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魔法の家の落ちこぼれが、聖騎士叙勲を蹴ってまで、奇蹟を以て破滅の運命から誰かを救える魔法使いになろうとする話  作者: 鯣 肴
第二章 第四節 奇運奇縁の帳 一日目

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デート・クロス・デート・クローズド・サークル・レイク ~宙のコロッセウス 顛末 膨れ上がった権利~ Ⅵ

【専属応対人契約】

【 ―― 『  ウィル・オ・ライト   』『  青藍   』】

【・本契約は、契約文言を、契約者全てと専属応対人が名前を刻むことで、内容を固定します。】

【・本契約は、専属応対人の名前の上に、契約者連名での一つの呼び名を刻むことで、締結とさせて頂きます。】

【・専属応対人に、契約者は、精気を支払います。但し、ここでの精気は物理的生成物を指しません。双方向の愛欲という精神的生成物の残滓ざんしを指します。これによる感情、欲への影響はありません。最低要求量も最低頻度も指定しません。発生した分全て、回収させて頂きます。】

【・契約者の組み合わせが記載の二者から変更された場合、契約は破棄されます。但し、組み合わせが元に戻った際、契約は再締結されます。】

【・世界『始まりの園』以外の世界を外界とします。外界に於いて、契約者は、専属応対人による、以下の補助を受けることができます。『引き出し収納自在の空間倉庫』『言伝の送受信サービス』『専属応対人の技能、権限、権能によるありとあらゆる援助(要・対価)』】


「以上で、宜しいでしょうか?」


「ああ」

「今更だけど、ライトは何も要求しなくてよかったの?」


「私は既に貰ったからな。小さな気づきさ。しかし、私にとっては大切なものだ」

「ふぅん」


「それに、私たちが名を記し終えた時点で、もう文言は追加も変更も削除もできなくなったのだから」

「分かってるわよ。心の準備できてるのかなって。だってライト何だかいつもと違って、不安そうだったから……」


「今もそう見えるか?」

「大丈夫そう。だから止めなったでしょ? 名前書くの」


「後は、そちらの呼び名を何とか考える。考えてみるが……、あまり変なのに思えたなら、ストップを掛けて貰えるか? 再度考え直すから」

「パークにいる間に決めますので、お願いします。それと、他の人からの申し出止めておくことって、可能でしょうか」


「希望されるのでしたら可能です。ありがとうございます! もし、契約を結ばず終わることになっても、お友達にさせていただければ幸いです!」


 と、差し出された棒のような手。彼女の方に。


 彼女は嬉しそうにそれを握った。


 これだけでも、この場に座ったことに価値があったと、心底思え、しみじみとする少年。


「こんなではありますが、宜しくやっていただけるとありがたいです」


 そう、夫の方も彼女に言う。


 その様子を、少年は微笑ましく眺めていた。


「御客様。わたくしから貴方様にこれを」


「妻がすっかり忘れてしまっているみたいですので。膨れに膨れた貴方様に集約された権利について、です。パークにおける契約者様方や協力者様への報酬は、大概はパークのその方面の人員の権能によって支払われるのですが、権利が莫大なものになってしまった場合に限り、支配人によって支払われることになっているのです。今しがた継ぎ足したわたくしからのお礼も含め、そのラインに達しました。千切ると、支配人の部屋行きです。なお、使い忘れてこの界から出た場合、自動的に千切れて引き寄せられるので、ご注意ください。その場合も時間の心配は皆無と言っておきましょう」


「透明だな。輝きすらしない。さらっとした手触りだけが存在する。落としたらどうしようもなくなりそうだな……」


「問題ありませんよ。落ちませんので」


「ほぅ。指先から離れない。しかし、掴める。成程、どっかにくっつけたら手は離せる。くっつけた場所に残ったまま。摘まんだら、剥がせる。だが、気持ち悪い……。どこに貼っておくべきか……」


「肩とかいかがです? あ、後ろはやめといたほうが。前側に。そこなら、すくに、手にしようとしたら手にできるでしょう?」


 少年はそうして、透明なそれを左肩前側に貼った。


「現状、権利を一つの形で行使するのであれば、時を遡る行為でなければ、殆ど何でも叶う、とお思いください。とはいえ、何事も例外というものは付き物ですので、すがるほど切羽詰まらないように気をつけてくださいね。辿ってきた道からして、貴方は恐らく大丈夫でしょうが……」


「私が死んだら彼女に権利は移行する、ということか?」


「そういうつもりで言ったのではありませんが……。移行するっちゃ、しますね。契約も含め、時間の許す限り、ゆっくり考えることをお勧めします。少しでも迷いがあれば、今はその時ではない、ということです。また、複数に分けて使うこともお勧めしません」


「説明感謝する。青藍せいらん。もういいぞ。行こうか」


 そうして二人はそこを後にした。


 デートの時間に戻ったのである。





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「よく我慢しましたね」

「あんないい子たち、贄になんて、したくないですから」

「嘘偽りなくそう言えてしまう貴方を誇りに思うと共に、眩しくも思いますよ」

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他にも色々描いてます。
長編から連載中のものを1つ、
完結済のものを2つピックアップしましたので、
作風合いそうならどうぞ。

【連載中】綺眼少女コレクトル ~左目を潰され、魔物の眼を嵌められて魔法が使えるようになったエルフの少女が成り上がる話~

【完結済】"せいすい"って、なあに?

【完結済】てさぐりあるき
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