生まれ変わった悪役令嬢
ふわふわする
どこを見回しても真っ白
なんの音も聞こえない
そこにどこからか光が現れた
眩しくて目を瞑る
「私が見える?」
ゆっくり目を開けると
「声は聞こえる?」
わけがわからず、とりあえず頷く
「ここは私の部屋です。」
部屋なの?
私さっきまで病院で管をつけられて、
家族に見守られていたはず
産まれた時から入退院をくり返す手のかかる子だった
死んでしまったの?
「そう、あなたもあなたの家族もとても頑張ったと思うわよ。」
そう、これで私の家族は救われたのね?
「救われた…あなたはそう思うのね。」
そうでしょう?
私が身体が弱いばかりに家族は苦労してきたじゃない?
「…じゃあ、さっきあなたが息を引き取ったあとの家族を見てみなさい。」
そう言って映像が見えた
泣き崩れる家族が私の手を握っていた
たくさん我慢を強いられてきた兄や姉までもだ
私は末っ子だった
兄が2人、姉が2人いる
とても優しくて頼りになる大好きな兄と姉達
どこまでも甘やかしてくれる両親
どこにも行けない私は家族だけが私の世界だった
みんなが泣いている
あぁ、本当に私は死んだのね
苦しくて辛くて、それでも幸せな人生を終えたのね
「よく頑張ったからあなたの死を嘆いて、次に生まれ変わるなら幸せになってと言って神に祈っていたの。」
じゃあ、あなたは神様?
「そうね、でもあなたの世界の神様ではないのよ。」
えっ、違うの?
「えぇ、あなたは異世界転生や魔法のある世界を羨ましいと言っていたわね。」
あぁ、ベッドの上でたくさんの本を読んでいたわね
中でも、魔法や異世界転生のお話が特に好きだった
「あなたの世界の神様からあなたを私の世界に連れて行ってほしいとお願いされたの。」
神様から?
「本当なら少し時間をかけて生まれ変わるのだけれど、家と病院しか知らないあなたが不憫だと。」
そうだったわ
どこにも行けなかった
景色は窓の外にある絵画のようなものでしかなかった
「そこであなたの夢見た異世界転生で魔法や精霊のいる私の世界に生まれ変われるようにしたの。」
私、生まれ変わるの?
「そうよ。ただ、異世界転生の本では悪役令嬢が好きだったわね?」
そうね
大好きなラノベでは悪役令嬢が主役の本がお気に入りだったわ
「あなたはその悪役令嬢に生まれ変われるの」
私が悪役令嬢に?
主役ではなく?
「あなたが一番好きだった本よ?」
新刊のラノベの本かな?
主役の少女を不憫に思って王子様から婚約を破棄されて、
罪人として牢に入れられ、
最後は国外に追放されてしまった
それが許せずに呪いをかけて彼女を殺そうとして呪詛返しにあってしまうのよね
「そう、それよ。」
ただ、最後はあれだったけど、
羨ましいほどの美しい容姿
とても頭が良い
魔力が多く、魔法も優秀
お家が貴族の最高位
剣術も体術も出来る恵まれた令嬢だった
「だから、その令嬢になってもらうわ。魔法は全部の属性をあげる。」
でも最後は死んでしまうのでしょう?
「それはあなた次第よ?」
回避出来るの?
「これからあなたは彼女の赤ちゃん時代からスタートするの。」
そこから?
ラノベでは12歳の学院に入学するところから本格的にスタートしていたわね
婚約をしたところは書かれてなかった
「だから、あなた次第なの。あなたがあなたのままで悪役令嬢を主人公に作っていくの。」
なんだか不思議な世界だわ(笑)
「どう?生まれ変わる?異世界転生やってみる?」
そうね、彼女になって彼女が幸せになれる人生を生きてみたい
「そう、これであなたの世界の神様の願いを叶えてあげられるわ。」
ふふふ、ありがとう
「では楽しんで!」
そして私は生まれ変わる
驚いたわ。
私の瞳は空色。
髪はピンク。
まだ「あー」とか「うー」しか喋れない。
赤ちゃんじゃない!!
