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魔法の家の落ちこぼれが、聖騎士叙勲を蹴ってまで、奇蹟を以て破滅の運命から誰かを救える魔法使いになろうとする話  作者: 鯣 肴
第二章 第四節 奇運奇縁の帳 一日目

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デート・クロス・デート・クローズド・サークル・レイク ~キャッスルアドベンチャー・ライト・レイ~ Ⅰ

 公園エリアから、次のアトラクションへの境界を越えて、光線飛び交う、闇の城。


 歓声や掛け声、絶叫が各所で響き渡る。長い石畳が、城へ向けて続く。打ちあがる花火のような光の群れ。空を交差し、直進する、彩り豊かな光の照射。


 夜闇の空間を照らす光が、活路を切り開く――


「時間間隔が狂いそうできつい……」


 少年がそう、弱音を零す。


 先ほどまで気を張っていたというのもあるが、それだけではない。


「ライトって意外とちょっと予想から外れただけでふにゃってなるよね」


 打ちあがった音の無い花火の光で、隣を歩く彼女の姿が露わになる。彼女は後ろ手を組んで体を傾け、何ともご機嫌そうである。


「ふにゃって……、今の私はそんな情けなく見えてしまっているか……?」


 少年は、額に手を当てながら、疲れた声で彼女に尋ねる。


「ライトはいつだって格好いいわよ?」


「悪い……。悪態ついた……。愚痴ぐちりたくなったんだ。起こる出来事に規則性が無さ過ぎて、場当たり的な対処をせざるを得ない。だというのにここは、学園とは違って、危険だ。特に係員たち。教師相当の人物が、人の世界の文化や常識に寄り添ってくれてはいつつも、本質的にはきっと、相容れない。何が地雷かも分からない。状況を管理できない……」


「ライトってさ。運否天賦うんぷてんぷは嫌いな癖に、出たとこ勝負みたいな無茶は平気でするよね。さっきの契約の席でもそう。そもそもライトって、何から何まで自分の手の収まる範囲に収めて場を制するってやり方採らないじゃない。何で?」


「無力だからさ。私は存外器用ではあったらしいが、できることは、自身がしくじらなければ何とかなる範疇はんちゅうに限られる。出たとこ勝負は、できる限り、とも私の場合は言い換えられる。運否天賦うんぷてんぷを嫌うこと。それそのものが、私の夢の源泉なのだろう。本当に何とかしたいとき、天に身を任せようとも救われることなど無いのだから。もしそれでも救われたのだとしたら、それはきっと、過去からその時にまで積み重ねた何か、確かな形ある理由が存在する」


「一旦、休まない? ライト。結構キテるよね……」


 と、彼女の足音が止まる。少年はそれに合わせて、数歩下がり、足を止めてた。


「流石に未だ帰る訳にはいかんだろう」


「違うわ。ホテル。パークの中央に併設されてるの」


 声は丁度、真隣、下方から聞こえてくる。


「眠ったとてどうにかなる話ではない。どうにかなるまで引きるのが私だ」


「そうかしら? ちょっと吐き出しただけだけど、ライト、楽になったでしょ?」


「……。言われてみれば……確かに」


「だからね。こういうのはどう? 並んでベッドに寝転がるの。向かい合って、今みたいに話をするの。明かりを消して。カーテンを閉め切って。もう何も出なくなるまで、ずっと」


「……。この遣り取りに意味はあるのか……?」


「分かってる癖に」


「未だ私は独り立ちしていない。その手の情緒も未だ未だ未熟。私が元いた世界。仲間の騎士たち。割とよく聞く話だった。最初で失敗して尾を引く。そして、それは別に、男側だけの話でもない。……。考えてはいるんだ。これ程考えたことは無いくらい。考え続けている。だが、輪郭すら掴めていない。師匠とその相手のようには急いてもならない。恐らく、破局する。嫌なら離れている。そもそも、こうやって二人っきりになる何ぞ、死んでもしない。自身で管理できる範疇はんちゅうを越えている。だから、私から言えるのは、情けない限りだが、待って、くれ。いつまでかも分からないが、それでも、許してくれるのならば、どうか、待って、くれ……」


「言葉にすると、違うでしょ。読まれるだけとは雲泥うんでいの差。のぞき見してばっかりのわたしが言うのも何だけどね。それにさ。待つよ。いつまでも。ライトがわたしに、居なくなれって言わない限り」


「言うものか!」


「び、びっくりするじゃない! 言わせたのはわたしだけどさ。でも、どう? すっきりしたでしょ? 不安を吐き出すって意外と大事な事なのよ? わたしもそうだったし」


 と、花火の残光で照らされる。微笑む彼女と、その指に光る指輪。


「確かにな。もう一つ、頼まれてくれるか?」


「何?」


 きゅっ、にぎっ。


「ふぅ。落ち着く」

「わたしは落ち着くっていうよりドキドキするかな」

「私もそう思えるようになるだろうか」

「ええ。いつかきっと。そう遠くないうちに」






 そびえ立つ城。その頂。双眼鏡を持ち、並ぶ二つの影。


「打ち止めかと思っていれば、まだ踏み入ってきてくれる物好きがいるとはね。あなた」

「そうか? 我が妻よ。このパークが客の満足度を下げるような終わりを齎す筈が無かろう。つまり、期待できるぞ? 垂れ流し続けている残響と残光とは比べものにならない、歓喜がやってきたのだ。駄目なら駄目で、専属応対人コンシェルジュに文句を言えば良いだけだ」


 二つのシルエットを光は照らさない。明かされるには未だ早い。

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他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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