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魔法の家の落ちこぼれが、聖騎士叙勲を蹴ってまで、奇蹟を以て破滅の運命から誰かを救える魔法使いになろうとする話  作者: 鯣 肴
第二章 第四節 奇運奇縁の帳 一日目

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デート・クロス・デート・クローズド・サークル・レイク ~キャッスルアドベンチャー・ライト・レイ~ Ⅱ

 石畳の先。城の前。


 道中とは違って、薄明るい。


 この距離だと、見上げても頂は見えない。


 そもそも、道中も光は断続的だったのだから、全貌ぜんぼうをじっくり目に入れることもできていない。そもそも、


「……。青藍せいらん。もしかしてだが、このだだっ広いアトラクション……、私たち以外に客は存在していないのではないか……?」


 先ほどまで見えていた光景そのものが、フレーバーであるという可能性が生まれてしまった。


「気配はあるわよ……?」


残滓ざんしだ。知恵ある、ある種の魔物が使う『疑似餌』に類似のものがある。それらよりはずっと単純だ。一定周期を繰り返している。ある程度散らして、繰り返し周期もまばらであるが、間違いない。魔法は魔法ではあるが、技術ありきな魔法の使い方だな」


「不人気アトラクションに足を踏み入れちゃった……てことかしら……?」


「仕方ない。パンフレット確認せず、てきとーに出てた案内の誘導に乗って踏み入ったんだ。少なくとも、このパークは管理されている。きちんと。だから、部外者の不法アトラクション、だなんてことは無い……無い、よな……?」


「心配し過ぎよライト。それならそれで、身体動かして気分転換する良い機会じゃない。闘技場みたいに色々と後先考えなくて良いだろうし」


「それもそうか」


 と、二人は、既に開かれている、自分たちよりも遥かにデカい門をくぐり、わずかに外から入り込む光が照らす、赤い絨毯じゅうたんへと足を踏み入れた。






 ゥゥウウウウ、バタン!


 背後からの風圧に、姿勢を崩しそうになる中、吹き飛ぶ彼女を、抱え寄せる少年。しっかりと踏ん張って、彼女を降ろした。


「情報は無いが、誘導はちゃんとしてくれるようだが。乗る……か……?」


 そう、彼女に尋ねる。


 スポットライトのような光。机。七本、虹の七色の一つ一つに対応している棒が置かれている。一セットしかない。


「乗りましょ。踏みいったときにわたしたちは選んだようなものよ」


 と、赤の棒を彼女は手にとった。


「でもこれ、どう使うのかしらね?」


 と、ブンブンとそれを彼女は振ってみるが、何も起こらない。


「説明書きも何も無いしな」


 と、少年は青と黄色の棒をそれぞれ手に持ち、クロスさせてみる。相も変わらず何も起こらない。


「多分光ると思うのだけど……?」


「そうでもないと外の光景も演出も全て雰囲気出す為だけの物になるしな。いっそのこと聞いてみるか? ここにも担当の係員がいるなら、声をあげてみれば、教えてくれるのではないか?」


「ライトぉ……。それは駄目でしょ……」


 彼女の心底呆れた様子に、いつもだったら躊躇ちゅうちょなくこの手の行動を行う少年はそうすることをやめた。


「だが、光らせられないと多分進めないぞ?」


 と、少年は、彼女に青の棒の方を預け、空いた手に自身の魔法で光を灯す。それを、ふわっと、前へ飛ばす。


 光は進んでゆく。その軌道周辺は、不自然なほど、照らされない。しかも、何かにぶつかるまでも無く、ほんの数秒でその光は消えた。


「まあ、こうなるか」


「そりゃそうでしょ。誰が入ってくるかも分からないのに照らす魔法使えなかったら先進めないんじゃ、アトラクションとして成立しないじゃない。あっ。そういうことね」


 ブァン!


 彼女がそれぞれの手に持つ二本。赤と青の光が、彼女の顔と周囲を照らしていた。


「魔法使いしか来ない。魔法使いなら誰もができること。魔力を扱うこと。これらの棒のみ、魔力を通したときのみ、照明として許す、か。どうだ? 消費は」


「ライトがさっき放った光と比べたら、砂の一粒程度よ。効率は気にしなくてよさそう」


「そうか」


 ブゥオン!


 黄色の棒を光らせた。


 ブゥオン、ブゥオン!


 少年はそれを、軽く振る。光は飛ばない。ただの、色付きの光が灯った明かりでしかない。光は伸びない。広がらない。その辺り、光源が揺らがない辺り、松明などとはだいぶ勝手が違う。何より、軽い。人差し指ほどの太さの軽めの木の枝程度の軽さしかない。


「これ使って闘うとかでは無さそうだな」


「やっぱり探検する感じじゃない? 真っ暗なお城の中を、七色の光る棒を使い分けて進めていく、とか?」


「わざわざ七本あるから、その線はありそうだな。一本にまとめて、色出し分けできるようにしとけよと突っ込みたいところではあるが、踏み入る者が誰であっても使えるという要求を満たすにはこうするしか無かったということか?」


「使わない分は私が預かってていい?」


「頼む」


 そうして少年は、自分が手に持つことにした黄と、彼女が手に持つことにした青以外を、彼女の開いた空間に投げ入れた。


 そして、互いに棒に光を灯し、周囲をぐるっと、照らしてみる。走査する二点の光が、壁に、手摺りに、ドアに当たり、と闇に隠された構造を露わにする。


「見えている範囲では、棒の置いてあった机の先の、唯一の階段。昇り階段の先は、何故か壁だな。それと、周囲に、多数のドア。何部屋ある? 扉の数は百には届いてはいないが、本当にこの数の部屋があるかは怪しいな。この部屋自体もかなり広い。学園長室の数倍は軽くある。お屋敷という奴だなこれは」


「御屋敷どころかお城でしょここ」


「はは。それもそうだ。で、どうする? 手分けするか、それとも、一緒に回るか?」


「偶には効率捨ててもいんじゃない? こういう時くらい、肩の力抜きましょうよ。ライトってそういうところ、意外とヘタだよね」


「私のこと万能だと思い過ぎだろう君は。私は見ての通り、図体でかいだけで力ばかりの不器用な男だよ」

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他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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