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魔法の家の落ちこぼれが、聖騎士叙勲を蹴ってまで、奇蹟を以て破滅の運命から誰かを救える魔法使いになろうとする話  作者: 鯣 肴
第二章 第一節 対なる比翼の片割れ

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稀有なる光魔 Ⅳ

 ビュゥウウウウウウ――


 夜風。だからだろうか。思わず、寒さにぶるっとくる。


青藍せいらんゆるしておやり。ライト少年は慣れていないのだよ、そういうことに」


「ごめんなさい……。わたしの為、なのに……。……。…………。………………」


 少年は、頭をあげた。


 動揺する彼女の顔と、そんな少女を優しく見守る彼女の師匠たる学園長。


「何というか……、私はどうも、こういう感覚が麻痺しているところがあるらしい。今度からは気を付けるよ。私も師匠から初めて渡されたときは、顔をしかめたんだった」


「そういう、ことじゃないの。()()()()()()()()()()()()()……。ここ、外、なのに……?」


 と、立ち上がって、震えながら動揺をあらわにする彼女ではあるが、それは悲嘆だとかとは違っていた。


「ライト少年が君にめてくれたソレのお蔭だね。大切にするといいよ」


 いいの? と、彼女の顔に書いてある。


 勿論、私の答えは決まっている。構わない。 と、頷いた。というか、寧ろ、いいのだろうか? そんなナマモノ、手に巻き付いてて気持ち悪くないのだろうか?


「君はもう少し、人の心の機微を学ぶべきだね。全くなってないという訳ではないのだけれど、ズレているんだよ」


「はい……」


「君のことだから、ここで過ごすうちにそのうち何とかなるだろうさ」


 すると、


「ラピス先生。少し、二人きりにして貰いますか。終わったら、呼びにいきますので、部屋の前で待っていたください。どうか」


 彼女が手を組み祈るように、学園長に頼むと、学園長は驚いた表情を見せたかと思うと、穏やかに息を吐いて、頷いて、部屋をあとにした。






「ライト、君? で、いいのかしら」


「そういえばお互い名も言い合っていなかったな。ウィル・オ・ライト、という。ライトと気軽に呼んでくれ」


「じゃあ、呼ぶわよ。ライト」


「どうした?」


「……」


「何か、まずかったか……?」


「いえ……、何でもないわ。それよりライト、何も聞かないのね」


「わざわざ小突く必要なんてないだろう? 嫌なものは嫌だ。誰だってそういうことはある。それに私は既に、君にだいぶみっともなく色々と愚痴ぐち愚痴ぐちった。要するに、迷惑をかけている。それに、先ほど君が姿を消す羽目になったのも、恐らく私の落ち度なのだろう。加えてさっきのアレ……。もうヘマはできない。私は君と仲良くやっていきたいのだよ。青藍せいらん


「っ……!」


 彼女は少し顔を赤くしている。


「一目惚れ、というやつか?」


 振りかぶった彼女の手が、私のほほをぶっていた。


「……。なら、照れ臭かったのか?」


「はぁ……。何でその言葉が後で出てくるのよ……」


「騎士の世界って偏った場所だったのだな……」


「そりゃそうでしょ。魔法使いの世界も大概だけどね」


「じゃ、改めて頼むよ青藍せいらん。長い付き合いにしよう。それは友好の証、とでも思ってくれたらいい」


「ふふ。そう、ね」


 彼女は微笑を浮かべ、私の手を握ってくれた。


 あの森の世界の終わりに見せた彼女の雰囲気。声の変化。気になることは確かにある。だがそれ以上に、私は彼女と仲良くしていきたいのだ。本当にまともな人間が稀有だろうことは間違いないこの場所で、話の通じなさも、悪戯な嘘や、悪意も向けて来ない、普通の相手なんて、きっと、砂の中の金の一粒に等しい。


 渡したものに価値あると知ったとしても、渡す前には不要なものだったことだし、そう考えると、友好の証として渡すに丁度よくなったともいえる。……おい、まだ私を見るのか、蛇のようなナニカよ。いや、光魔コウマ、だったか。


 そういやこいつは何なのだろう?


 ぎぃぃい、バタン!


「それはわたしが説明しよう!」


 腕を組んで、学園長が登場した。


 彼女が呼びにいくからと言っていたのを忘れたのか? わざとだ。たぶんこういう人なのだ。今の師匠とも関わりがあるっぽかったし、そう考えると、この人は師匠の師匠、という可能性もある訳だ。成程。厄介な性格をしているのは間違いない訳だ。

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長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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