「ほら、メイ。ここまで歩いておいで。」
「あなた、抱えては練習にならないわ。」
私はメイリン。
メイリン・コールマン。
ダニエル・コールマン公爵の娘。
母はシエル・コールマン。
一番上の兄はジャン。
二番目の兄はアーク。
姉はミリム。
あぁ、私の前世と同じ家族構成だわ。
貴族は乳母という仕事が存在する。
ただ、私の家族は乳母に全てをお願いすることはないようだ。
愛されている。
素敵だわ。
「メイ、ほらお兄様のところにおいで。」
「兄上、私が抱っこします!」
「あら、お兄様達はお勉強があるのでは?」
「ミリムもお勉強の時間よ?」
「シエル、私は今から仕事なのだから抱っこさせておくれ。」
「もう、少しだけよ?遅刻してしまうわ。」
とにかく私を可愛がりたいようだ。
前世の私もこんな風に可愛がってもらっていたのかしら?
父が名残惜しそうに靴を履いた。
「ほら、メイ。お父様がお仕事に行くわよ。」
「メイ、行ってきます。」
母と私の頬にキスをして出かけていった。
貴族は学院に入学するまでは家庭教師を雇って勉強をするらしい。
日本でいうところの小中学校の勉強。
学院は高校や大学みたいなものかしら?
コールマン一家はとにかく私を可愛がってくれた。
ーそしてまともに会話ができるようになったのは私が2歳になった頃。
「ダニエル!大変よ!」
母は慌てて家族を呼びだした。
「シエル、何があった?」
「母上が慌てるなんて珍しいですね。」
「そうね。」
ジャンお兄様は学院に入学していて、今は不在だった。
「みんな、驚かないでね?」
父もお兄様もお姉様も母の様子を見て慌てだす。
「みんな、メイは天才だわ!」
「「「天才?」」」
「絵本が読めるようになったの!」
「「「!!!」」」
そうね、チートよね。
私はこの世界の文字や数字などが読み書きができるなんて。
自動翻訳があるのね。
「見ていて。メイ。この絵本を読んでくれる?」
「はーい。」
シンデレラ的な絵本を読む。
すると家族は私を天才だと褒めちぎる。
読めないフリしたほうが良かったかしら?
学院から帰ってきたジャンお兄様も驚いた。
今は家族会議中。
どうやら、今後どのように育てるべきか。
可愛いから婚約の申し出をどのように断るかなど早すぎる悩みを相談している。
「父上、婚約の打診がもう来ているのですか?」
「第2王子の婚約者にどうかと言われていてね。まだ2歳だから。」
「そうね、王子はジャンと同じ年齢だったわね。」
「おかあさま、わたしはおうじさまとけっこんするのですか?」
「まだわからないわ。」
「そうよ、まだまだメイは譲れないわ!」
「早すぎる!」
「あと5年は断るようにしようか。」
「そうですね、婚約すると王妃になる教育の為に城に住むことになってしまう。」
「そんなのは嫌だ!」
「そうよ、メイと離れるなんて嫌だわ!」
婚約の打診は当分の間見送るということになった。
公爵家の娘だからと婚約の申し出があとを絶たないらしい。
まさか、私がモテるなんて。
地位だけが欲しいのだろうか?
「おとうさま、わたしはなぜこんなにこんやくのもうしでがあるのですか?」
「メイ、私が何度か王城に連れて行っただろう?その時にメイを見て皆が可愛い娘だと噂されるようになってしまった。」
「うわさだけでこんやくしたいのですか?」
それはびっくり。
「コールマン家の下の娘はとにかく可愛いと聞くがもう婚約者はいるのかと聞かれた。」
「お茶会でもその話はよく聞かれるわ。」
「メイはまだ2歳なのだから婚約なんて早いわ。」
「そうだ。ジャンもアークもそろそろ婚約者を探さないと。」
「「いりません!」」
「ミリムも探さないとだめよ?」
「私もいらないわ、メイと一緒にいたいもの。」
だんだん、私の婚約話からお兄様やお姉様の婚約話にシフトチェンジに。
話によるとこの世界では16歳が成人だという。
貴族は16歳から20歳で結婚が普通だそうだ。
その為、学院卒業までに婚約するらしい。
では、ジャンお兄様…
そろそろ探さねば駄目ですね。
「ジャンおにいさまはどうしておよめさんをさがさないのですか?」
「メイがいるからかな。」
「そうね、私なんて結婚したらこの家を出なくちゃいけないもの。」
おう、ジーザス。
2歳の女児でこんなに話が飛ぶとは思わなかったわ。
貴族って大変なのね。




