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デート・クロス・デート・クローズド・サークル・レイク 起こり 吸魔吸精域 Ⅱ

「様……」


 ごぼぉ、と、声が、爛れた白いぼこぼこから漏れる。白い泡である。発泡は止まらない。そして、その白磁の身体は滑らかさと光沢を失い、全身が、まるで爛れたかのように、そして、一回り小さくなっている。加えて。地面に置くと、ねっとり糸を引くのだ。


 間違いなく、溶けている。


 公園エリアにまで逃げのびることができ、影響範囲から外れることができたとはいえ、既に奪われた分はどうしようもない。


「駄目だな……。どうすれば回復させられる?」


「……。どうしようも無いかもしれない……。啜るための口そのものが塞がっているようなもの。わたしたちがこの場で盛ったとしても、どうしようもないって……」


 彼女は冷静っぽい素振りであるが、言っている内容がすかすかだ。それでも、コンシェルジュの意図を読み取ることを任されたということは汲み取ってくれている。


「エリクサーは?」


「それだけだと半分……。肉の身体、物理の身体じゃあないのだもの」


「旦那を呼ぶのは?」


「『できていたら、とうにやっています』だって……」


「だよな……」


「焼くのはどうだ? 表面をうっすら。応急処置程度にはなるかも知れんが」


 彼女は首を横に振った。


 コンシェルジュは、曲がり、垂れ、ぐったりしている。溶けたキューブ状のホワイトチョコレートのように。


「取り敢えず、覆うだけ覆うぞ」


 彼女はこくんと縦に首を振った。


 少年は生成したガラスをフラスコのように。想起する。コンシェルジュの元の姿を。閉じ、た。


「構造は分からんからな……。解剖する訳にもいかんし、そもそも今は形を機能を為していない……」






「過去にこのような事態は無かったのか?」


 ベンチ。


 他に誰も見当たらない公園エリア。


 大量の気配が、入口に密集しているのを感じながら、この後起こりそうな、烏合の衆による騒動を想像し、事態がどんどん大げさになっていくだろうことが想像できて、気が滅入った。


 係員たちにその類のノウハウがあるかも分からない。


 まあ、あまり期待はできない。


 コンシェルジュと類似の身体組成、体質、食性を持つ彼らなのだ。今回のような事態への対策が係員たちに配られていないのだから、御察しである。


 西域から外に今のところ、あの出鱈目な法則は広がっていない。


 だからこの程度で済んでいる。


 誰かが抑えに回ってくれているのか。もしかしたら、小規模な事象として、ひとりでに鎮火するということも考えられる。流石に甘すぎるか……。


「ににゃあいいhげおgこおあえgて」


 言葉にならない答えが、瓶の殻の反響を伴って発せられる。


 自ら声を発せれる程度には回復した、ということか?


「すまん……。無理にしゃべらなくていい。先ほどまでと同じように、ただ念じて、彼女に思考を見せてさえくれればいい」






「『夫は恐らく……、意識か、現界を続ける為の器を失っております』だって」


「あんたは大丈夫なのか?」


「『何とか……。無理に耐えなかったのが功を奏したのでしょう。溶けだした血肉が穴だらけではありましたが、膜になりましたから』」


「他の係員たちはどうだ?」


「『分かりません……。リンクは途絶しております。個人によるものではなく、管理者を置いての大規模なリンクです。本来、意識を失ったとて、生きてさえ、存在してさえいれば、一方的な感知も可能であるのですが……。この様子だと、管理者自体が……』」


「最悪だな……。あまり想像したくなかったが、上ほど影響を受けている、と考えるべきだろう。何やらのアナウンス一つすら飛んでいない。避難のための人員すらいない。それなのに、客が全くいない。倒れている客もいない。係員たちが働いた、とは到底思えん。あんたですらこのざまだ。他の係員たちも同じく、不能に陥っているとみていい。つまり、客たちが能動的に動いた結果、入口に大混雑が起こっているということだ。しかも、恐らく、出られない。力づくでも。距離が離れている故に、影響の小さかった係員が入口にいたとして、抑えきれるはずもない。それに、止める選択を取るとも思えない。客に対して、割と譲歩する方針をとっているこのパークだ。つまり、このパークそのものが、言い換えるなら、世界樹そのものが、内から外へ出ることを許さないでいる、ということだ」


 少年のぐつぐつ煮詰まるようにつぶやくように長く長くなっていく早口。展開される予想。嫌過ぎる結論。


「正直、もう遅い……」


 入口で、火柱やら爆発やら水球やら、様々な破壊が巻き起こっている。黄色く濃い、光の壁が、一瞬現れ、消える。


「個人ではない。集団となって、暴を用いた。強引に突破しようとした。止めるものはいないか、いないと同じ。そして、彼らは目的を果たせない。何せ。彼らの魔力。あの障壁自体が吸って消したぞ? つまり、次は、今の以上に、破るには足らなくなる。彼らは消耗する。しかし、世界樹は養分を得た。……。駄目元で、まだ正気の者を探すか? それか、パークのお偉いさんを探すか、そんなお偉いさん方の住処や持ち場でも家探しするか?」

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他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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