表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法の家の落ちこぼれが、聖騎士叙勲を蹴ってまで、奇蹟を以て破滅の運命から誰かを救える魔法使いになろうとする話  作者: 鯣 肴
第二章 第二節 死なぬ、故に、死に学べ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/222

初めての魔法の授業 Ⅶ

 自身よりも一回り、巨躯きょく


 振り下ろされるスピア。縦。左斜め。右斜め。


 受け流し、弾き、懐に潜り込むように避けながら。


「名のある騎士のよろい。そういう、ことか」


 動きが、唯の操作のそれではない。動きにカドが無く、流れるように、しかし、しなやかに力強く。


「その通りさライト君。これは俺の父方の祖父のモノだ。正騎士、だったんだよ。これは弟子に装備を託した後に愛用してた品。そして、遺品でもある」


 雑魚とは明らかに違う。この全身鎧には、恐らく、どれだけ少なく見積もっても、思念と言えるくらいには、装着者の記憶が遺されている。


 本来ぎこちない筈のこのネクロマンサーの動きを、鎧自らが補完しているかのように。そして、その修正に、このネクロマンサーは身を委ねている。


 強い信頼を感じる。


 少年は踏み込んだ足で、鋭くもない剣の柄を前へ向けて、そのまま殴りつけるように鎧の横っ腹へ一撃を加えた。


 ゴォオオンンンンン!


「効かな…―げほぉぉ……。ぎぃぃいい」


 ぐらつきながらも、槍の横薙よこなぎが来る。それを、剣を両手で持ち、腰を低くし、剣の腹を、添わせるように、下から弾き上げ、油断なく、少年は、めの一撃を放とうとするが――


 ボゥゥオォォォシュゥウウウウウウウウウウウウウウウ――


 熱く、けるような、左手肘ひだりてひじ、上から、下方へ、斜めに走った、槍、摩擦。神速のそれを、魔法の鎧たるそれが、本来腕の中心を真っ二つにする一撃を少年の胴の外方向へと滑らせるように弾いたが、かつて真に正騎士だった思念の籠った鎧の放つ、一撃必殺であろうそれの余波は、少年の左腕を鎧の内部で捻り千切りきっても足りず、そこから、炎を出して燃えつつ、鎧の腕の部分のそれが通ったところを、真っ赤に赤熱させ、変形させるほど傷つけていた。


(遺体本体もなく、ただの残滓ざんしだけで、これ、か……。次、来、避け、…―たががあ"あ"あ"あ"あ"あ"――)


 返す手、三撃目。また、振り下ろすように来たそれが狙った右足大腿みぎあしだいたい。後ろに倒れ込みながら宙返りするように、それを避けるも、そのままそれは、少年の左足の甲を、貫こうとし、それでも貫けず、鎧の下で少年の左足の甲が砕ける音が響くと共に、少年は、地面にほとんど垂直に、ぶっ飛んで、ろくに受け身も取れず、地面にぶつかって、跳ねて、跳んで、跳ねて、無様に転がって、地に伏した。


 それでも、少年は起き上がる。


(元・師匠……クラス……だ……。業無しで……。だが……負ける……訳には……いかない……。こんなのの相手を、青藍せいらんにさせる訳には……いかない……。こんなところで切るべきではない、が……もうそんなこと言ってられる段階は過ぎた)


 剣を構え、向かってきていた、自身より一回り大きな全身鎧の、突きの一撃を、


「†潜身† †瞬動† †一閃†」


 潜るようにしゃがみ、前のめりに倒れるような前屈姿勢で、右足をのばし、地面を蹴り、加速し、大きな全身鎧の槍持つのびた右腕を、下から上、肩へ抜けるように、突き抜けて、斬り落とし、


「†空蹴† †()()()()†」


 跳ね上がる身体、捻り、上下逆転し、足で、空を蹴り、更に加速。上から、首、左脇下、左腕へと、抜けるように、両断していき、着地する余力すらなく、地面に叩きつけられながらも、剣は離さず、少年は、少年は転がり、吐きながらも、視界が何重にも見えながらも、壊れた左足を棒に、ひびのいった右足で、立ち上がり、構える。


「げほげほっ、未だ、だ」


 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 当然だ。相手はネクロマンシー。


「御見事。もう油断してはくれないか」


 綺麗なソプラノの、澄んだ声には、全く乱れが無い。


 少しずれながらも、切り落としたはずの右腕をくっつけ、右首根元から左脇下までを大きくずらしながらも、くっつけて、立ち、全身鎧のかぶとの目の辺りの丸い孔から血反吐がれてるにも関わらず。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
読んでくださり、ありがとうございます!
少しでも、面白い、続きが読みたい、
と思って頂けましたら、
この上にある『ブックマークに追加』
を押していただくか、
この上にある
【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】に
していただけると幸いです。

評価やいいね、特に感想は、
描写の焦点当てる部分や話全体
としての舵取りの大きな参考に
させて頂きますの。
一言感想やダメ出しなども
大歓迎です。




他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