ほんのり甘いラブコメディ
「かわいそうね。」
葬式の最中、叔母さんにそう言われた。
高校1年生の冬の日だった。
ちょっと買い物行ってくるからねと、そう言われたのが最後だった。
母と父、それから弟は、居眠り運転をしていたトラックに突っ込まれ死んでしまった。
即死だったそうだ。
救急車が付いたころにはもう脈なんてなかったらしい。
何も考えられなかった。
絶望だ。
大したこともできていないのに、連れていかれてしまった。
ありがとうすら言えてないのに。
弟なんてまだ小学生だったんだぞ。
なのに…
三人の遺骨をもって家に帰った。
本当ならここには温かい家庭が広がっていたはずなのに。
ついこの間まではここで母が父が弟が笑いあっていたはずなのに。
3階建ての一軒家その家はもう僕にとってはとても大きくて。
そして、家族が残してくれた唯一の財産だった。
ピピピ、ピピピ
枕もとのスマートフォンが小刻みに震える。
体を起こしアラームを止める。
「ふう...」
リビングに行きテレビをつけた。
画面の中では小綺麗な女性アナウンサーが今日の天気を話している。
4月16日、あれから約5か月が過ぎた。
この家での一人暮らしにも慣れてきた気がする。
そう思いながらお湯を沸かし、着替えを済ませた。
お湯をカップラーメンに注ぎ、空白の時間を過ごす。
待った時間とは裏腹に3口ほど食べてシンクに流してしまう。
(味がしないな)
自分が不健康な生活をしているのはわかっているが、正直何を食べても変わらなかった。
あの日から、食べ物の味がしない。
人の作ったものならと思い1度定食屋に行ってみたが変わらなかった。
「はぁ...」
もうそろそろこの問題も解決しなきゃな、そう思いながら。
家の鍵を閉めた。