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魔法の家の落ちこぼれが、聖騎士叙勲を蹴ってまで、奇蹟を以て破滅の運命から誰かを救える魔法使いになろうとする話  作者: 鯣 肴
第二章 第四節 奇運奇縁の帳 一日目

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デート・クロス・デート・クローズド・サークル・レイク 継承 根城を薪に換えてでも Ⅰ

 達成感に包まれた心地よい落下は、邪魔され、滑空へと変わった。


 空気中に。まるで析出するかのように尖り、分岐し、曲がり、連なり、捻じれ、そして――突き立てられ続ける、樹木の枝々。


 絶え間なく襲ってくる。


 しかし。その狙いは正確ではなく、私という存在の輪郭を大まかに捕らえ、どこでもいいから、当たればいいと言わんばかり。


 全方位攻撃ともいえる。


 漸く、脅威、としてまともに認識された?


 流石に、これまでの端末を潰されるだけのとは訳が違うのだ。


 当然、だろう。


 だが。


 焦りが見えるぞ?


 ただでさえ雑。それが更にひどくなった。連撃としての連携も狙いもない、五月雨式。


 その癖。足される新たな析出箇所は、一際濃く、魔力が凝集する。


 それ自体が、この不意な、遠隔な、攻撃発生の新たな起点の成立条件であるらしく、隠すも誤魔化すもそこには無いらしい。


 蹴り抜けば。拳で打ち抜けば。


 この通り。


 析出は崩れ、再度の発生の為に、再度の展開の体制が整うまでの猶予が。


 数が増えようが、ペースが上がろうが、所詮、単発と単発と単発と単発。


 要するに。連携が無い。コンビネーションにすら、なりえない。


 だからか? だから。結局、物量はあろうとも、大した危険にも遭わず、ここまでこれているのだ。このコンディションでもやれているのだ。


 タイミングを合わせて、ずらしたり。複数の起点を同時に成立させたり。やりようなんて幾らでもある筈なのに、なぜか、そうはやってこない。


 できないのか。そういう考えが無いのか。


 戦う相手が、魔法使いたちや、吸魔の段階で一体でも群れでも脅威足りえない人外たち。学習相手がそれら。これが敵の初陣だとするならば、こんな莫迦げた仮定も成立する。


 少なくとも、今のところは。


 しかし。対象を捕捉した後に、駒をぶつける仕組みはこれで分かった。用意するのは、切り離した魔力の塊。それ自体に、ある程度の自律性が込められているとするならば。


 単独行動程度。連携はまだない。魔法を論理立てて使っているというよりは、まだ、単純な方向性を予め与えられている程度だろう。


 道具として。技術として。使いこなす。行使するというのならば、使い分けの考え方がまるでないとうのはちゃんちゃらおかしい。


 それに。目。視界。その辺りの概念と理解が、おそらく、無い。


 その辺りは、樹木だから、ということだろうか。


 捕捉はできても。


 無いのだから。狙い。目線。凝視。


 私のような人間の類とは異なる方法で、やれているのは捕捉まで。その先はできないし。やるつもりもない。


 しかし。恐怖や焦燥。ある、ようだな。心は。


 地面への到着と共に。


 曲がりうねっていた析出した枝々たちは、塵となり、舞い上がり――土色の嵐の柱に成り――赤熱しながら、樹皮の如くごわごわと析出し、形になり、熱を持ち、質量を急速に膨らませ――落下――


 受けるか! んなもん! 握るどころか、抱えることすらできんサイズを!


 大小様々な悲鳴が聞こえはしたが。


 その声から確認できた。現状、この一撃のレンジにいるのは、私だけだ! 否応なく受ける他なし、とはならぬ。意識を失っている者がいたとして。それを助けてと声を上げる者も意識不在であるとして。流石にそこまでは、どうにもならん!


 ブゥオオオオゥウウウンンンンンンン!


 大質量の衝突音とは明らかに、違う!


 虚仮威しであったか? 後から後から、次の手勢、という形で魔力を継ぎ足して、命令を後付けすることで、変更させてゆくとしても限界だったのだろうか?


 ザァアアアアアアアアアア――


 土色から赤砂色に変わり果てていた砂塵は霧散霧消し――それは、現れた。


(木製の? 木彫りの? 巨人か! 見落としていた! 尺度だ。目も目線も視線も! 見当違いだったかもしれん! 蟻を潰そうとする象のような。そんな無理を。遠隔で。やろうとし続けていたのなら。慣れずとも当然だ! あまりにも体感から遠すぎて。故に、雑としか見えないような挙動をさせるのが限界だったのだとするならば! 先ほどの赤熱丸太の一撃もそうだ! 何故、妙に正確だったのか? そういうことだったのか!)


 対峙した。


 それは、まるで、巨人。祭りなどの出し物のような、デカブツ。建物くらい、大きな。


 赤熱し、燃えるそれは、バチバチと音をたてながら、鈍い木魚のような振動音で、吠えた。


 ボゴォオオオオオオオオオオオ! バチバチバチバチィィィイイイイイ!


 まさしく、咆哮! そして。奴の樹木としての根源的な恐怖! 燃焼! 意図だこれは。明らかな意図!


 空気が、揺らいだ。


 周囲を濃密に漂っていた光魔の密度が半分ほどになった。


 徐々に、ほつれ、崩れ、吸い込まれるように、吸収され、新たなる薪と成り果てる、遺跡のようなこの場所全体に張り巡らせられた樹海。


 きっと。それらが解けきるまでが、敵の、この大駒の残時間。

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他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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