきました…
「アダム様、ラルフ様。もう見ないでくださいませ!」
恥ずかしくなって思わず顔を覆ってしまいました。
「メイリン…?」
「メイリン、顔を見せてくれないか?」
近づいてくる気配があって、
思わず顔を上げてしまいました…
「「うっ…」」
殿下達は今までで一番赤くなっている気がします。
「メイリン、あなたのそんな顔が見られる時が来るとは思わなかった。」
「…どんな顔を…?」
「…知りたいか?」
「はい…」
「鏡があればすぐに見せてあげられるが?」
「それなら、侍女が持っているので。」
鏡をもらって見たけど…?
「ラルフ様?」
「兄上。」
「わかった。」
ラルフ様とアダム様が私をじっと見つめているのですがっ!?
目をそらさずにずっと見てくるから…
「メイリン、どうした?」
「お2人とも見すぎです。あと、近いです…」
「メイリンが自分がどんな顔をしているのか見たいのだろう?」
「そうですけど…まだですか?」
「まだみたいだな?」
「まだかかるのですかっ?」
うー…
「メイリン?」
「はい…」
「今だけ私だけを見てくれないか…?」
「えっ?」
「兄上!?」
私の真正面にアダム様が立って、
じっと見られています…
どういう事でしょうか?
「まだですか!?」
「もう少しだと思う。」
「兄上…ずるい。」
「えっ!?」
ラルフ様が私の背後から抱き寄せ、アダム様から遠ざける。
「あの…ラルフ様?なぜ抱き寄せたのですか?」
「兄上からメイリンを守っただけだ。」
「ラルフ様!耳元で喋らないでください!」
一気に心拍数が上がりました。
「あの…もう大丈夫ですから…」
「メイリン、鏡で顔を見てみるか?」
「はい……」
鏡を覗きこむと…
「なんだか、私が見たことのない顔に…?」
これじゃ、まるで少女漫画の女の子…
「私はいつもこんな顔をしていたのですかっ!?」
「いや、初めてだ…」
「今までで一番可憐だな…」
「なんて顔を…」
これでは本当に少女漫画のヒロインのようだわ…
「もう恋バナはしたくありませんっ!」
虐められている気分です…
「メイリン、すまないっ!」
「あまりに可愛らしいから、つい調子に乗ってしまった。ごめんな?」
うー…
「でも、もう恋バナは本当にしたくないです…」
アダム様とラルフ様は顔を見合わせて…
「私達はメイリンの気持ちが知れるから、また恋バナをしたいのだが…」
「無理ですっ!!」
本当に無理だわ。
「(残念だ…)」
「(兄上。メイリンの好みや私達に好意を感じてくれたのだから良いのでは?)」
「私、もう帰りますっ!」
「待て待て!もう、この話は終わりにするから。」
「今、苺のケーキを用意させているから!」
「じゃあ、もう少しだけいます…」
その後は、ゆっくりとケーキを食べながら行ってみたい所や見てみたいものなどの趣味に関して話をしました。
殿下達は時々顔を赤くしていたけれど…
私が殿下達にちゃんと好意を持てているのがわかって良かった…
なんだか少し、後ろめたく思っていたのです。
私も時々ふんわりと微笑む殿下達を見て心拍数が上がったのは秘密にしておこうと思います。