来客と家族会議と悪役令嬢
誕生日からしばらくたったが、とにかく来客が多い。
私に会いに来ているらしい。
非常に迷惑だ。
これでは引きこもりだ。
バルコニーを開けて、
部屋の中にバルコニー用のテーブルや椅子を用意した。
動物のお友達が遊びに来てくれるからだ。
会ったこともないの人にも求婚されるなんて。
私、6歳なんですけど?
部屋で読書をしながら動物とのふれあいを楽しんでいたが、
そろそろ部屋の中は飽きてきた。
「はぁ…」
「早く落ち着くといいですわね。」
「本当に。お茶会にほとんど出ていないからかしら?」
「お茶会なんて行ったら、メイリン様が大変な目にあうでしょうし。」
「また誘拐されちゃうかしら?」
「そうですね、可能性はありますわね。」
それは困る。
でも、このままでは私病んでしまうのではないかしら。
「リスさん、いつもありがとう。今日もお花をくれるのね。」
今日は家族が誰もいない。
「お客様いないなら庭に出てもいいかしら?」
「そうですね、護衛を全員お連れくださいね。」
「お庭なら大丈夫ではないと思うけど…」
「最近、先触れのない来客がくるのです。用心しなくては。」
「わかったわ。」
困ったわ。
本当に病気になってしまうかもしれない。
護衛を引き連れて庭に行く。
屋敷には警備担当も何人も配置されているから問題ないはずよね。
「あら、小鳥さんも来てくれたのね。」
小鳥さんを手に乗せて綺麗な羽根をなでてあげる。
人間のお友達なんて出来るのかしら?
「お嬢様、急いで中へ。」
慌てて部屋に戻された。
どうやら来客が来たらしい。
「屋敷には入れないわよね?」
「もちろんです。」
「あまりにも横柄な態度らしくて足止めしています。」
「裏口から王城の旦那様に連絡をしていますので少しお待ちくださいね。」
数十分くらいでお父様が戻って来た。
馬車ではなく馬で急いで帰ってきたらしい。
あとからたくさんの馬の足音がしている。
衛兵でも呼んだのかしら?
「メイ、大丈夫か!?」
「お父様、おかえりなさい。どうかしたのですか?」
「今伯爵家の子息が急に来たのだ。」
「今日は何も予定はなかったはずよ?」
「あぁ、もちろんだ。ふざけている。」
だいぶお怒りだわ。
「お父様、少し落ち着きましょう?」
「すまない。」
「マリーカ、お茶をお願い。」
「かしこまりました。」
お父様の話ではそのご子息は有名なたらしのようだ。
たくさんのご令嬢を誑かしているようで、
今日もなかなか会えないという私を訪ねてきたらしい。
「お父様、その方には会いたくありません。」
「もちろん、彼の家には抗議をするつもりだよ。」
「でも、今のままで良いのでしょうか?」
お父様と頭を抱えて考える。
「そういえばお父様。お仕事は大丈夫ですか?」
「あー…戻らなくてはならないな。」
「では私は留守番をしていますので行ってらっしゃいませ。」
「でも、心配だ。」
「じゃあ、お父様の職場に一緒に行くのはどうでしょうか?」
「陛下に会わせたくないな。」
「それなら、もう少しすればお兄様達やお姉様が帰ってくるので一緒に待っていただけますか?」
「わかった、そうしよう。」
お父様もなんとか納得してくれた。
不審者騒動で警戒レベルが上がってしまった。
いっそのこと、王城のお父様のお部屋でお勉強するのはどうだろうか?
あとはお茶会に出来るだけ参加するとか?
そもそも、隠されているから余計に興味をもたれるのではないだろうか?
どうにかならないものかと思案するものの良い案が思いつかない。
今は家族会議中。
「迷惑な話だ。」
「だから人目に晒すのは嫌なんだよね。」
「学院でもその話で持ちきりでしたわ。」
「どんなお話に?」
「美しすぎて見るだけで魅了させてしまうらしいわよ。」
「わからないでもないな。」
「そんなことないと思うのだけれど。」
「いや、私の友人もメイを見て紹介して欲しいと煩かった。」
「私とお兄様の年齢差があるのに?」
「だからメイの話が噂になるのよ。」
お姉様も美人なのに、通り過ぎて私になるの?
そんな馬鹿な…
「私はお姉様のほうが美しいと思うわ。」
「メイには勝てないわよ。一瞬で心を奪われてしまうもの。」
「洗礼式で外に出たあの日からメイに見合いの話が殺到していた。」
「5歳よ?」
「そう、5歳の時の半日で23歳の男性から見合いの話が来てたものね。」
「幼女趣味でしょうか?」
「熱烈な恋文でしたわよ。」
いやいや、怖いわ。
ラノベで美しいとは書かれていたけれど、
ここまでとは聞いてない。
まぁ、スタートが12歳の学院からで王子の婚約者としてだったから。
確か、婚約したのは7歳だったはずよね。
断罪されるのは15歳。
あら?
私の家族の話も書かれてなかったわ?
婚約破棄された時に恥さらしって見捨てられていたと思う。
今はラノベ関係ないのね。
学院で綺麗だけど高飛車で我儘で意地悪だという表現しかなかった。
どこからその性格になったかはわからない。
どう行動すればいいのかしら?
「まだ婚約なんて…」
「メイの婚約者の前にジャンやアーク、ミリムも婚約者探しを本格的にしなければな。」
それもそうだ。
学院に通っているから、
卒業までに婚約者を見つけなければ。
「16歳を過ぎたら婚約のお話は少なくなるのですか?」
「そんなことないわ。殿下もまだ婚約してないし。」
殿下はまだ婚約してないのね。
来年婚約したとして、婚約破棄する時に王子は何歳かしら?
私が断罪されるのは15歳。
どちらの王子だったかしら?
「私、お兄様達が婚約するまで婚約しないわ。」
「婚約は順番ではないんだよ?」
「わかっていますわ。」
7歳ではなく、もう少し先にして欲しい。
「陛下からは婚約者候補ということにして登城したらって言われたよ(笑)」
「候補ですか?」
「候補は数人あがっている。そのうちの1人にして王城にくれば安全が保証されるから。」
「嫌です、家族と離れたくありません!」
学院に入学するまでは絶対に婚約なんてしないわ。
家族会議は遅くまで続いたが、明確な対策は全く決まらなかった。