43.5 利家のケチ癖と秀吉の悲惨な話
注意:このお話は本編43話を読んでいただかないとよくわからない話となっています。
是非本編を読んでからこちらをお読みいただけると嬉しいです。
「確かにまつは俺が節約していることをよく思っていないもんな。お前も気をつけろよ。まつにばれたら嫌われるかもしれないぞ。」
それは父上だけですよ。きっと。僕は溜める代わりに支出もしてますからね。
「おいおいおい。何楽しそうな話をしてるんだ?おいらも混ぜてくれよ。」
この声は秀吉様だ。
「藤吉、お前が混ざっても絶対興味ない話だぞ。」
「いいっていいって。どうせ利家殿のケチっぷりについての話だろ?」
「な、おい!今なんて言った。」
「あ、その。」
弱すぎでしょ、秀吉様。今の父上は本気で怒ってないですよ。多分冗談のつもりの声でしょ。
「…そういえば俺がかつてただの藤吉郎だった時の泥棒に金を盗まれた話したっけ?」
僕は知らないよ。父上は…知らないようだ。
「聞いて驚くなよ。おいらの悲惨な話を。」
あれは確か利家殿の謹慎が解けた6日後のことだった。その時の俺はねねと結婚したてで浮かれ放題の生活を送っていた。銭は信長様からたんまり貰っていたしもう困るようなことはないと思っていた。そんなある時、
「おい、お前ちょっと勝負しないか?」
と知らない男に声をかけられたんだ。自分に話しかけられたとわかったけど見た目が怖くてなんて言えばいいかわからなかった。男は続けた。
「安心しろ。殴る勝負じゃねえ。賭博だよ。と、ば、く。」
と言われた。俺はまだ賭博とか言う言葉を理解していなかったけど暴力じゃないとわかった途端、面白そうだと思って参加することにした。そこで、
「わかった。お前賭博で全財産使い切っちゃったんだろ?馬鹿だな。」
一瞬その考えがよぎったけど話の途中で割り込むのは駄目ですよ、父上。
「違うんだ。それだったら悲惨なんて言う訳ないだろ?」
秀吉様は話を続けた。
そこで俺は賭博の規定を理解せずにとりあえず相手が5文、陸と言うのを聞いたから自分も5文、陸と言ってとりあえず5文を出した。するとその賭博場の主が賽子を振った。すると賽子の目は陸を出した。
「ちぇっ、引き分けだな。」
と相手は言った。ここで全ての規定を理解したおいらは次に、
「300文、肆。」
と言った。ここでおいらがただの馬鹿だと思ったか相手は
「500文、参。」
と言った。ここで賭けが成功すればおいらは600文手に入る。結果は…肆が出た。その瞬間周りにいたざわざわとわき始めた。そう、俺は賭博の勝利の方程式をわかってしまったんだ。
「待ってください。これでは賭博で稼げてよかったです。で終わりませんか?」
「孫四郎、そんなわけないだろ?俺は悲惨と言っているんだ。」
一体どうなるんだ?
その後もたんまり稼いで気づいたら三貫は稼げていた。相手もやばいとおもったのかここで負けを宣言した。これで俺は帰って貯金しようと家に戻り始めた。
ところが家の前に着いた途端、突然おいらが持っていた金が消えてしまった。
「お前様?どうかした?」
ってねねが話しかけてきた。流石に全財産を賭博に使ったなんて言えないからごまかしながら家に入ろうとした。するとねねは、
「そういえばお前様。これ、どこで稼いできたの?」
と言ってきた。まさかと思いながらねねの手を見た。すると、そこにはあるはずのない、おいらが稼いだ三貫があった。
「それ、どこにあったんだ?」
「…これは私が使うね。」
と言ってねねは家に入っていった。
怖っ。ねね様一体何者?と思っていたら父上が、
「なあ藤吉。その話、俺がまつにもやられたって言ったらどうする?」
と言った。…え?
「「は、はい?…怖っ。」」