103.5 この3人の雑談って珍しいんですよ
「さて、始めますか。」
「…私も入って良いのですか?」
「いいの、いいの。たまにはなつも一緒にやろうよ。ルールはわかるよね?」
「はい。」
「…誰から始める?」
「じゃあ僕から行きましょう。」
こんな感じでゆるっと始まる。回り将棋は最低でも30分。長ければ1時間はかかる。その間、何をするかと言うと…雑談だ。
「久太郎さん、最近直政殿とどんな話をしているんですか?」
「あ、僕?最近は…そうだね、簡単な城の建て方の話とか民に慕われる内政方法とか話してるよ。…逆に孫四郎さんは最近、蘭丸と行動することが増えてるけど何を話してるの?」
「蘭丸か…。美味しいお団子屋さんの話とかお饅頭屋さんの話とか。」
「スイーツの話しかしないですね。女の子みたい。」
え、女の子?
「…言われてみたらそうかも。そういえば桜とも最近は和菓子の話しかしないね。」
「上様とも金平糖の話を毎回しているし。」
「あれは上様が先に話題をふるから…。」
「…そうだ。これ、まだ渡してなかったね。」
これは…出産祝い?
「堀家、羽柴家、森家、蒲生家、そして前田家から預かっていたんだ。」
皆袋一杯に入れてくれている。…父上を除いて。何で父上は6文しか入れなかったんだ?これじゃあ真田の家紋と同じですよ?あれ?何か色々な紙が入っているな…。
「…羽柴家も実質は丹羽様に借りて出してもらってるだけだし。」
「まあいいじゃない。皆らしくて。」
「…そうですね。」
「戦争開始です。」
あ、本当だ。久太郎さんとなつの駒がちょうど対岸になっている。
「…何でここで40出しちゃうんだろう。」
結果は強運久太郎さんが40を出して即決着。…これはもう運を使い切ったでしょ。
「…なつさ。来年でいいけどケーキ作れる?」
「…材料さえそろえば。」
「けーき?」
「ヨーロッパで食べられている洋菓子です。甘くてすっごく美味しいんですよ。ただ、翌日は鍛錬必須ですけど。」
「へー。まだまだ知らない料理があるんだな~。」
「それでいうと久太郎さん。ずんだ餅も知らないでしょ?」
「何それ?日本の料理っぽいけど。」
「東北の伊達政宗が作ったと言われる豆菓子で餅の中にすり潰した枝豆が入っているんです。伊達はこの間、使者が信長様に挨拶しに来ていたからわかるでしょ?」
「どんな料理なんだろう。今度食べてみたいなあ。」
「五六八が大きくなったら皆で一緒に作りますか。」
そんなことをしている間に僕はあと3マスまで来た。
「…決着をつけましょう。」
「重なれ、重なれ!」
流石にそれはない。そう思っていたのに何故か重なってしまった。
「クーッ!あと5マス…。」
「…60マス。」
え?なつ?何で…。全く、この夫婦運が良すぎでしょ。次は勝つよ。絶対に。