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魔法の家の落ちこぼれが、聖騎士叙勲を蹴ってまで、奇蹟を以て破滅の運命から誰かを救える魔法使いになろうとする話  作者: 鯣 肴
第一章 第二節 魔法の始まる地

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始まりの園 辺境 逆巻く彼方の陽影の城 Ⅰ

 ゥオゥンンン、ゴォアアン、ゴァン、ゴァァン、ゴァァン!

 パカッパカッパカッパカッ!


 雲一つ無い、青空の下、ひたすら続く草原を、風を切って走る、人を乗せた二頭の馬。少年と、その師匠たる男の一行である。


 少年を背に乗せたヌシたる【鉄馬テツマ】は、その大きさを、荷馬車を引いていた馬と同じくらいの、並の大きさになっていた。


 男を背に乗せている馬は、荷車を引いていた馬だ。荷車は、男の魔法たる、うずの底。 


「はっはっはっ! この心地よくも荒々しい揺れと疾走感しっそうかん! 久々の騎乗ですが、やはり良い!」


「楽しそうなもんで。ケツ痛いとか後で言うなよ……」


「大丈夫ですよ。 未だ丸一日も乗ってないんですよ? それに、野生の【鉄馬テツマ】の背に無理やり乗り回す訓練と比べたら、極楽ですよ。だってこいつ、私が触れてる部分を、粘土みたいに柔らかくしてくれてるようですので。ほら」


 と、少年はしりで自身の身体を跳ねあがらせ、自身のしりの接していた部分に、尻型しりがたができているのを見せる。


 主たる【鉄馬テツマ】は、少年のそれに対して、言われるまでもなく速度を緩め、少年は綺麗きれいに同じ場所にまたから降り立ちまたがった。


「おいおい。調教師たちが見たら泣くぜっ」


「あの人たちには到底及びませんよ。師匠も、あの人たちの本気の仕事見たら、腰抜こしぬかしますよきっと。私が目にした中でも、特に衝撃的だったのは、【死神馬シニガミバ】の寝取りです」


「おいおいおい。自殺志願者でもあるまいし。でも、うん、金払っても見ていたいわ、そんなの。ちなみに、お前もし、やれって言われたらできる?」


「ははっ。勘弁してくださいよ」


 と、盛り上がっていた二人だったのだが、


 ゥオゥンンン、カァアアンンン!

 パカッ、パッ、ガァァァァァァ!


 そこはいつの間にか、別の場所。草原でもない。屋外でもない。昼かどうかも分からない。夜? だが、光も無いのに、互いの姿や乗っている馬は見えている。


「何処です?」


「【始まりの園】」


「冗談、でしょう?」


「ホントだぞ?」


「だって、何も無いじゃないですか。音もない。風もない。光もない。暖かくも寒くもない。やみが、広がっているのに、ちゃんと見えてる」


「俺らを乗せてるこいつらが落ち着いてる。それがもう答えだろう?」


「ま、確かに。こいつも大概ですが、師匠の乗っているそいつも大概ですし。荷車引いてあれだけ毎日走り続けて、つぶれる気配どころかひづめ損耗そんもうも、足並みの鈍りもほとんどない馬。そいつも学園所属ってことですね?」


「大正解。おぉい、もうお遊びはこの辺でいいだろう?」


 と、男が虚空に向かって呼びかけると、光景が変わった。


 黒を基調に、白を部分的に散発的に含んだ、闇色やみいろ煉瓦レンガ。それを積み重ねた壁が目の前に現れたかと思うと、すぅぅっとそれは二人の前から離れてゆく。その動きに連動するかのように、同じ煉瓦れんがで左、右、上、下、後ろ、にかべが。


 できあがったのは、馬に乗った二人がそのまま疾走するには狭い、ろう


 そして、すっ、と乗っていた馬が消え、不意のそれに対しても特にびっくりすることもなく、スタッ、と着地する二人。


「もう少し楽しみゃいいのに……」


「そう言われましても……」


 と、二人は前へと歩き出す。

 




 終わりが見えないろうを進みながら、くっちゃべっていた。


「どうやったら楽しめたんでしょうか」


「身構えたり、予想したりするのをやめたらいいんじゃね?」


「そんなの危険じゃないですか!」


「そうか?」


「これまでがこれまでじゃあないですか。野生の【鉄馬テツマ】なんて、はぐれ一頭と遭遇そうぐうしただけで、大の大人でも死を覚悟するもんじゃあないですか!」


「でもお前さ、一般人じゃあないだろ? 余裕だったじゃないか。俺でもあんな楽々仕留めるなんて無理だ」


「じゃあ、私が、あいつら出てきたとき、身構えたり、予想したり、警戒なんて微塵みじんもしないでいたら?」


「痛い目にってたんじゃね?」


「ほらぁ! そうでしょう?」


 ある意味気を抜いている、といえる。身構えたり、予想したり、警戒したりなんて微塵みじんもしてないような。


タノシソウデハナイカ。吾輩ワガハイを置イテ」


 割って入った、その声に、少年はびくん、となった。


(っ……! 騎士きし……、だと……?)


 それは、老人のような皺枯しわがれた声。だた、想定さえしていなかったのは、よろいの中で反響して、こもったような、声であったということだった。

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他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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